トガナリ

Column

26/2/8

vol.40 戸賀編集長、青春時代のネオ・クラシックカーで愉しむ!(後編)

34年前のクルマとは思えない走りと快適性を体感させてくれた、W124 92年式300E-24

出版業界では、かなりのクルマ好きとして知られている戸賀編集長(トガ)。数々のクルマを乗り継いで来た彼が、10年に渡るメンズクラブ編集長という肩書を外し、忖度が無くなった状態のなかで、「どんな基準でクルマを選んでいたのか?」、「そのクルマの魅力はどこなのか?」等を大いに語ります。
話の聞き手は、戸賀編集長が雑誌編集者時代から30年来の付き合いを続けている、フリーランスエディターの菅原(スガ)。若い頃の数年間は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」の二人。そんな二人ならではの昔話、こぼれ話もお楽しみに。

前回は92年式300E-24の素晴らしさ、たとえば戸賀編集長が『鬼切れ』とまで言い切ってしまう取り回しの良さに加え、約35年前のクルマにも関わらず、現在の道路事情においてもまったく問題の無い走り。さらに、いつでも一発でエンジンが始動する抜群の安定感と、酷暑であっても冷蔵庫か! と感じるほど冷え(過ぎ)るエアコンなどについて語ってもらいました。
そこで今回は、さらに乗り続けたことで気が付いたW124の特徴、そして戸賀編集長ならではのW124の楽しみ方などを語って貰おうと目論んでおります!
それでは後編、スタートします。

 

 

ラグジュアリーとコンビニエンス

 

トガ この間スガと話したあとに、あらためて考えてみたんだけど、今の時代ってラグジュアリーとコンビニエンスの境界線が、よく分からなくなってしまっている気がするんだよ。

スガ どういうこと?

トガ たとえばW124を例に考えてみると、冷蔵庫のように効くエアコンにしても、操作自体は風量もシンプルなダイアル操作だし、温度の設定もチャンネルを動かすだけというシンプルさだろ?
だから目ですべてを確認しなくても感覚だけで操作できてしまうし、ミニマルならではの機能美があった。
でも現代のクルマは、シンプルな部分を見つけることが難しい。最新であることのアピールなのか、やたらとスイッチが並んでいて、停車中にスイッチの位置をしっかり確認しないと正確な操作が出来ないくらいなんだよ。
スイッチがズラっと並ぶ様子は、見た目はいろんな装備を備えている感じはするし、いかにも高級車! という感じもする。でも機能性の面で考えたらかなり微妙だろ?
昔のクルマにあったシンプルな機能美は、現在のクルマには無くなってしまったのが現状なんだよ。

 


現代のクルマと比べると、圧倒的にシンプルなセンターコンソール。これぞ機能美


 

スガ 当時のメルセデスの操作系については、「すべてを直感的に動かすことができる、それこそが機能美」みたいなことは、Car Ex(トガ&スガが所属していた雑誌)でもよくやっていたよな。
近頃のクルマは、機能が増えた分だけその操作は複雑になっている。確かに操作性だけで考えてみれば、昔のモデルより後退している部分はあるかもね。今回は、その辺をきちんと理解した上で話しを進めて行きたいと思うんだけど、どうかな?

トガ 問題無いよ。

スガ では内装関係からスタートするとしよう!
さっきまでのトガの話しにもあったけど、W124の操作系は今のクルマと比べたら本当にシンプル。だから内装にも華美な装飾のない、本物の機能美があったと思うんだよね。

トガ その通り! スガ、今回は珍しく分かってるじゃん(笑)。

スガ たまにはな(笑)。

トガ 操作系に関してはスガの言う通り、必要最低限の要素で作られているからこその機能美だったと思う。そしてメルセデスの内装と言えば、やはりシートの素晴らしさにも定評があった。

 


椰子の実の繊維や、馬の毛などの天然素材が使われていたW124のシート。椰子の実の繊維は耐久性にも優れていた


 

椰子の実の繊維を採用したW124のシート

 

スガ そういえば前回、最後の方で、『車内の椰子の香り』について触れていたけど、あれもシートの話しだったよな? それについてもう少し詳しく聞かせてくれるかな?

トガ そうそう前回は、その辺の話しを始めたところで話しが終わったんだよな。じゃあ、まずはシートについて話していこうか?

スガ よろしくお願いします!

トガ 知っている人が多いかも知れないんだけど、当時のメルセデスのシートのアンコ(詰め物)には、椰子の実の繊維や、馬の毛などの天然素材が使われていたんだよ。じつは椰子の実の繊維は、潰れても元に戻る力が強いんだよね。

それとは反対に、スポンジは長く使っていると、経年劣化でどんどんヤレていっちゃうけど、椰子の実の繊維は耐久性にも優れていた。

そして、天然素材なのに通気性もしっかり確保されているから夏でも蒸れないし、冬は冷たくないというのが当時の評価だった。300E-24の乗り心地は、一昨年の夏にしか味わえなかったけど、確かに蒸れるようなことは一度もなかったんだよね。

スガ 天然の素材なのに、機能的にも優秀だったんだな。

トガ そうなんだよ。でも俺にとって、このシート一番の特徴とは、何と言っても椰子の香りなんだよね。

椰子の香りと聞くと、なんとなくトロピカルな香りを想像する人が多いかも知れないけど、残念ながらそうではない(笑)。説明するのが難しいんだけど、34年前に誕生した300E-24に初めて乗った時にも、新車当時のメルセデスとまったく同じ独特の香りがしたんだよ。それにかなり驚いた記憶がある。

スガ 30年以上前のクルマでも、あの椰子の香りはしっかり残っていたのかぁ。それはマジで凄いね。俺にとっては、未だにあの香りこそがメルセデス! って感じなんだよ。

ちなみに、シート自体にはヤレているような感じは無かったたの?

トガ 個体差もあるとは思うけど、俺の300E-24はまったく問題無かったよ。椰子の実の繊維は、かなり丈夫なんだと思う(笑)。

そういえば、赤池 学さんの「メルセデス・ベンツに乗るということ」という本に書いてあったんだけど、メルセデスが椰子の実の繊維を使ったのには、ちゃんと意味があったそうなんだよ。

機能性、耐久性に優れているだけでなく、椰子の実の繊維を採用することで、経済的にちょっと厳しい国に新たな産業を生み出すという狙いもあったらしい。

そんな話しもメルセデスらしい逸話だよね。

 


戸賀編集長いわく、バスタブ並みの広さのトランクルーム(笑)。キャディバッグを真横にして積むことが可能だった


 

安全基準の差から生まれた、トランク容量の差

 

スガ ほかにも、乗り始めて気が付いたことって何かあった?

トガ そりゃ何と言ってもトランクのデカさだね。もうバスタブみたいな広さのトランクなんだよ(笑)。

スガ バスタブって(笑)。

トガ 安全基準とかもあるから一概にはいえないけど、妻が乗っている現行のメルセデスのSのトランクでも、キャディバッグを真横にして載せるのは不可能。だけど300E-24のトランクならそれが可能だったんだよ。

さらに4つのキャディバッグが積めるから、1台のクルマで4人がゴルフに行くことだって可能。まぁ、実際に4人で行くことはないと思うけど(笑)。

でもこれは、あらためて乗ったことで気が付いた意外なメリットだったかも知れない。

さらに気が付いたことを言うと、現代のクルマに慣れてしまった俺には、W124のすべてがシンプル過ぎて驚くことが多かったのは間違いないね。

 

 

現代では当たり前な装備は、ほとんど付いていない

 

スガ シンプル過ぎて驚く? それってどういうこと?

トガ 今のクルマにはあって当たり前のものが、ほとんど付いて無いんだよ。まず、驚くことに助手席のエアバッグが無い。その代わりに、小物入れはあるんだけどね(笑)。さらに駐車センサー、衝突センサーみたいな運転支援システム的なモノはまったく無い。

あ、そういえば、ドリンクホルダーも無いな(笑)。

 


スイッチ類、メーター回りを見ても、運転支援システムが搭載されていないことが分かる


 

トガ でも300E-24に乗り始めてから、いつの間にか運転に関して、楽をし過ぎていた自分に気が付かされた。当たり前のことだけど、運転支援システムがないから、自然と運転に集中するようになるんだよ。スマホを操作する余裕なんて皆無だしね。

スガ スマホ使ったら、すぐに捕まっちゃうけどね(笑)。

トガ そりゃ当たり前。あくまでも例えばの話しです(笑)。300E-24に乗っていると、クルマを運転する上でやってはいけないことを、クルマが人に教えてくれている感じがするんだよ。

ある意味、運転の基本をあらためて教えてくれる、先生みたいなクルマって感じかな? この先、ネオクラシックのクルマも、確実にクラシックカーに変わっていくことを考えると、クルマ好きなら今のうちにネオクラシックなクルマに乗っておくべきだと思う。

いきなりクラシックカーは難しいけど、ネオンクラシックなら現代のクルマに通じる部分も多いから、とっつきやすい気もするしね。クルマ好きにはたまらない魅力の塊みたいな名車だから、若い人にも是非とも乗ってもらいたいというのが俺の本音かな。

あ、もうひとつ今のクルマにはあって、W124には無いものを思い出した! これにはけっこう驚かされた。この年代のクルマって、リモコンキーじゃ無いんだよ(笑)。

スガ あ~、確かにそうだ。

 

 

ネオクラシックに、キーホルダーはマストアイテム

 

トガ そして鍵が無茶苦茶チンケなんだよ(笑)。言ってしまえば、黒いゴムと穴が開いてるただの鉄の棒って感じ。でも昔、俺が280Eに乗っていた時はこのチンケな鍵が自慢だったんだよなぁ。打ち合わせの時、さりげなくテーブルの上に載せたりして(笑)。当時はキーホルダーが必須アイテムだったんだけどね。

 


戸賀編集長が300E-24に選んだキーホルダーは、エルメスのカルメン(オレンジ)だった。もちろん、カードケース、小銭入れもオレンジに統一。カードケースの上にある鍵型のキーホルダーもエルメス。こちらは、当時W124のために借りた駐車場の鍵だ


 

スガ 俺にも、キーホルダーにはこだわった記憶がある(笑)。

トガ そういう時代だったんだよな。だからネオクラな300E-24のキーにもエルメスのキーホルダーを用意した。鍵がシンプル過ぎるおかげで、やたらとキーホルダーが映えるんだよ(笑)。

そうすると、やっぱりテーブルの上に出したくなっちゃう(笑)。ネオクラシックに乗るなら、間違いなくキーホルダーは必須アイテムだね!

スガ ネオクラシックなクルマに、ぴったりなキーホルダーを探すのも楽しそうだよな。

トガ そういう愉しみ方が現代のクルマでもできると、クルマ生活がさらに楽しくなるのかもな。もう手離してしまったけど、W124は、機会がまた乗ってみたいクルマの1台。

でも、もうあれほどの極上車は見つからないかも知れないけどね。

スガ そういえば300E-24は何で手放しちゃったの?

トガ じつは今回も、300E-24を譲って欲しいと言ってくれる買い手が現れたんだよ。

スガ 欲しいと言ってくれる人がいる時が売り時ってやつだね!

トガ その通り。そして、その買い手というのがBRチャンネルのフォロワーで、まだ20代の成功者だったんだよ。

俺としては、そんな若者にこそW124の良さを体感して欲しかったのもあるんだけど、その彼が「W124を堪能した後は、父にプレゼントしたいと思います」なんてことまで言うワケだ。そんなことを言われたら、彼に300E-24を譲ることしか俺の選択肢はなかったんだよね(笑)。

スガ 父にプレゼントってところに感動しちゃったワケだ(笑)。まぁ、そういう理由があったのなら、極上の300E-24を手放すのも仕方ないかな。

トガ そうだろ? でもなスガ、あんな極上なコンディションのクルマ、二度と出てこない気もするんだよ。そう考えると…………あ〜、やっぱり手放さなければ良かったかも(笑)。

スガ トガ、間違いなく時すでに遅しだ(笑)。

 


オールタイムスターズ

オールタイムスターズとは、ネオ・クラシックなメルセデスを正規ディーラーがリフレッシュ&リファインして販売、メンテナンスしてくれるコンテンツのこと。その仕上がりには、正規ディーラーならではのこだわりが感じられる

メルセデス・ベンツ 300E-24

 ボディサイズ:全長×全幅×全高=4740×1740×1445mm
 ホイールベース:2800mm
 車重:1540kg
 駆動方式:FR
 エンジン: 直列6気筒DOHC 24バルブ
 排気量:2960㏄
 トランスミッション:4AT
 最高出力:225ps(165kW)/6400rpm
 最大トルク:27.6kg・m(270.7N・m)/4600rpm
 価格:¥8,030,000

メルセデス・ベンツ品川

東京都品川区東品川3丁目28−25
営業時間:平日9:30~18:00 土・日10:00~18:00
定休日:祝日

文・菅原 晃