トガナリ

Column

25/12/28

vol.36 フェラーリ F8 トリブートを選んだ理由と、納車後のまさかの事態とは? (後編)

モーターとバッテリーを積んでいるハイブリッドのスポーツカーに興味が無かった戸賀編集長。フェラーリでの選択肢は、最後の純化石燃料エンジン搭載モデルになるであろうF8しかなかった

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

 

なぜ、フェラーリF8トリブートを選んだのか?

 

スガ フェラーリのエンジンは、どんな人でも惹き付けられる感動する音を持っているというトガの意見、そしてクルマ好きなら、誰もが一度はフェラーリに乗ってみたいと思ってしまうこと、これはまったくその通りだと、俺も思う。

そこでちょっと聞きたいんだけど、なぜトガはF8を選んだの?

 

トガ その理由は意外と簡単。マクラーレンもミッドシップだったけど、やっぱり「フェラーリに乗るなら、絶対にミッドシップに乗る」、これに尽きる。

そして当時、新車で購入できるミッドシップのフェラーリが、F8とSF90しか無かったんだよ。 そして俺は、モーターを積んでいるハイブリッドのスポーツカーには、まったく興味がなかった。

モーターとバッテリーを載せることで、スポーツカーとしては最重要項目と言って過言ではない車重が増えてしまうからね。そうなると、最後の純化石燃料エンジン搭載モデルになるであろうF8を選ぶしかなかった。

まぁ、F8が純粋に化石燃料だけで動く最後のフェラーリになるのなら、購入後に価格も上がるんじゃないか? と考えたことは否定しないけど(笑)。

 


 


 

戸賀編集長こだわりのフルオーダー

 

スガ 今の時代に新車でフェラーリを買うことに加え、さらにハイブリッドも避けるとなると選択肢が少なくなるのは仕方ないよな。でも、新車が好きで、ハイブリッドが好きじゃないトガが選ぶ1台としては、F8はまさにぴったりな1台だと思う。

じゃあ続けて質問するぞ。今回のF8トリブートはフルオーダーをしたって言っていたけど、どんなオーダーをかけたの? トガのことだから、当然、細か~い部分までこだわったと思うんだよ(笑)。そこの辺りも詳しく聞かせて欲しい。

トガ そりゃ、こだわりました(笑)。フェラーリをフルオーダーするなんて、俺の人生において最初で最後かも知れないし、当時はそのF8トリブートに死ぬまで乗ろうと考えていたからね。細かいオーダーは後で説明するけど、実際にF8が納車される時は、今までに無いくらいかなりドキドキだった。その時もそうだったけど、フェラーリってかなり派手めなトランポで納車されるんだよ。

その派手めなトランポの屋根が開くと、初めて実車として目にすることになる、俺の好きなガンメタのフェラーリが現れるワケだ。

そしてその足元には、ボディと同色の5本スポークホイールやカーボンパーツが装着されているのが見える。まさに俺のオーダー通り! その時点で心の中では『やったぁ~~~~~』と叫ぶほど興奮した納車だった。あくまでも冷静を装ってはいたけどね(笑)。

 



スガ その気持ち、分かる〜(笑)。クルマ好きなら最高に興奮する瞬間だよな。ましてやフルオーダーした世界に1台の愛車が目の前にあるんだろ? これはかなりヤバいね(笑)。

なぁトガ、下世話な事を聞いても良い? ちなみにその付けたオプションっていくらぐらいしたの?

トガ スガ、本当に下世話だ(笑)。確かこの時に付けたオプションが、全部で700万くらいだったと思う。

スガ さすがフェラーリ。オプションの価格でトガが絶賛していたUp! GTiが3台買えちゃう(笑)。このまま続けて、他のこだわりのオーダーやオプションなんかも教えてくれ。

トガ OK。外装でいくと、ボディの上の方のパーツには、けっこうカーボン素材を使った。

反対にフロントの下回りとか、リアのディフューザーなんかは、せっかくカーボン素材を使っても道路に擦ったら割れちゃうワケだから、あえて樹脂素材をチョイスした。

下回りのパーツが割れた場合はすべて交換になるよな? カーボンだと200万円くらいは掛かりそうだったから、樹脂素材を選んだのは良い選択だったと思うよ。

それとは逆に、目に触れやすいボディ上部のパーツは、見栄えも考えてカーボン素材にした。

あと、目立つところでは、ブレーキキャリパーを黄色にしたことも挙げられるかな。ボディと同色の5本スポークのホイールと黄色のキャリパーの組み合わせは、かなり秀逸だった。俺のセンスはさすがだったと、今でも思っているよ(笑)。

 



 

目指したのは、エレガントでシックなF8

 

スガ 自画自賛かい(笑)。続けて内装をどんな感じにしたの?

トガ 内装はドアの内張もインパネも上の部分は黒、下は全部焦げ茶色でまとめた。俺としては、派手なクルマではなく、エレガントでシックなF8を創りたかったんだよ。だからシートも焦げ茶色で、伝統のデイトナシートをチョイス。シートベルトも当然、焦げ茶色。で、シートなどに施されるステッチは、全部白を選んだ。

スガ かなり落ち着いた感じの仕上げを狙ったんだな。ステッチの白も差し色として良い感じだと思う。

トガ だよな!(笑) でも液晶インパネの真ん中にあるタコメーター(アナログ)は、あえての黄色をチョイスしたし、センターコンソール前にあるオートマのボタンが並ぶブリッジはカーボンを使ったりして、スポーティな印象も残そうと考えたんだよ。

さらに、助手席に乗る人がドライブ中に楽しめるように、助手席側にもモニターを付けて、今の速度とか加速Gなどが分かるようにもした。遊び心も忘れてませんよ、って感じかな(笑)。

 



 

色が違う⁉ まさかの事態が発生!

 

スガ なるほどな。ということは、かなりトガ好みの1台に仕上がったんじゃないの?

トガ …………そうなるハズだったんだよ。

スガ えっ、そうならなかったの?

トガ あまり言いたくは無いけど、そうはならなかった。納車されたクルマに乗り込んで、スグに気が付いたことがあったんだよ。

スガ なになに? 何かあったの? 凄え怖いんですけど。

トガ あろうことか、白でオーダーしたはずのステッチ全部に、俺の苦手なまさかの赤が使われていたんだよ。さらに、それだけじゃなかった。

 



 

スガ ステッチの色が違っただけじゃないの? いや、マジで怖いんだけど。

トガ これも衝撃だった。シートベルトも焦げ茶色ではなく、赤だった。

スガ シートベルトが? マジで? いや、それじゃオーダーの意味がまったくないじゃん。直すことはできないの?

トガ 2022年の12月に納車された最終型のF8だから、本国のフェラーリでも対応のしようがなかったらしい。

ただステッチは、少しずつ糸を引っ張って染め直すことができるらしいんだけど、染め直した後は、白いデニムは履かないでください、とか言ってきたんだよ。ありえない話しだろ?

スガ 色落ちしてデニムが汚れるってこと? そりゃ、ありえないだろ。でも少なくとも、赤いシートベルトは交換できるんじゃないの?

トガ それは俺も考えた。でもフェラーリって、 フロントフードを開けた裏側に小さい黒い板が貼ってあるんだよ。そこに、所有者がどういうオーダーをしたかが、全部記入されている。

だからその情報と、実際の車両の仕様が違うと事故車を疑われたりするらしいんだよ。売却を考えるなら「変えない方が良いです」って、他のディーラーの人がアドバイスをくれたから、苦手ではあるもののシートベルトは赤のままにした。

でもさ、クルマに乗り込むと俺の苦手な赤が至る所にあるんだよ。それがたまらなく辛かった。

 

 

もっと派手な謝罪があっても良いと思う

 

スガ 購入したディーラーやフェラーリジャパンの対応はどうだったの?

トガ 謝罪はしてくれた。『申し訳ありませんでした』みたいなごく普通の形式的なヤツだけどね。

でもさ、安くはない買い物をして、けっこう頭を悩ませながらのフルオーダー、さらにそこから10か月待って、ようやく手元に届いと思ったらこの状況だぜ。もっと派手に謝罪してくれても良かったと思わない?

ステッチの色が違うなんていうのは、本当に小さなことなのかも知れないけど、やっぱり乗るたびに目に入るし、それが赤っていうのがどうしても気になる。せっかくフェラーリを手に入れたのに、何かが引っかかって心の底から喜べない自分がいたんだよ。

スガ そもそも、そんなミスが起こった原因はなんだったの?

トガ 最初は、ディーラーの担当と、「言った、言わない」みたいな感じになったりもした。

だけど最終的には、ディーラーでもフェラーリジャパンでもなく、本国のミスだったということが分かった。 この一件、俺にとっては、けっこう大きな事件だったんだよ。

スガ いや、かなり大きい事件だろ。でもその後は、泣き寝入りじゃないけど、そのままの状態で所有していたの?

トガ そうするしかなかった。でもさスガ、俺ってクルマを大事にしすぎるところがあるじゃん。やっぱり自分の所有したクルマは大事に乗ってあげたいんだよ。だからマクラーレンと同様、F8も雨の日は一度も乗らなかった。

結局、1年半強所有したけど、常にキレイな状態で、本当に大事に乗っていたと思うよ。これは個体差なのかも知れないけど、俺のF8はタイヤの空気圧がすぐ下がるから、給油のたびに空気を入れてあげた思い出がある。

さらにフェラーリと言えばバッテリーが弱点なんだけど、これもわざわざジャクリーのポータブル電源を購入して、電源のない立体駐車場だったけど、なんとかバッテリー上がりをしのいだ思い出もある。

あ、一つアドバイス。もし読者の中に、立体駐車場でフェラーリを保管していてバッテリー上がりで悩んでいるオーナーがいたとしたら、ジャクリーのポータブル電源はおススメです。

スガ 宣伝か?(笑)

 

 

何があっても、フェラーリのエンジン音は最強!

 

スガ まぁ、残念なことはあったけど、フェラーリとの思い出はちゃんとあるワケだ(笑)。ということは、クルマ自体はずっと好きだったってこと?

トガ 当たり前です(笑)。やっぱりフェラーリのエンジン音は最高! 間違い無く世界で一番良い音だと思う。911のフラット6も良いと思うけど、やっぱりフェラーリのV8の比では無い。パワーの出方も凄かったしね。

でも、ちょっとしたウィークポイントもあった。フェラーリは458、488、F8と進化してきたんだけど、458が出た2010年からF8までの14年間、同じシャシーを使ってるんだよ。だから、設計が古いこともあって、ボディがちょっと緩いことは否めなかった。

それでも911GT3より乗り心地は良かったよ。内装は芸術的に美しいから、サーキットを走るというよりは、街中のデートカーとして最高の1台だったのかも知れないね。

 



 

スガ でも残念ながら、トガのF8はステッチの色が違ったと。

トガ うるさいよ(笑)。でもなスガ、2000~3000回転くらいしか回さない慣らし運転レベルでも、フェラーリって本当にめちゃくちゃ音が良いんだよ。

軽く街中を流すだけでストレスは発散できるし、優越感にも浸れる最強のマシンだったと思う。なのに悲しいかな、俺とは不遇の出会いから始まっちゃったんだよね。

スガ ところでトガ、このF8トリブートも手離すことになるワケだけど、やっぱり欲しいと言ってくれる人が出てきたの?

トガ そうだね。クルマとしては本当に良いクルマだし、ステッチやシートベルトにしたって、俺のオーダーと違っただけで何の問題もないからね。1年半強だけど、本当に大事にしてきたから、自信をもって送り出すことができたよ。

でもちょっと残念だったこともある。最後の純化石燃料エンジンだったのに、価格にほとんど変動がなかったんだよね。もっと上がると思っていたんだけど、そこだけは本当に残念でならない(笑)。

スガ トガくん、毎回毎回、売却益が出るワケでは無いのだよ(笑)。

 

次回に続く!

フェラーリ F8トリブート

 ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4611×1979×1206mm
 ホイールベース:2650mm
 車重:1330kg
 駆動方式:MR
 エンジン:3902㏄V8 DOHC ツインターボ
 トランスミッション:7DCT
 最高出力:720ps/8000rpm
 最大トルク:78.5kgm(770Nm)/3250rpm
 価格:¥33,280,000(2019年)

文・菅原 晃