トガナリ

Column

26/3/10

vol.43 初心に戻って、ポルシェ911の購入を決めた戸賀編集長。彼が選んだモデルとは一体?

日本に入ってきた台数はかなり少ないと考えられる911ダカール。出会えたことが奇跡⁉

出版業界では、かなりのクルマ好きとして知られている戸賀編集長(トガ)。数々のクルマを乗り継いで来た彼が、10年に渡るメンズクラブ編集長という肩書を外し、忖度が無くなった状態のなかで、「どんな基準でクルマを選んでいたのか?」、「そのクルマの魅力はどこなのか?」等を大いに語ります。
話の聞き手は、戸賀編集長が雑誌編集者時代から30年来の付き合いを続けている、フリーランスエディターの菅原(スガ)。若い頃の数年間は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」の二人。そんな二人ならではの昔話、こぼれ話もお楽しみに。

 

いきなり911を買うことはできないのです

 

スガ 前回は、やっぱり911に戻ろう、というところで話しが終わったけど、狙っているモデルはあったの?

トガ スガ、お前は知らないかったかも知れないが、2024年当時、ポルシェの正規ディーラーで新車の911をいきなり買うことは不可能だったんだよ。

スガ どういうこと?

トガ 簡単に説明すると、当時ポルシェ911の新車を買うためには、まずタイカン(電気自動車)などのエントリーモデル? を新車で購入して、次にボクスター、ケイマンみたいに段階的にクルマのグレードを上げていくこと必要があった。

要するに、自分のステイタスを上げきったところで初めて、911カレラを購入する権利を手に入れることが出来たんだよ。

 


戸賀編集長、もちろんタイカンにも乗っています

ボクスターSにも乗っていました!

ケイマン


 

スガ え~、当時ってそんな仕組みになっていたの?

トガ そうなんだよ。ポルシェもついにエルメスのバーキン状態か? って感じだった。まぁ、あまり人気が上がってこないタイカン(電気自動車)にテコ入れをしようって狙いもあったと思うけどね。

スガ なるほどなぁ。タイカン、実際あまり街中でもみないしね。

トガ だよな。当時、バブル価格だった911を手に入れて、即、転売する奴もけっこう居たみたいだから、その対策っていう意味もあったんだろうね。

スガ クルマ好きとしては許せん行為だな。

トガ 俺も同感。でも俺はそんな状況になっていたことなんて知らないから、『911に戻ろうかな』って考えた時、とりあえずポルシェセンター目黒のナンバー1営業の岡本さんに連絡してみたんだよ。彼からは、以前ターボSやGT3を買ったりしてきたからね。

でも、やっぱりその時に言われたのは、「戸賀さんであっても、いきなり911を買うのは無理です」ってことだった。過去にターボSやGT3を買ったことは、いつの間にかリセットされていたんだよ。

スガ そんなもんなの?

トガ そんなもんなんだよ。もっと言うと、俺の知り合いに、ある大富豪の先輩がいるんだけど、その人は911だけじゃなくカイエンやターボS、その他諸々、何十台もポルシェに乗ってきた人なのに、ちょっとフェラーリに浮気してポルシェを所有していなかった時期があっただけで、すべてリセットされたという噂がある。

 


カイエン


 

狙うは新古車の一択

 

スガ ということは、トガの場合もポルシェを所有していない時期があったからリセットされちゃったってワケ?

トガ あくまでも噂だけどね。でもなスガ、さすがにF8トリブートの次のクルマにタイカンは選ばないだろ? でもそうなると、911を手に入れるには新古車を探すしかなかったんだよ。実際にカーセンサーをチェックしてみたら、新古車の911には意外と球数があった。これも即転売の影響だよな。

俺の記憶では、6000万超えのGT3RSで走行が数十キロ、要は納車した後にまったく触っていないであろう新古車がゴロゴロしている状態だった。本当に球数は豊富だったんだよ。ただ、とんでもないプレミア・プライスになっちゃっていたんだよね。

でもさ、タイカンを買わされて、ボクスターを買わされて、最後に911を買うってなったら、タイカン買うのに1500万、ボクスター買うのに1000万、最後に欲しい911が3000万だったら、合計5500万だろ? だったら最初から新古車のGT3でいいじゃん、ってことになると思わない?

スガ まぁ、そうなるよな。新古車って言っても、ほぼ新車と言って良いようなクルマなんだし。

トガ そうなんだよ。あ、そういえばスガ、今は最初に買えるポルシェに、マカンの電気自動車も増えたらしいよ。買っちゃえば?(笑)

スガ 買えん!(笑) 選択肢が増えるのは良いことだけど、最初の1台はやっぱり電気自動車なワケね。

トガ そうなんだよ。タイカンもマカンも良いクルマなんだけど、電気自動車は人気がイマイチだよな。

まぁ、そんなこともあって、セカンドマーケットでGT3、GT3RSを狙うことにしたんだけど、そうこうしているうちに、911ダカールが発表になった。一応、ポルシェセンターの岡本さんに「ダカール欲しいけど、やっぱり無理だよねぇ」と鎌を掛けてみたけど、聞いた瞬間、顔に『無理です』って書いてあった(笑)。

スガ そりゃさすがに無理だろ。無理を承知で聞くトガの根性が凄いと俺は思う(笑)。

トガ うるさいな (笑)。でも本当に欲しいと思っていたから、ブログにもちょくちょく「ダカール欲しいなぁ」みたいなことを書いていたんだよ。そしたら懇意にしている松淵さん(松ちゃん)を介して、ある方から「お売りしても良いですよ」という話しが舞い込んできた。

911の限定車って普通1000台くらいしか用意されないのに、ダカールは2500台も作られているんだよ。これは911の限定車としては多い方なんだけど、なぜか日本ではほとんど見ることがなかったんだよね。GT3に遭遇する方がまだ可能性が高かった。ということは、日本に入ってきたダカールはかなり少なかったと考えられるんだよ。だから出会えるチャンス自体が少ない。

でも松ちゃんが居てくれたから、チャンスが巡ってきた。さらに彼が間に入ってくれたお陰で、先方と良心的な価格で双方納得の交渉ができたんだよ。

スガ 凄いラッキーじゃん。

トガ ラッキーというか俺の人徳?(笑) そういえばこの時って代々木にある『WIDE(ワイド)』っていう自動車ディーラーにもお世話になっているんだよ。

ここも松ちゃんに紹介してもらったんだけど、数千万円という大きい取り引きは、個人間での売買よりショップを介したほうが何かと便利なワケだ。そんな時、『WIDE(ワイド)』さんがひと肌脱いでくれた。これには本当に助かったし、感謝しかない。ちなみにこの繋がりも、俺の人徳だな(笑)。

そしてこれが、現在の愛車であるシェイドグリーンという若草色の911ダカールを購入することができた経緯となります。

 



 

スガ 人徳は知らんけどな(笑)。でもさ、911ダカールだと何となくSUV的なクルマな感じがしない?

トガ スガ、お前は何も分かってないな。確かにダカールが納車されてから、クルマ好きの知り合い達からも似たような連絡がきた。その内容は、「911は911だけど、なぜSUV的なクルマにしたの? あれはスポーツカーじゃないでしょ」とか「(当時乗っていた)ゲレンデヴァーゲン プロフェッショナルを売って、今度はアルピーヌみたいな小ぶりのスポーツカーをダカールに対してのセカンドカーにするんでしょ?」というものだった。

スガ そう考えてしまう気持ちは分かる。

トガ でも俺は彼らに、「俺にとって911ダカールはSUVなんかじゃなくて、純然たるスポーツカーである。今回のモデルは、84年にパリ・ダカールラリーを走って優勝したマシンの40周年オマージュとして発表されたクルマだから、間違いなくスポーツカー。そもそも俺にとって911と名が付くものは、スポーツカー以外の何物でもない」と答えた。

さらにダメ押しで、一昨年に発売されたル・ボランの4月号に載っていた記事の事を話したんだよ。その記事はポルシェのテストドライバーであるワルター・ロールさんが、ニュルブルクリンクを911ダカールで走っているものなんだけど、その時のタイムが何年か前のGT3、確か996だったと思うんだけど、そのタイムと同等だった。

スガ マジで!

トガ マジで。さらに履いていたタイヤが、あのゴツゴツしているオフロード走行に適しているオールテレーンタイヤだったというから驚き(笑)。

 


このタイヤでニュルブルクリンクを、996GT3と互角のタイムで走るダカールの実力、間違いなくスポーツカーです


 

スガ ホントに? そのタイヤで996のGT3と同じタイム?

トガ そうなんだよ。このことからでも、911ダカールのパフォーマンスが凄い事が分かるだろ? だから「911ダカールは、砂漠も悪路も、さらにはサーキットも走ることができる本物のスポーツカーなんです」と説明した。

スガ そんな具体的な例を挙げられたら納得するしかないな。

トガ だろ? 結論としては、俺は911の限定車が欲しかった。そうしたらラッキーなことに、友人の協力もあって911ダカールという素晴らしいクルマに出会うことができた。そして今、『僕は幸せなカーライフを送っています』って感じなんだよ。

スガ う~ん、なんかムカつく(笑)。

 

 

911ダカールに乗り始めて気付いたこと

 

スガ その後は実際にダカールに乗り始めたワケだけど、乗ってみることであらためて気付いたことって何かあった?

トガ まず分かったのは、ダカールは車高が上がっているので、ガソリンスタンドとかコインパーキングの段差を、まったく気にすることなく入ることができるってこと。予想はしていたけど、案の定そうだった。そして、タイヤの扁平率を落としているからなのか、無茶苦茶乗り心地が良いんだよ。

スガ そんなに乗り心地が良いの?

トガ これはマジで良い! まぁ、スペックを見た時から実用性が高いであろうことは分かっていたけどね。ノンターボでは無いけど、911GTSをベースにしているからパワーもある。それに、俺がオーダーしたワケじゃないんだけど、俺好みの2座仕様なのでリアにしっかりと荷物がおける。この辺の実用性の高さも気に入っている。

実用性とは関係ないところで言うと、992になってからポルシェも音にこだわり始めたんだよ。ポルシェには997の時から「スポーツエキゾースト」という排気音が切り替えられるオプションがあるんだけど、992以前のモデルではスイッチを切り替えても、ほとんど音に変化が無かった。

以前所有していた996のGT3だと3000回転以上回さないと聞こえなかったエンジン音も、ダカールでは「スポーツエキゾースト」の効果で良い感じに聞こえるようになっている。ジャダー音やメカニカルノイズもしっかりと入り込んでくるしね。992以降のモデルなら「スポーツエキゾースト」のオプションは間違いなくマストアイテムだと思うよ。

ということでダカールは、スポーツカーでありながら、実用にも最適な歴代でも最高の911の1台だと俺は感じています。

スガ なるほど。ちなみに、ダカールの前に、GT3とかGT3 RSの出物が出てきたとしらどうした?

トガ 条件によっては買っていたかも知れない(笑)。でもGT3、GT3 RS、ダカールの3台なら、実用性の高さを考えるとやっぱりダカールだよなぁ、とはクルマ選びの段階から思っていたんだよ。だから本当に良い出会いができたと思っている。

 

 

唯一の問題点は、バッテリー上がり

 

スガ 素晴らしい出会いだったダカールなワケだけど、ネガティブな部分はまったく無いの?

トガ いや、そりゃあるよ。一番の問題点はバッテリー上がりだね。どうやらダカールに積まれているバッテリーって、リチウム併用バッテリーみたいな感じらしいんだよ。ちゃんとしたデータは無いんだけど、そのリチウム併用バッテリーは3週間で上がる説がある。今まで乗ってきた911は、2~3か月放置していても問題なかったのに、ダカールは3週間で上がる。これって、フェラーリとかマクラーレンと変わらないんだよ。

ちなみに、マクラーレンはリチウムバッテリーだから、20分もアイドリングすればフル充電にすることができた。だからバッテリーが上がってしまうことはなかった。フェラーリはバッテリー充電器が付属されていているから、100Vのコンセントさえあれば、リアのナンバープレートの上の差込口から充電することができた。

当時のフェラーリの駐車場にはコンセントがなかったけど、Jackeryのポータブル電源を購入して乗り切った思い出がある。

でもなスガ、ポルシェともあろうものが、充電に関しては昔のままなんだよ。バッテリーのプラスとマイナスの端子をつかんで、充電するしかない。そしてその端子は、フロントフードを開けて、さらにその下のプラスチックの板を外さないと出てこない。これ、言葉にすると簡単だけど、けっこう面倒くさいんだよ。だって、フェラーリはコンセントに繋ぐだけだぜ。

スガ そりゃ面倒くさいな。でもその怒り方からみると、じつはバッテリーを上げた経験があるんだろ?

トガ ある(笑)。でさぁ、バッテリーが上がっちゃうと、充電させるためのファーストステップであるフロントフードを開けることすらできないんだよ。そこは昔と違って進化していて、バネでガチャンではなくて電気で作動させる仕組み。もう、フロントフードを開けるだけでひと苦労だった。

スガ うわ~っ、それは本当に面倒くさいな。ポルシェからは対策品は出てないの?

トガ 今のところは出ていない。でもな、スガ、この問題もじつは松ちゃんが解決してくれたんだよ。

スガ 松淵さんには、足を向けて眠れない状態だな(笑)。

トガ 本当にそう。ちなみにこの問題に関しては、松ちゃんがクルマの電気の配線のプロフェッショナルを紹介してくれたんだよ。その配線のプロが、フロントフード内に新設したソケットに充電器側のソケットをつなぐだけで充電ができるシステムを特別に作り上げてくれた。俺には配線のことはよく分からないけど、けっこうな大仕事だったと思うよ。このシステムを作ってくれたお陰で、通常時はフードを半開きにして常時充電しておけばまったくバッテリー上がりの心配は無くなった。最初からポルシェがこういう仕組みを作っておいてくれれば、問題は無かったんだけどね。

 


マンションの立体駐車場でのバッテリー上がりは、Jackeryのポータブル電源で解決できるのです


 

スガ なるほどね。ということは現状の問題は解決しているワケだ。ならば今は、大満足のカーライフってことで良いのかな?

トガ ところがだ。

スガ え、何かあったの?

トガ 今、911ダカールはマンションの立体駐車場に止めてあるんだけど、なぜか最強のポータブル電源Jackeryを使って充電しても満充電できない事態に陥っているんだよ。Jackeryに問い合わせしてみたら、『リチウムバッテリーとの相性が悪いことで、充電できてない可能性がある』って回答があった。

まぁ、満充電にできないだけで、とりあえず充電はできているから大きな問題では無いし、さらに電圧が13ボルトを超えていれば走行にはまったく問題は無いらしいんだけど、俺としては常に満充電にしておきたいワケだ(笑)。

スガ 妥協しないところはトガらしいと言えばトガらしいけど、そのぐらい我慢しても良いんじゃない?(笑)。

トガ いや、妥協はしない(笑)。

でも911ダカールに関して言えば、本当に最高の1台に巡り合うことができたと心から思っている。だからダカールとの付き合いは、ちょっと長くなりそうな予感がするんだよ。充電問題だけは何とか早く解決したいんだけどね (笑)。

スガ う~ん、幸せそうなトガを見ると何故かムカつく俺がいる (笑)。

ところでトガ、今のところ愛車遍歴決定版! は911ダカールで一旦終了になるワケだけど、今後はどんな感じで進めていきましょうか?

トガ じつはなスガ、今、俺には非常に気になるスポーツカーがあるんだよ。もちろんダカールは気に入っているよ。だからまだ、どうなるかは分からないけど、次回はそれを発表するなんていうのはどうかな?

スガ お、イイんじゃないっすか(笑)。 次回はそれでいきますか!

ポルシェ 911ダカール

 全長×全幅×全高:4530mm×1864mm×1338mm
 車重:1680kg
 駆動方式:AWD
 エンジン:3リッター水平対向6気筒 ツインターボ
 トランスミッション:8DCT
 最高出力:353ps(480kW)/6500rpm
 最大トルク:570Nm/2300―5000rpm
 価格:¥30,990,000(税込)

文・菅原 晃