全長は5mを超えながら、全高は1.4mに満たないという独特なボディー形状を持つM6クーペ
スガ 前回は、トガが惚れ込み自分好みにチューニングまでして仕上げたM4が登場した訳だけど、今回もサクッと振り返りからスタートしたいと思います!
トガ 了解。
スガ では、始めます!
その佇まい、乗り心地、走りの良さと、すべてに惚れ込んでいた6シリーズのカブリオレを手放した戸賀は、今度はBMWの走りの真髄を知ることができるであろう1台を探し始めた。
するとちょうどそのタイミングで、イスタンブール・パーク・サーキットを使用したBMWの海外試乗会が開催されることが判明。その試乗会には、BMWのM4が用意されていたのだが、このクルマの走りが本当に素晴らしさのひと言だった。
戸賀史上最高の1台になることを確信した戸賀は、イスタンブールの地で、購入を即決。運命的な出会いを果たしたM4を手に入れたのであった。みたいな感じだよな。
トガ まぁ、そんな感じかな。
スガ でもさ、その運命的な出会いをしたクルマであり、購入後はチューニングにまで手を出すことになったM4を、なんで手放すことになったの?
トガ いや、手放したく無かったのが本音(笑)。俺はM4のあとにも、マクラーレンを始めいろんなスポーツカーに乗ってきたし、フェラーリやベントレーなどにも乗ってきた。でも、本気の走りを楽しめたクルマは、いまだにM4が頂点なんだよ。そんな最高のクルマを、なぜ俺は手放してしまったのかな?(笑)
スガ 知らんがな(笑)。でも、時間が経った今だからこそ、考えられるような理由はないの?
トガ う~ん、あえて言うなら、チューニングの楽しさを再認識しちゃったのが原因かも。
スガ どういうこと?
トガ もともと俺はクルマをいじるのは嫌いじゃないだろ? ただ大人の男が違法改造するのは、当然いただけない。
でもM4のチューニングをお願いしていた「スタディ」は、BMWの公認チューナー7社の内のひとつであり、唯一アジアに存在していたチューナーだった。だから違法改造とはまったく違った「メーカー公認のチューニング」を施してくれる訳だよ。
スガ なるほど、大人が楽しめるチューニングってことか。
トガ その通り。さらに「スタディ」は、BMWのワークスとして『スーパーGT』にも参戦していたんだよ。その当時参戦していた車両のベースがM4。プロのレースに参戦する技術力を持つチューナーが、公認という大義名分のもとに一般車両も手掛けてくれる。当然、その仕上がりは極上。俺がハマってしまうのも仕方がない(笑)。
スガ 分からんでもない(笑)。
トガ そういうこともあって、M4は本当に気に入っていたんだけど、ある時、スーパーGTに参戦しているマシンがM4からM6に変わるという情報が入ってきた。
スガ 嫌な予感しかない(笑)。
トガ うるさいぞ(笑)。でも、知ってしまったからには、もう止められない。
「だったら俺も乗り換えたいっ!」「また改造を楽しみたい!」って思っちゃったんだよね(笑)。
スガ もう、ただの熱狂的なスタディ・ファンでしかない(笑)。
トガ 言い訳はしない(笑)。その頃は、スタディで知り合った友達もできて、本当に楽しかったんだよ。それが証拠に、仕事で忙しいのに合間を縫って、月に一度は横浜の「スタディ」に入り浸っていたこともあった。
スガ そういえば、「戸賀さん、たまに行方不明になるんですよ」って藤倉くんが言ってた記憶があるよ(笑)。
トガ 藤倉も余計なことを⋯⋯(笑)。
スガ では、あらためて聞こう。今回購入したクルマは?
トガ もうお分かりだと思いますが、BMWのM6クーペです。
トランクルームは、通常の状態で460リッター。後席を倒すことによって、1265リッターまで広げることが可能
今度は6のグランクーペ、ではなく『M6』のクーペです
スガ あれ? そういえば6はグランクーペで懲りたんじゃなかったっけ?
トガ いや、今回はMだから(笑)。でも、またしても白いボディカラーに黒の内装っていう組み合わせなんだよね。前と一緒で、一番納車が早かったクルマが、その組み合わせだったんだよ。
スガ うん、もう言い訳はいらないです(笑)。
トガ はい、すいません(笑)。じゃあ、乗っていた愛車M6の詳細を説明しようか?
スガ お願いします!
トガ 搭載されていたエンジンはV8のMエンジンで、前に乗っていたZ8、レンジ、650のカブリオレに搭載されていたエンジンを改良したパワーアップ版。
そこに『アクラポビッチ』のフルチタンマフラーを入れて、………あ、アクラポビッチで思い出した! V8のアクラポのマフラーって、タコ足から全部変えるから、120万円くらいするんだよ。めっちゃくちゃ高かった記憶がある。
さらにホイールは、M4に付けていたBBSのジュラルミンホイールが気に入っていたから、スペーサーをかましてM6にも流用したんだよね。白のボディにガンメタのホイールだと、足元が引き締まるんだよ。70年代のスポーツカーっぽくて、けっこう気に入ってたんだよなぁ。
で、最後に定番のコンピューターチューニングもしました、という感じだった。
エンジンは、4.4リッターV8ツインターボが搭載され、560psの最高出力と、69.3kgmの最大トルクを発生
スガ 完全にチューニング地獄にハマってます(笑)。ところで熱狂的なスタディ・ファンだった戸賀さん、肝心の走りはどうだったんですか?
トガ うるさいなぁ(笑)。当たり前のことだけど、M4とはまったくキャラクターの違うクルマだったね。大きいクルマはやっぱりエレガントでラグジュアリーだった。
でも車重があるから、遅くなるのは当然だよな? 今でも、なんであのクルマでレースに出ようとしたのかが不思議。あれはスタディではなくて、BMW本社が決めたことだと思うんだけど、真面目な話し、あのクルマは直線しか速く無かったし(笑)。スポーツカーは軽いのが正義だろ? 走りでは、どうしてもM4に勝ることはできなかったよね。
スガ 車格が上のM6でM4超えを狙ったのに、失敗しちゃったって感じ?
トガ 否定はしない。やっぱり、大きいクルマは、スポーツカーとしての走りというよりは、GTとしての魅力が上がるんだよ。それが証拠に、妻はM6が大のお気に入りだった。
ロングホイールベースで乗り心地が良かったのもあるだろうし、アクラポビッチのマフラーを付けているといっても、彼女が乗っているときには、さすがに勇ましい音は出さないから間違いなくM4より静か。
M4で白金の家に帰ってくると、毎日のように「あなたが帰ってくると、音で分かる。もうちょっと静かに帰ってきなよ」と言われていたけど、M6に乗り換えたら、ノーマルモードにして帰るだけで何も言われなくなったからね(笑)。
クルマのキャラクター的にも、M6は間違いなくラグジュアリー志向だったよね。
戸賀編集長にとってのM6とは?
トガ 残念ながら、M6はM4で感じた、「攻めて走る楽しさ」を求めるようなクルマでは無かった。でもラグジュアリーやエレガントさと並行して、スポーティなテイストもプラスしたいっていう人には最高のクルマだったと思う。
でも俺個人で言うなら、M6は、BMWの6カブの良さをあらためて認識させてくれたクルマでもあったんだよ。それぐらい『M』は特別なクルマだった。前にも言ったことがあるけど、カーセンサーに6カブの『M』で、走行3000キロとか5000キロで左ハンドルがあったら、今でもグラっときちゃうことがあるからね (笑)。
そうそう、今思い出したんだけど、M6ってサラリーマン時代最後のクルマなんだよ。その頃は、色んなことに悩み、行き詰っているときだったから、M6と本気で向き合えなかったのかも知れない。
でも、もう一度買うかと聞かれたら、やっぱり要らないけど(笑)。
スガ やっぱりこのシリーズのクーペボディは要らないのね(笑)。
トガ 否定はしない(笑)。でも俺の中でのBMWは、走りをとことん楽しむならM4、ラグジュアリー路線なら6カブの『M』の2台であることは間違いない。どちらも機会があったら、もう一度乗ってみたいと思えるクルマだね。
あ、6カブの『M』は所有してないけど(笑)。
BMW M6 クーペ
全長×全幅×全高:4905mm×1900mm×1375mm文・菅原 晃