トガナリ

Column

25/5/25

vol.9 メルセデスのラグジュアリーカー、2台目にCL500、3台目にはCLS500を続けて購入してしまいました

ショルダーライン下はセダンボディ、上はクーペという独特のフォルムが特徴だったCL(C215)

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選んぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

所有期間は、まさかの2か月⁉

スガ 『愛車遍歴決定版!』、早くも10回目を迎えることとなりました。ということで、今回も前回のおさらいから始めようかと思います。

前回は、「大人のファッション誌である『メンズイーエックス』の編集長に、33歳で就任を果たしたトガが、現状のライフスタイルを変えていく必要性を感じことから、手っ取り早くまずは、クルマを変えることを決定」

「質実剛健を形にしたかのようなゲレンデヴァーゲンを手離し、ラグジュアリーの代名詞と言っても過言ではないSL500(R230)を購入」

「しかし、あろうことか当時の上司がまさかのSL500、それもボディカラー(シルバー)まで丸被りの1台を所有していることが判明。睨まれる前にさっさと売り払い、次のクルマに手を出した」という流れで問題ない?

トガ スガ、お前の説明はいつも悪意しか感じない(笑)。まぁ、大筋で間違いはないよ。

スガ ということで、今回はSL500の後にトガが選んだクルマを教えてもらいたい。でも俺、そのクルマの記憶があまりないんだよね。

トガ まぁ、ちょうどお互いに仕事が忙しくなってきて、前より会う回数が減ってきた頃だからな。覚えてなくても仕方がない。そのクルマはメルセデスのCL500(C215)なんだけど、ここだけの話し、じつは2か月しか所有していないんだよね。

 


走行状況に応じてスプリングとダンパーを制御する、アクティブボディーコントロールを装備。それにより、快適性とスポーツ性を両立していた


スガ 出た、気に入らないと速攻で売りに出す男(笑)。っていうか、CL500って、そんなに低評価なクルマだったっけ?

俺にはまったく興味のない「贅沢なクルマ」であることは間違いないけど、そんなに悪いイメージはないんだけどなぁ。

もともとポルシェみたいに、走りを愉しむクルマでもないし、大人のファッション誌の編集長になったトガが、大人のラグジュアリーをあらためて勉強するために所有したクルマなんだろ? そんなに急いで売ることも無かったんじゃないの?

トガ まぁな。確かに俺も、最初の頃はけっこう気に入っていたんだよ。「S」のクーペではなく、あえてのCLなら、『こいつ、なかなか分かっているじゃん』的な通な感じも醸し出せるし、まさに大人の男性ファッション誌の編集長にぴったりだと思っていたワケだ。

さらに当時は、ゴルフを再開したこともあって、「キャディバッグが2個載せられる」クーペは、俺にとっては、まさにドンピシャの選択だった。

ボディカラーは当時のトレンドを取り入れての黒。このカラーに宇宙船みたいなリアスタイルが絶妙にマッチしていて、文句なしにカッコ良かった。けっこう本気で気に入っていたんだよ(笑)。ただ、5リットルのV8エンジンは、ちょっとデカすぎるかな? とは思っていたけど。

スガ なんでそんなお気に入りを、たった2か月で手離すことになっちゃうの?

 

かなり効いてしまった銀座の女性のひと言

トガ じつは銀座関係で働いている女性から、あるひと言を言われちゃったんだよ。

スガ おっ、大人のファッション誌の編集長ともなると、銀座で飲む機会も増えてくるワケだな(笑)。新米編集長だったトガは、銀座のお姉さんに何を言われてしまったのかな?

トガ うるさいな(笑)。銀座に勤める彼女たちは、当然リッチな大人の男性をたくさん見てきているワケだろ? だから世の富裕層の動きに敏感であることは間違いない。そんな銀座の女性に、「若いうちからこんなクルマに乗って、まるでプロ野球の人気球団の若手選手みたいだね」なんて言われちゃったんだよ。これ、かなりショックがデカかった。

 


リアシートもそれぞれが独立した2座という贅沢な作り。内装の仕上げも含め、ラグジュアリーを学ぶには最適なクルマ選びだったハズだったのだが……


スガ あぁ~、そりゃキツイ一撃だな。当時はJリーグが始まったばかりで、サッカー選手の人気が凄かった頃だろ?

かたや野球選手は、(一部の選手を除いて)金は持っているけど、ファッション的にもライフスタイル的にもダサさの代名詞的な扱いをされていた時代だもんな。そんな時代に大人のファッション誌の編集長が、「プロ野球選手の若手みたい」って言われるのはかなりショックだわな。

トガ だろ? 2か月で手離すのも仕方ないと思うだろ? でもなスガ、ちょっと冷静に考えてみると、彼女が言わんとしていたことは、正しかったことが分かったんだよ。

 

クルマ選びに、カッコ悪い忖度は不必要!

スガ どういうこと?

トガ 野球界を例にしてみると、『(先輩)スター選手が乗っているクルマと同じクルマに乗るのはヤバい』『だからちょっと格下のクルマを選ぶ』という、上下関係を気にし過ぎた、カッコ悪い忖度が透けて見えてくるんだよ。

スガ でもそれって、上司と同じSLを手離して、ちょっと格下のCLを手に入れた誰かと一緒じゃん(笑)。

トガ ムカつくけど、そうなんだよ。年功序列や忖度に縛られたクルマ選びが、あまりにカッコ悪すぎることに気が付いたから、速攻で乗り換えを決めた。

当たり前の話しだけど、そんな忖度しながらのをクルマ選びなんて、カッコ悪いし面白くないからね。ぶっちゃけるけど、当時の俺は、「SL500の後にCLに乗るのって、格下げしちゃったみたいでカッコ悪いかな?」なんて思っていた部分があった。

だけど、「エンジンは5リッターのV8だから、ま、いいかな?」みたいに、自分を無理やり納得させていたんだよ。

そんな時に、銀座の女性のひと言で、「エンジンの大きさとか、車格とかグレードなんか、どうでも良い。一番大事なのは、自分が本当に好きなクルマを選ぶこと」なんだ、という至ってシンプルな答えにたどり着くことができた。

『クルマが悪いんではなく、あなたがそのクルマを選ぶに至った過程がカッコ悪いんだよ』ということを、俺に教えてくれたんだと思うんだよ。

スガ 深読みし過ぎている気も若干するけど、「自分が本当に好きなクルマを選ぶ」という部分は間違いないと思う。じつはそれが一番難しいんだけどね。

 

CL500の次に選んだのは、色気が感じられる1台

スガ で、CL500の後に選んだクルマってことになるけど、これはかなり難しい選択だったんじゃないの?

トガ いや、意外とすぐ決めた。次に選んだのは、CLS500だった。

 


2ドアクーペにさえ見えてしまう流麗なフォルムは、メルセデスに不足していた色気を感じさせてくれた


スガ やっぱりメルセデスなのね(笑)。

トガ ほら、当時の俺は、E280、ゲレンデヴァーゲンと乗り継いで、かなりメルセデスというブランドに傾倒していたから(笑)。さらに言うと、SL500とCL500を合わせても、8か月しかメルセデスのラグジュアリーモデルに乗っていないんだよ。これじゃ、メルセデスのラグジュアリーを語る資格が無い。

そこでデビューしてからまだ間がなかった、ラグジュアリーなCLSの購入を決めた。ちなみにCL500に乗っていた時に、5リッターのV8はデカすぎるかな? と感じたので、エンジンは3.5リッターのV6でも良かった。

でも、ヤナセにあった新古車の在庫がCLS500だったんだよ。だからCLS500一択だった。ボディカラーは濃いグリーンメタリックで、内装はベージュ。RV8のおかげで、ちょっと苦手になっていた英国車みたいなメルセデスだったことに気が付いたのは、購入後だった(笑)。

スガ 確かに英国車っぽいな(笑)。CLSはどんなクルマだったの?

トガ 本当に、美しい4ドア・ハードトップだったね。2ドアクーペにさえ見えてしまう流麗なフォルム、セパレートした贅沢な2座仕様のリアシートなどは、それまでのメルセデスに足りなかった色気を感じさせてくれたし、もう一目で気に入った。

でも当時のモータージャーナリストや、クルマ業界の人間の評価は、「リアシートに座る時、ピラーに頭をぶつける」とか「カリーナED?」とか、もう、けちょんけちょんな評価だったんだよ(笑)。

俺はまったくそう思わなかったけどね。でもこのCLSは、モータージャーナリストやクルマ業界の予想に反して、人気が徐々に上昇。結果、世界的にも大人気のモデルに成長したワケだ。

だから、『やっぱり、(俺が)好きなクルマを選んでおけば、間違い無いんじゃないか?』と勘違いさせてくれたモデルでもある(笑)。

スガ そしてその勘違いは現在も続いていると。

トガ スガ、うるさいぞ(笑)。ちなみにこのCLS500は、現代においてもけっこう狙い目の1台だと俺は思っている。クーペのような美しいフォルムは、20年経った今でも十分に通用するし、何と言っても新車当時1000万オーバーだったクルマが、今ならかなり良いコンディションの個体であっても100〜150万円で探せてしまうんだよ。

ファーストカーが、スーパースポーツとかラグジュアリーSUVという人が、セカンドカーとして乗るなら、かなりお得感はあると思うよ。

スガ 失敗を重ねてたどり着いた1台だから、説得力が違うね。メルセデスのラグジュアリーカーを乗り継いだことによって、クルマ選びの本質を、あらためて学ぶこととなった、という感じなのかな?

トガ まぁ、そんな部分もあるかな。

スガ っていうか、今考えてみると、2年で1000万超えのメルセデスを3台乗り継いだ30代半ばの男って、普通に考えたらけっこうヤバくないか? ちょっと話しを聞かせてくれ!

トガ そこはノーコメントで(笑)。次回はスポーツカーに戻るぞ!

メルセデス・ベンツ CL500 (C215)

 全長×全幅×全高:5000mm×1855mm×1400mm
 ホイールベース:2885mm
 車両重量:1810kg
 エンジン:V型8気筒SOHC 4965cc
 最高出力:306ps/5600rpm
 最大トルク:46.9kg-m/2700~4250rpm
 トランスミッション:7速AT

メルセデス・ベンツ CLS500 (W219)

 全長×全幅×全高:4915mm×1875mm×1390mm
 ホイールベース:2855mm
 車両重量:1800kg
 エンジン:V型8気筒SOHC 4965cc
 最高出力:306ps/5600rpm
 最大トルク:46.9kg-m/2700~4250rpm
 トランスミッション:7速AT

文・菅原 晃