
1979年にデビューした「Gクラス」は、2018年の新型で初のモデルチェンジを果たした
スガ 前回は、ポルシェ991のGT3に乗っていた時代のセカンドカーとして、メルセデス・ベンツE220d アヴァンギャルドを購入。
予算、必要に応じたサイズ感、使い勝手などの制約だらけの中で選んだ、ある意味何の期待もしていない一台だったにも関わらず、実際に乗ってみると、約40年に渡るクルマ生活の中で、間違いなく5本の指に入る名車だったことが分かったのだ、ってところで話が終了しているんだよ。
で、今回はE220dの次のセカンドカーになるんだけど、俺の頭の中に『E220d、かなり気に入っているクルマなんだから、もう少し乗り続ければ良いのに』と思った記憶があるということは、E220dも意外と短いサイクルで乗り替えたんだよね?
トガ あれ? E220dはけっこう乗ってなかったっけ?
スガ そんなことを言うような予感がしたので、過去のトガブロを確認してきました(笑)。そしたら、やっぱり所有していた期間は短いんだよね。
トガ あれ? そうだった?(笑) でもスガ、これはちゃんと書いて欲しい。E220dは間違いなく最高の1台だったんだよ。だから長く乗ろうと考えていたことは事実。でもな、白状してしまうと、そんな決心をした俺に悪魔の囁きをした人がいたんだよ。俺としてはE220dには何の不満もなかったのに、あの人の囁きのせいで俺は……。
スガ うん、下手な小芝居はいらない(笑)。で、誰にそそのかされたんだい?
トガ はい。当時メルセデス・ベンツ日本にいらっしゃった金太郎さんです。
スガ 金太郎さんって、当時社長だった上野金太郎さん?
トガ そう、その金太郎さんが、「トガッチが前に乗っていたゲレンデが、今度フルモデルチェンジするよ。かなり良いクルマに仕上がっているよ」なんて囁いてきた(笑)。
スガ あ、悪魔の囁きってヤツだ。
トガ それだよ。だってメルセデス・ベンツ日本の社長の囁きだぜ。「マジっすか?」って感じになっちゃうのも仕方ないと思うだろ?(笑)。社長って、間違いなくそのブランド最強の営業マンでもある訳じゃん。そんな人がおススメしてくるクルマなんだから、確実に良いクルマであることは間違いない。
だから当時の金太郎さんに、『ゲレンデの新型の仕上がりがすこぶる良い』なんて話しをされたら、乗ってみたくなってしまうのも仕方がないんだよ。
スガ 一所懸命、言い訳をしていますな。でもさ、ゲレンデがセカンドカーで、ファーストカーがGT3って、だいぶ調子に乗っていると思わない?(笑)
トガ うるさい、でもサラリーマンをやめて、調子に乗っていたのは認める (笑)。調子に乗っているついでに家に帰ってすぐ、「ゲレンデを購入したい」と妻に相談したんだけど、予算の問題もあって『G63は無理だよ』って言われてしまった。となると、G550しかない。
スガ あら? G550はOKだったのね(笑)。
でもトガは、E220dでディーゼルエンジンの素晴らしさに目覚めたんじゃなかったっけ? だったらG350dって選択肢はなかったの? トルクもあるしさ。
トガ 今考えればそうなんだよ。でもあの時は、2.5トン超えの重いクルマがディーゼルで走る訳がないって、なぜか思い込んでしまっていたんだよ。
さらにディーゼルの発売が、ガソリンより遅かったような記憶もあるから、あの時はV8のガソリンエンジンを積んでたG550一択になってしまったんだと思う。
ついでに言うと、もうG550に決めちゃおうかな? なんて考えていたら、金太郎さんが、「トガッチ、今決めてくれたら、すぐ納車できるよ」なんてダメ押しもしてくるんだよね(笑)。
スガ さすが最強営業マン、押しも強い(笑)。


ステアリングは従来のボール循環式から電動アシスト式のラック&ピニオン式に変更されている
トガ それな(笑)。そして当時は「トガッチがなんでE220dみたいな地味なセダンに乗っているの」と言われることが多かったのも、クルマを替える決心をした理由のひとつ。確か金太郎さんにも言われた記憶がある(笑)。
スガ 確かにトガの選んだクルマのくせに、まったく特別感が無いもんな。
トガ うるさいよ(笑)。これは前回の愛車遍歴特別版! でも話したことなんだけど、当時の俺は会社を辞めて独立したばかりだったから、『戸賀は贅沢ばかりしている人間』というイメージを、何としても払拭していきたいという狙いがあった。だからあえて、地味なセダンを選んだという側面もあったんだよ。でも、今までの愛車遍歴決定版! を見てくれれば分かるように、けっこう派手めなクルマに乗ってきたことも事実。E220dに乗っていることで、「なんで地味なセダンに乗ってるの?」と聞かれ続けるのも、ある意味仕方がないんだよね。
でもさ、その度に「いやいや、これはセカンドカーで、じつはポルシェのGT3も持っているんです」って言い訳するのも、なんかカッコ悪いし、いい加減疲れてくる訳だよ(笑)。 そんな時期に、『新型のゲレンデを即納できる』って金太郎さんに言われたら、やっぱりグラグラってきちゃうんだよ(笑)。
スガ さすが最強営業マン、新型をお勧めするタイミングもバッチリだった訳だ。
トガ 確かにそんな感じだったかも。
最高のクルマでも、納車された日から魅力は落ちていく
スガ で、購入したG550は、どんなクルマだったの?
トガ ボディカラーは俺の好きなガンメタで、インテリアはブラウンレザーという組み合わせだった。
こんなにドンピシャに俺好みの仕様は、普通なかなか手に入らない。でも、いち早く契約したこと、そしてモデルチェンジ後の新型の人気があまり高くなかったから、ギリギリ手に入れることができたんだと思う。


戸賀編集長の愛車となったG550は、ガンメタのボディカラーにブラウンの本革シートというお気に入りの組み合わせだった
スガ あれ? このモデルって最初は人気がなかったんだっけ?
トガ この新型が発表された当時はそうだったんだよ。クルマ雑誌などでも、『新型は余計な贅肉が付き過ぎ。先代の方が小さくて良かった』なんて意見が多くて、何となく先代見直し論みたいなものも強かった。
でも俺としては、先代は風切り音も半端ないし、トラックみたいにガタピシいってたから、間違いなく新型の方が良いと感じていた。確かに、先代みたいに車幅がスリムなのも、色々なメリットがあるけど、新型の乗り心地の良さと音の静かさは、良い意味でレクサスみたいでクルマとしての進化を体感することができた。さらに新型は二重ガラスだったから静粛性もバッチリだった。
前にも言ったかも知れないけど、自分のクルマ選びや愛車の評価に関しては、ジャーナリストの意見より自分の感性を信じることにしているんだよね(笑)。
スガ メルセデスのCLSの回あたりから、トガが自信を持ち始めたような気がする(笑)。でも、俺も自分で所有していた人間の意見が、一番正しいと思うよ。
で、肝心のセカンドカーとしての使い勝手はどうだったの?
トガ 何もかもが最高だった。E220dと違って俺好みの左ハンドルだったし、ゴルフに行く時にも、大活躍してくれたしね。
ちなみに俺は、当時人気のスポーツライン(タイヤがインチアップされている)ではない、ノーマルのG550をチョイスしたんだけど、これも正解だった。E220dの時と同じで、インチアップされていないベーシックなモデルのほうが、断然乗り心地が良かったんだよ。

従来のGクラスと比べると、格段に近代化されたインテリアも新型の大きな特徴だ
スガ じゃあ、理想のセカンドカーをついに発見って感じだったのかな?
トガ いや、じつはそうとも言えないんだよ。クルマを買う時って、カタログを見たりしている時や、比較検討しているあたりが一番盛り上がっているだろう?
でも愛車として購入してしまうと、納車された時点から日に日に魅力が落ちていくものでもあるんだよ。乗れば乗るほど、色んな欠点に気が付いてしまうっていうのかなぁ?
さらに不可抗力ではあるんだけど、走行中に小石が跳ねてボディに傷が付いたり、ちょっとしたミスでホイールをガリったりしてしまっても魅力はどんどん落ちてしまう。これは仕方ないことなんだけどね。
スガ その気持ち、分からんでもない。石跳ねの傷は、心に本当に深いダメージを与えてくれる。
トガ でもなスガ、俺の気持ちが一番萎えたのは、六本木通りをG550で走っていて隣にG63が並んだ時なんだよ。
『うわっ、負けた』と感じてしまう自分が居ることに気が付いてしまったんだよね。やっぱり人に負けるのが本当に嫌だった訳だ(笑)。
スガ 分かる〜(笑)。でも、セカンドカーなんだから別に負けても問題無し、っていう気持ちにはならないものなの?(笑)。
トガ 良いツッコミだ(笑)。でもなスガ、Eクラスに乗ってるオーナーには、「へぇ〜、トガッチってディーゼルなんだ、俺はV8だけど」って人はいないけど、ゲレンデにはそういうエンジン・ヒエラルキーみたいなものを持っている奴が、まぁまぁ存在するんだよ(笑)。
G63に乗っている奴に、「戸賀さんの550、エンジンは同じV8ですけど、ノーマルってどんな感じなんですか?」なんて聞かれると、やっぱりカチンとくるんだよね。
スガ 分かる〜(笑)。
トガ そりゃ向こうは鬼っ速だし、ましてやその頃になると、女の子でも『G63だぁ♡』って分かるくらいモテ始めていたんだよ。それも気に入らなかった(笑)。
なんなら先代のG63に乗っているくせに、『あぁ、そっちは550なんすね』なんて態度の奴もいるんだよ。そっちの古いG63より、こっちの新型550の方がはるかに良いクルマだということを、何度説明してやろうと思ったことか(笑)。
だから、そんなことが何度も続いてくると、良いクルマなのにも関わらず、段々と嫌になってきちゃうんだよ(笑)。
スガ やっぱり最初からディーゼルを選べば良かったんじゃないの?
トガ 今考えてみればそう思う。ディーゼルだったら、『あぁ、僕そういうのじゃないんで。これセカンドカーなんで』って感じで心に余裕を持って言えたと思う(笑)。
同じV8エンジンなら、ターボのチューニングが違うだけのクルマであっても、購入するなら絶対に上のグレードを選ばなきゃダメだということを、あらためて勉強させて貰った1台だったとも言えるね(笑)。
スガ 俺にとっては、あらためてトガの負けず嫌いを再認識させてくれた1台という気がするよ(笑)。
次回の愛車遍歴決定版! もセカンドカーになるのかな?
トガ そうだね。G550の次のクルマってことになるとまたセカンドカーになるんだけど、次の1台は、セカンドカーという呼び方が、まったく相応しくない1台と言えるかも知れない(笑)。
スガ 何それ? その1台、かなり気になるんですけど〜(笑)。
ということで、次回へ続きます。

メルセデス・ベンツG550
全長×全幅×全高:4817mm×1931mm×1969mm文・菅原 晃