トガナリ

Column

25/12/15

vol.34 戸賀編集長にとって、あくまでセカンドカーという位置付けのSUV。だからこそ選べたのか? またもや究極の1台を購入!

戸賀編集長がマイバッハGLS600の前で記念写真。全長5210mmというサイズがあらためて実感できる

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 前回は、マクラーレン570S、ゲレンデヴァーゲンG400D マグノホワイトに続く3台目のクルマ扱いだったフォルクスワーゲンのUp! GTiが、いかに素晴らしいクルマだったのかを熱く語ってもらいました(笑)。

今回は話しを戻して、セカンドカーであるSUV? SUVの中のファーストカー? について話してもらいたいと考えております。

で、トガ。いきなり聞いちゃうけど、平置き駐車場が自宅から離れていたことが原因で、ほぼ乗ることが出来なかったメルセデス・ベンツG400dエディション マグノホワイト(限定車)の売却益が、数百万円だったっていうのは本当なの?

トガ それは本当。やっぱりG63のマグノホワイトではなくて、こだわってG400dのマグノホワイトが欲しいという、クルマをちゃんと分かっている人が一定数居たんだと思うよ。

さらに手離した時点で、2000キロくらいしか走ってなかったのも評価が高かった要因だろうね。俺が言うのもなんだけど、G400dのマグノホワイトを探していた人には、間違いなくかなりの出物だったのは間違いない。

あ、スガ、誤解が無いように言っておくけど、今回の件は転売とは違うぞ。じつはメルセデスには、購入したクルマに1年は乗らなければならないというルールがあるんだよ。でも今回の場合は、俺のG400dエディションマグノホワイトを欲しいと言ってくれる人がいたから、一度購入先のディーラーに買い取ってもらうという方法を取った。こうすれば、1年以内に売却しても転売ということにはならないんだよ。

スガ なるほど、転売防止策ってワケね。そういう策を講じなければならないところに、あらためてゲレンデのディーゼル、加えてマグノホワイトの人気の高さを実感するよな。

では早速、本題に入ろう。G400dのマグノホワイトを手離すことが決まった時、トガの中で次のクルマの候補はあったの?

トガ なんとなく、次はレンジローバー辺りかなぁ? というくらいのものはあったけど、正直な話し、まったくのノーアイデアだった。

そんな時、メルセデス品川の天野くんが悪い顔をしながら、俺にささやいてきたんだよ。

 

 

キャンセル車両の登場!

 

スガ 営業担当が悪い顔しながらささやくってことがあるのかよ?(笑)。

トガ いや、いわゆる企み有りっていう感じの顔(笑)。いつもはそんな顔はしないヤツなのに、その時はやたら悪い顔をして笑ったんだよ。

だから、「もしかして、またG63に限定が出るの?」って聞いたら、「違うんです、戸賀さん。じつキャンセル車両が出たんですよ。マイバッハのGLS600なんですけどね」なんて言ってきた。

スガ マイバッハのGLS600! また凄い1台をブッこんでくるなぁ(笑)。

トガ だから俺は、「いやいやいやいや、マイバッハでしょ? 買えるワケないよ」って言ったんだけど、さらに天野くんが「G63とマイバッハのGLS600の差は50万円もありません」って畳みかけてくるんだよ。

スガ えっ、その2台の価格差って、そんなもんなの?

トガ そう、俺も驚いたんだけど、そんなもんだったんだよ。でもなスガ、その時俺が考えたのはマイバッハが安いというより、G63が高すぎるんじゃないの? ってことだった。

G63の価格が、あまりに高くなっていた事実に、あらためて驚かされたんだよ。

 

 

G63が高すぎたという問題

 

スガ 確かにあの頃のG63の中古相場は、高止まりしていたよな。今は少し落ち始めている感があるけど。

トガ まぁな。今、中古のゲレンデヴァーゲンを選ぶとしたら、値が落ちづらいディーゼルが最強だと思うよ。

スガ やっぱりディーゼルかぁ。で、話しを戻すけど、あの頃の新車のマイバッハGLS600とゲレンデのG63の価格差が、50万円も無かったっていうのは本当の話しなの? マイバッハのほうが、圧倒的に高いようなイメージを持っていたんだけど。

トガ 俺もそうだった。だからベンテイガで調子に乗っていた事を露呈させたのに、続けてマイバッハを買っちゃうのって、俺のイメージ的に大丈夫なのか? って考えたりもした(笑)。

でも実際問題として、G63とマイバッハは50万円も変わらないワケだ。ましてや当時の俺には、数百万の売却益がある。

だったら、マイバッハ買っちゃおうかな〜? って気持ちになるのも仕方ないと思わない? G63の限定車は、まだしばらく出ないみたいだったし。

スガ まぁ、分からんでもない。

トガ ということで、俺が次に購入したSUVは、マイバッハGLS600なんだよ。

 


確かにモハーベシルバーというボディカラーのおかげで、マイバッハの押し出しの強さが緩和されているような気も……


 

スガ 話しの流れからしても、そうなるしかないよな(笑)。ちなみにマイバッハの購入相談した時の、奥さんの反応はどうだったの?

トガ 意外だったんだけど、いつもは厳しい妻も、この時はほとんど一発OKだった。やっぱりG63と価格に差が無いこと、さらに手元に売却益があったことが大きかったんだろうね。

いつもは引っかかる駐車場問題も、G400dで借りた平置きの駐車場を引き続き借りておいたから、なんの問題も無かった。

 

 

ちょっと地味なボディカラーだったのも良かった

 

スガ 確かに売却益&駐車場問題が無いのは大きいよな。今回はキャンセル車両ということだったけど、どんな仕様のクルマだったの?

トガ まずはボディカラーだけど、これはモハーベシルバーっていう、シルバーにほんのりシャンパンゴールドが入ったような色だった。

あのマイバッハらしい威圧的なツートーンもカッコいいけど、「ちょっと俺には合わないかな」と感じていたから、このカラーはちょうど良かった。

ちょっと地味な感じだったのも良かったし、このモハーベシルバーという色はメルセデスのGLSにも採用されていたから、マイバッハの特別感が出難いのも良かった。メルセデスとの差を明確に出したい人は、間違いなくツートーンを選ぶからね。

スガ おっ、金色のベンテイガで学んだことを活かしているじゃん(笑)。

トガ 金色じゃなくてブロンズな(笑)。もちろん左ハンドルだったし、内装がクリスタルホワイトっていう300万円くらいかかるオプションが設定されているクルマだった。

このオプション、シートはもちろん、ドアパネル、ダッシュ、さらにピラーも天井も真っ白いレザーだったんだよ。ドアパネルとダッシュは一部グレーだったけどね。

さらにステアリングも白革にブラックのウッドだったし、キャンセル車両とは思えない、まさに俺好みな世界観を持ったクルマだった。

ちなみに、内装にクリスタルホワイトのオプションを装着しているモデルは、今、カーセンサーで見ても相場が高いんだよ。クルマの買い替えが早い人間は、常にリセールを考えなければいけないという話しは何度もしたよな?

この時の俺は、クリスタルホワイトのオプションがついていることで、リセールが高くなる予感がしたんだよ。それが、このキャンセル車両のマイバッハGLS600を購入する決め手になったかも知れないね。

スガ マグノホワイトが高く売れたから、クリスタルホワイトもリセールが良いはずと思ったんだろ?(笑)

トガ うるさいよ(笑)。

 


戸賀編集長の愛車には、内装にクリスタルホワイトというオプションが設定されていた。シートはもちろん、ドアパネル、ダッシュ、ピラー、天井に真っ白いレザーが奢られていた


 

妻にも喜んでもらえた贅沢な空間

 

トガ ちなみに俺って、大型のSUVに乗っていても、家族以外の人を乗せることはまず無いんだよ。うちはPちゃんも入れて3人家族だから、俺がドライバーだったら、後ろの2座席は妻とPちゃんのもの。

たっぷりしたホールドシートにひとりずつ乗るっていうのは、言うまでもなく快適性を考えたら最高なのは間違いない。

そんな贅沢空間を、妻に愉しんで欲しかったというのも、じつはマイバッハを購入した理由のひとつでもあったんだ。

昔から贅沢をさせてもらってばかりだったから、「妻に何かしてあげたい、恩返しがしたい、喜ばせたい」っていう気持ちが、この頃、凄く強かったんだよ。

実際、妻をマイバッハの後部座席に乗せたら、むちゃくちゃ喜んでくれたんだけど、あれは本当にうれしかった。

さらにおふくろを乗せた時も、あの贅沢嫌いなおふくろが喜んでくれたんだよ。マイバッハは、妻孝行、親孝行をさせてくれた、最高の思い出を作ってくれたクルマでもあるんだよね。

 

スガ 奥さん、さらにおふくろさんも喜んでくれたクルマなんて、今までの愛車遍歴の歴史にはなかったよな。まさに奇跡の1台(笑)。

トガ いや、実際そうなんだよ(笑)。だからマイバッハは、本当に良いクルマだと思うよ。

スガ マイバッハが良いクルマなことは、皆んなが知っているとことだと思うけどね(笑)。

 

 

走りはジャンボジェットのイメージ

 

スガ ところで、マイバッハGLS600の走りはどうだったの?

 


マイバッハGLS600の加速はクルマのそれにあらず。まさにジャンボジェット機の離陸のようだと戸賀編集長


 

トガ これは実際に体験しないと分からないかも知れない。たとえば、高速道路で渋滞に巻き込まれていたとするだろ?

ノロノロ運転を繰り返しているうちに、ふいに渋滞が終わって、目の前が開けたところでアクセルを踏み込む。

その時の感覚は、クルマではなくて、まさにジャンボジェット機のそれ(笑)。それしか形容のしようがないんだよ。

感動のパワーと静けさ、剛性感を超えた、壁に守られたような安心感。当たり前だけど、ヤンチャな感じは皆無(笑)。

あれはまさにマイバッハならではの感覚なんだろうなぁ。あの時代に、それを経験できたことも良かった気がするよ。

 

 

期間限定の贅沢だった

 

スガ ここまで話しを聞いてきたワケだけど、このマイバッハGLS600ともお別れの瞬間は訪れるんだよね?

トガ そうなんだけど、じつはこのマイバッハには、長くてもこの夏までには売らなければならないという時間的な縛りがあった。

じつはクルマを買った時点で、次の引っ越しが決まっていたんだよ。その引っ越し先に、マイバッハGLS600を入れられる駐車場がなかったんだよね。

だから、どんなにマイバッハが気に入ったとしても、引っ越し前には手放すことは決定済みだった。

さらに、エンジンも一緒、ホイールも一緒というような、ほとんど変更点が無いようなマイナーチェンジがあったんだけど、これで相場がガクンと下がってしまうという想定外のことが起こった。

これがけっこうな下落だったんだけど、この出来事で「お金持ちはお金持ちであるが故に、常に新しいものに注目している」ということを再認識させてもらった。

あの相場の下落で富裕層の市場の特殊さを、身をもって感じさせられたよね。でも、ここでもラッキーなことに、相場が下がっていく前に、俺のマイバッハGLS600を欲しいという人が出てきてくれたんだよ。

スガ 相場が下がる前に売却できたのか! さすがトガ、運を持ってるね〜。まさに、売って欲しいと言われた時が売り時だったワケだ!

トガ その通り。だから迷うことなく、マイバッハGLS600も次のオーナーの元へ送り出すことが出来たって感じかな。

期間限定ではあったけど、究極の贅沢をさせてもらったクルマであり、富裕層の市場の特殊さ、凄さを再認識させてくれた1台でもあったよね。

スガ もう一度、マイバッハに乗りたいという気持ちは無いの?

トガ 今のところは、マイバッハに戻りたいという気持ちはまったく無いかな。まぁ、今後どうなっていくかは俺にも分からないけどね(笑)。

スガ トガ〜、またマイバッハ買っちゃえよ〜。そして俺をリアシートに乗せてくれよ(笑)。

トガがまた盛大にやらかしてくれることを、ワタクシ心より期待しております(笑)。

トガ 絶対に買わねぇ(笑)。

 

次回は、久しぶりのスポーツカーが登場の予定です。マクラーレンの次に戸賀編集長が選んだ1台とは?

 


マイバッハGLS600

 全長×全幅×全高:5210mm×2030mm×1840mm
 ホイールベース:3135mm
 車重:2840kg
 駆動方式:4WD
 エンジン:3982㏄ V型8気筒DOHCツインターボ
 トランスミッション:9速AT
 最高出力:557ps/6000~6500rpm
 最大トルク:730Nm/2500~5000rpm
 価格:¥29,150,000 ※2023年当時

文・菅原 晃