トガナリ

Column

25/11/10

vol.30 G550を手離した戸賀編集長が次に選んだ1台は、誰もが憧れる究極のSUVだったのですが……

ベントレー初のSUVとして2015年のフランクフルトショーで登場を果たしたベンテイガ。車名の「ベンテイガ」は、カナリア諸島のグラン・カナリア島に存在する巨岩「ロケ・ベンタイガ」や、ロシアなどに広がる広大な針葉樹林「タイガ」などに由来するという

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 前回では、ゲレンデヴァーゲンの購入を決意したトガは、敢えてノーマルのG550をチョイスし、その乗り心地の良さを実感。しかし六本木通りでG63に横に並ばれると、やっぱり負けた気がするという元来の『負けるのが嫌い』精神から、速攻で乗り換えを検討。新たな1台を発見するのであった、ってところで話しが終わったんだよな?

トガ その説明の仕方には若干の悪意を感じるけど、まぁ間違いではないかな(笑)。

スガ いや、悪意は無いよ。事実を言っただけ(笑)。っていうかトガ、G550から次のクルマへの乗り換えサイクルが、かなり短くない?

トガ いや、だってさぁ、大好きなクルマのことでクルマをよく知らないような奴に負けるなんてことは、当時の俺にはどうしても我慢ができなかったんだよ。

前回も言ったけど、流行りでG63に乗っているような、クルマをよく知らない奴に見下されているような感じがして本当に嫌だった。

だから乗り替えを、早めにしたって感じ(笑)。

スガ それなら仕方ないか(笑)。昔からトガは、クルマに関することは本当に負けず嫌いだったもんな(笑)。

世界文化社時代に、「戸賀くんからクルマを取ったら何も残らない」的なことを、同僚の女子から言われるくらい、トガがクルマに激しい情熱を注いでいた記憶が俺にはあるから(笑)。

トガ クルマを取ったら何も残らない的なことを言われたのは、俺もはっきり覚えているよ(笑)。

スガ 覚えているのか(笑)。まぁ、それくらいあの頃のCarEx編集部の若手は、給料のほとんどをクルマに注ぎ込んでいた感じだったもんな(笑)。

さて、昔の話はおいおい話すとして、早速G550の次のクルマにいってみたいと思います。今回もセカンドカーになるのかな?

トガ そうだね。ファーストカーがポルシェGT3だからね。このクルマだと、仕事でもプライベートでも支障をきたすことがけっこうあったから、ちゃんとした足になるセカンドカーが必要だったんだよ。

まぁ、セカンドカーって言ってもG550を手離して購入したクルマなので、セカンドカーって言い方はちょっと違うかも。感覚的には、SUVのファーストカーっていう感じなのかな。

スガ なるほど。スポーツカーのファーストカーがGT3、ならばSUVにもファーストカーがあるって感じ? 確かにスポーツカーもSUVも好きならそういう考え方もあるかもな。

トガ クルマ選びの経緯から話すと、G550でSUVの使い勝手の良さ、乗り心地の進化を感じることができた俺は、次も同じような現代的であり、且つ乗り心地の良いSUVを探そうと考えていた訳だ。俺のクルマ関係のネットワークも当然フルに使ったし、カーセンサーなども駆使してひたすらクルマを探し続けた。

そうしたら、偶然、良い出物を見つけることができたんだよ。

スガ かなりの力が入っているな(笑)。で、発見されたそのクルマとは?

トガ 何を隠そう、ベントレーのベンテイガなんだよ(笑)。

 


ベンテイガは、オンロード、オフロードの両方において頂点を目指したと言われている。開発段階では、多種多様なステージで過酷なテストが繰り返されたという。


 

スガ ベンテイガ〜(驚)。

究極のSUVの言っても過言ではない、最高の一台じゃん!

トガ 負けるのが嫌いなもんで(笑)。そのクルマ自体は、2020年のマイチェン前の極上ものだった。確か走行距離が200キロくらいだったかなぁ。前から言っているように、俺は中古は好きではない。だけど登録だけをした新古車だったから走行距離も短いし、十分、許容範囲だった。

エンジンはV8とW12の2種類があったけど、こちらはV8をチョイス。後になってW12が造られなくなったことを考えると、W12でも良かったかもなぁと、いまだに思うことはあるけどね(笑)。

スガ さすが、負けるのが嫌いな男(笑)。

トガ うるさいよ(笑)。で、そのクルマは右ハンドルで、ボディカラーはベンテイガ・ブロンズという、ベンテイガにしか設定されていない色だった。

スガ あれって金色じゃないんだ?

トガ よく金色って言われることがあったけど、じつは10円玉と同じブロンズなんだよ。

内装はテラコッタという茶系のフルレザー。シートにはマッサージ機能も付いているし、何もかもがラグジュアリーで最高の仕上がりだった。

もちろん運転は超しやすいし、めっちゃ静かでありながら、めっちゃ速い。搭載されたV8ツインターボはポルシェが開発したものだから、基本はカイエンターボと一緒。だから速いのは当たり前なんだけどね。

加えてこのクルマ、乗り心地も最高という、さすがベントレー、本当に素晴らしい1台だった。

 


内装色はテラコッタという、茶系のフルレザーが戸賀編集長の愛車。シートにはマッサージ機能が装備されているなど、圧倒的にラグジュアリーな仕上がりだった


 

ところが……問題が2つ、いや3つあった!

 

トガ でもなスガ、G550の時にも話したけど、やっぱりどんなに素晴らしいクルマでも、納車されたその日から、魅力は落ちていくものなんだよ(笑)。

スガ またその話か? 確かにその話はよく分かるんだよ。でもなトガ、今回のクルマはベントレーのベンテイガだぞ?

トガ そうなんだけど、問題が2つあった。まず第一に問題だったのが、ベンテイガ・ブロンズという外装色だった。俺は嫌いではなかったんだけど、珍しい色なのでけっこう目立つ。人の視線を集め過ぎてしまうのは、やっぱり、ちとキツかった。

スガ 確かにあのボディカラーは目立つわな。

トガ だよな。そして第二が、内装の仕立てがマリナーではなかったこと。ベントレーには、マリナー部門という究極のスペシャリスト達(職人)の工房があるんだけど、ここが内装のカスタマイズをしてくれるんだよ。

残念ながら俺のベンテイガは、マリナー仕立てではなかった。分かっている人は、「あれ? トガッチはマリナーにしなかったの?」って聞いてくるんだよ。これがけっこう面倒だった(笑)。

スガ そこでも『負けるのが嫌い病』が発病している訳だ。

トガ うるさいな(笑)。じつは、それだけではないんだよ。ベンテイガでクライアントのところにお邪魔すると、まぁまぁ嫌味っぽいことを言われることがあったんだよね。

スガ クライアントが嫌味? なんか凄く怖いんですけど(汗)。

トガ でもなスガ、そんな時に俺が考えたのは、「そりゃ、まだ何の結果も出してない若造が、ベントレーというチョイスは良くないよな、嫌味を言われて当たり前だよな」ってことだった。

さらに言うと、ベントレーはちょっとしたトラブルがあった時、クルマを診て貰うのに東雲まで自分でクルマをもって行かなくちゃならなかったんだよ。

スガ あ、ベントレーなのに自分で持って行くんだ?

トガ そうなんだよ。で、帰りは普通にタクシーで帰る。二日後、修理が終わったら再度タクシーで東雲に向かい、クルマを自分で運転して帰ってくる。

これがベントレーでは普通なのかなぁと思っていたら、どうやら顧客の中には、ベントレーのスタッフがクルマの搬送をしてくれる人もいるという話しなんだよね。

スガ 人によってサービスが変わるの?

トガ そんな話しを聞くと、まだまだ俺が乗れるクルマではなかったんだなぁ、と考えちゃったんだよね。だからといって、今の俺が乗れるとも思ってないけどね(笑)。

スガ トガが謙虚になっている!

トガ スガは秋元 康さんが書いた「さらばメルセデス」って読んだことある?

スガ いや無いなぁ。

トガ 機会があったら読んでみてくれ。この時の俺の気持ちが分かると思うよ(笑)。俺は秋元さんみたいな大成功なんて、今のところまったくしてないけどね。

スガ トガが謙虚になり過ぎていて、ちょっと怖い。

トガ うるさいよ(笑)。さらに妻にも、「パパに見せるのはやめて」って言われたしね。やっぱり、ベントレーは当時の俺には早過ぎた。分不相応って言葉を、あらためて学ばせてもらったクルマだったよ。

 

 

戸賀編集長、その後マイナーチェンジしたベンテイガに乗る

 

トガ 話しは変わるけど、ベントレーを手離した後、しばらくしてマイナーチェンジしたベンテイガを借りて、2~3週間乗っていたんだよ。これが、俺が所有していたベンテイガと、同じV8で同じパワーのはずなのに、めちゃくちゃスポーティだったことに驚いた。

スガ マイチェンで、だいぶ味付けが変わったんだな。

トガ そうなんだよ。スポーティも良かったんだけど、意外と俺は、スポーティではない、マイナーチェンジ前のまったりした乗り心地のベンテイガも好きだった。

あのまったりした乗り心地が無くなってしまったことは、ちょっと残念だったんだよね。

スガ トガの場合、ファーストカーがスポーツカーなんだから、もう1台は乗り心地で選ぶっていう選択は、悪くないと思うけどね。

トガ そうだよな。でも、内装だけで考えると、やっぱりマイナーチェンジ後の方がモダンで断然カッコいいんだよ。マイナーチェンジ前は、一昔前のシンプルなレイアウトだったからね。今見ると、やっぱり古臭さは否めないないんだよ。

スガ でも、まったりとしたシルキーな味付けのV8の乗り味は忘れられないんだろ?

トガ そこが問題なんだよ(笑)。だからマイナーチェンジ後の内装であり、且つマリナー仕立てであること。さらにマイナーチェンジ前のまったりとした乗り心地を兼ね備えているモデルが出たら、けっこう需要があると思うんだよね。

それなら俺のSUVファーストカーなる可能性はかなり高い(笑)。

スガ なるほどね。そんなトガに、ちょっと聞きたいことがある。

トガ 何だよ。

スガ 急に思い出しちゃったんだけど、トガってベンテイガと同じ時期にマクラーレンの570Sも乗っていなかったっけ?

トガ マクラーレン! そういえばベンテイガと同じ時期に所有していたような気がする。じゃあ次回はマクラーレンだな!

スガ っていうか、GT3をいつの間に手放したのかを、まずは聞かせてくれ(笑)。

 

ということで、次回はマクラーレン570Sをお送りいたします。

 


テールランプの点灯部には「B」字型のデザインが採用されている

ベントレー ベンテイガ

全長×全幅×全高: 5140mm×1998mm×1742mm
ホイールベース:2995mm
車重:2395kg
駆動方式:4WD
エンジン:3996cc  V8 DOHC ツインターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:550ps/6000rpm
最大トルク:770Nm/1960-4500rpm
価格:¥19,946,000 ※2018年当時

文・菅原 晃