トガナリ

Column

25/9/23

vol.23 BMWの本領発揮!? FRの楽しさが追求されたM4の実力に脱帽

M4クーペの0-100km/hの加速は、7段AT車で4.1秒、6段MT車で4.3秒という性能を誇る

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 今回も振り返りからスタートしようと思うんだけど、前回のBMW650i カブリオレは、トガがそのクルマのすべてを褒めるというかなり珍しい展開だったよな。

トガ まぁ、本当に気に入っていた最高のクルマだし、今でもチャンスがあれば所有したいと思うくらいのクルマだからね。

スガ なるほどね。トガが本気で気に入っていたことが、俺にもビシビシと伝わってくる回だったと思うよ。

さて、では振り返りを始めよう! まずトガは、650i カブリオレがグランクーペで気に入らなかった部分を、すべてクリアしているクルマだったという事実に気が付いたんだよな?

そのスタイリングは、ラグジュアリーかつエレガントであり、乗り心地も最高。さらに搭載されているエンジンは、かつて3台乗り継いだレンジローバーにも積まれていた、お気に入りのBMW製V8 4.4リッターの最新バージョン。650はレンジよりボディが軽いから、文句なしに速いであろうことは明白。

実際に650i カブリオレは、0-100で4.5秒を実現するスポーツカーと同等の動力性能を持ちながら、ラグジュアリーという面を併せ持った、唯一無二の存在だった。さらに、乗り心地には一家言持っている奥様も、6カブについてはベタ褒めという状況。

トガ自身も、「人生で乗り継いできたクルマのベスト5に入ることは間違い無い」、とまで断言する最高のクルマだった。

という感じだったよな? その最高のクルマを手離してまで乗るクルマを探すなんて、かなり難しかったと思うんだけど、実際のところどうだったの?

 

トガ 確かに6カブは、妻のお気に入りでもあったから、下手なクルマに手を出す訳にはいかない。

だから、次のクルマがなかなか決められなかったのは間違いないよ。あまりに決められないから、いっそボディカラーやインテリアを変えて、もう一度左ハンドルの6カブに乗り替えることも考えたくらいだった。

でもなスガ、運命的な出会いというものは、クルマの世界にもあるんだよ(笑)。

スガ トガが運命的な出会いって言っても、経験上、あまりいいイメージが湧かないんだけど(笑)。

トガ うるさいよ(笑)。まぁ、運命的な出会いをする前の段階で、「次のクルマは、BMWが本来持っている走りの部分にフォーカスしたモデルも有りかな?」っていう考えも俺の中にはあったんだけどね。

スガ 走り?……さらに嫌な予感しかしない(笑)。

トガ 話しを先に進めるぞ(笑)。

そんな考えもあったから、BMWが走りにこだわって開発したモデルに注目していたら、ちょうどBMWの国際試乗会があることが分かったんだよ。それもサーキットでの試乗会だった。

 


トルコのイスタンブール郊外にあるイスタンブール・パークは、2005年から2011年までF1グランプリが開催された全長5338mのテクニカルサーキット。そのサーキットの試乗会に戸賀編集長は参加


 

スガ トガブロで見た記憶がある。イスタンブール・パーク・サーキットだったよな?

トガ そう、イスタンブールだ。そこにメンクラの編集長として参加したんだよ。サーキットで試乗させる訳だから、試乗するクルマは、かなり走りに注力して開発されたモデルだよな? なんて考えていたら、それが当時デビューしたばかりのM4だった。

スガ まぁ、BMWの試乗会をサーキットで開催するなら、走らせるのはMシリーズだよな。

トガ でも、その頃の俺は、BMWのMと言えば前に話した中井貴一さんのM6しか乗ったことがなかったんだよ。

しかも乗ったのは街中だし、ましてや中井さんの大事なクルマだし、アクセルを踏み込むことなんかできる訳がなかった。

スガ そりゃそうだ。

トガ だからその試乗会が、俺にとっては初めてMで全開走行した日だった。

スガ 全開って(笑)。でもトガにとっては、ほぼ初めてのMによる走行だった訳だ。で、その走りはどうだったの?

トガ ただただ感動だった。BMWのエンジンサウンドは『半端ねぇ』って感じでマジで最高だったし、肝心の走りもFRの楽しさを追求しまくっていることがすぐに分かる完成度。ポルシェより断然ワクワクさせてくれる素晴らしい仕上がりだった。

まさに、これぞBMWの本領発揮というクルマ。そのクルマを箱根ではなく、イスタンブール・パーク・サーキットを全開で走ることができたんだから、もう感動するしかなかった(笑)。

『このクルマには絶対乗らなくちゃいけない』『これは間違いなく運命的な出会いだ』と思ってしまうのも仕方がない。

スガ 嫌な予感が的中(笑)。

トガ でも一つ残念だったことがあったんだよ。日本で買えるM4の左ハンドルは、マニュアルだけだった。DCTを選べるのは、右ハンドルだけだったんだよ。

俺は大排気量、大パワーのクルマをマニュアルで操作するのは無理だと考えていたから、あの時は迷うことなく、右ハンドルの2ペダルを選んだ。

 


M4のインテリアは、スポーティであるだけでなく、ラグジュアリー感をも内包している


 

スガ あ、もう買っちゃったんだ(笑)。

トガ でも実際にM4が納車されて走り込んでみると、3リッターツインターボまでなら、戸賀の力量でもアクセルを踏めることが分かった。

まぁ、M4だから行けたのかも知れないけど(笑)。だから、3リッターなら今でも躊躇なくマニュアルを選ぶ。カレラも3リッターのターボだったら、ギリいけると思う。

スガ 今度は、いつかポルシェを買うフラグを立てました(笑)。

トガ うるさい(笑)。もう一つ、大事な事を忘れてた。この時は国際試乗会に参加したおかげで、早めにオーダーを入れることができたんだよ。

だからM4は、大好きなガンメタにレンガ色みたいなカラーの内装という、俺のお気に入り仕様にできた。

 


戸賀編集長が実際に所有していたBMW M4クーペ


 

トガ 実際に納車されてみると、お気に入り仕様というだけじゃなく、街中、サーキットを問わず、本当に最高の走りができるクルマだということが分かった。

スイッチを操作するだけでモードが変えられて、それによって乗り心地、サウンド、すべてが変わる。

直6の凄味を久しぶりに感じることが出来る、最高のおもちゃを手に入れることができたんだよ。

 

 

20数年ぶりに、クルマをいじりまくったのがM4だった

 

トガ それが原因だった訳でもないんだけど、悪い虫が動き出して、学生時代以来、久しぶりにいじりまくっちゃったんだよね(笑)。

スガ 予感の上をいく展開だな (笑)。

トガ でもなスガ、当たり前だけど違法改造をする訳じゃないぞ。BMWの公認チューナー7社の中で、唯一アジアに存在する「スタディ」で、大人のチューニングを始めてもらったんだよ。

まずは、コンピューターチューニングで走りを変えることからスタートして、次にスロベニアのエギゾーストメーカー『アクラポビッチ』のフルチタンマフラーを装着。さらにBBSのジュラルミンホイールも入れて、…………いや、あまり詳しく言うのは止めておこう(笑)。とにかくいじりまくったし、久しぶりハマった。

今でもあのマフラーの、アクラポビッチのサウンド、とくにスポーツモードにした時のあの音は今でも忘れられないんだよなぁ。

ついつい走り過ぎちゃって、確か1年で1万5000キロぐらい走ったからね(笑)。

スガ まさにハマりまくりだな(笑)。

 


学生時代以来ハマりまくったチューニング。もちろんすべて、「スタディ」の手によるものだった


 

トガ 間違いない(笑)。こんなに一緒に居るか? っていうくらいM4と一緒に居た記憶があるし、自分の手でメチャクチャ洗車もしていたしね (笑)。

スガ トガって、昔から洗車が好きだよな(笑)。世界文化社にいた時も夜中に作業していると、突然、「スガ、洗車に行こう」って言い出すから、ふたりで夜中に洗車に行ったよな(笑)。
あの時は、トガがカレラ4で、俺がCR-Xだった。

トガ そうそう、洗車が終わると会社に戻って仕事を再開してたもんな(笑)。この時もそんな感じで、どんなに忙しくても土日のどこかに必ず洗車場に行く時間をねじ込んでた(笑)。

スガ そういえば、当時トガのアシスタントをしていた藤倉くんが言っていたよ。「あの時の忙しさを考えると、洗車の時間を捻出できることが信じられないっす」って(笑)。

トガ たまに他の予定に食い込んじゃったりしていたけどね(笑)。それも、もうとっくに時効だけどね(笑)。

スガ いや、勝手に時効にするなよ(笑)。

トガ でもM4は走りの面で言ったら、本当に最高の1台だったよ。
俺が首都高にタイヤカスを一番飛ばしたクルマかも知れない(笑)。こんなことを言うと怒られちゃうかも知れないけど、俺があれだけ首都高にタイヤカスを飛ばしたクルマはほかに無いと思う(笑)。

スガ 走りのクルマを手に入れたら、そうなることは仕方ない部分もあるというのは分からんでもない(笑)。

トガ そうだろ?(笑) さらにM4には、色んなデバイスが付きまくっているから、ある域を超えなければスピンはしないんだよ。ポルシェより走りを楽しめた記憶があるのは、やっぱりFRだからというのもあったと思う。
911はやっぱり怖さがあるんだよ。RRはリアが出やすいからね。だからM4は、楽しく、ある意味で一番安心してアクセルを踏み込めるスポーツカーだった。

スガ そりゃ、首都高にタイヤカスを飛ばしまくる訳だ(笑)。

トガ さらに言うと、M4ってBMWらしさを色濃く出しながら、シンプルなスタイリングでスポーツカーとして割り切っているのが良いんだよね。
俺はリアシートが好きではないから、かなり走りに寄った仕上げにしていたけど、もっと4ドアのボディを有効に使った、「羊の皮をかぶった狼」仕様も有りだよね。
サーキットを走っていても、ボディが緩いと感じたことは一度もない。今考えても最高のおもちゃだった。この間の650カブリオレの時も言ったけど、このM4も「人生で乗り継いできたクルマのベスト5」を出せって言われたら、間違いなく出てくる1台だね。いや、ベスト10にしておこうかな。まだ増えてくる可能性が高い気がするから(笑)。
あ、今のうちに言っておくと、次のクルマもBMWです(笑)。

スガ この頃のトガ、どっぷりBMWにハマっていたことが手に取るように分かります。

 

さて、気になる次のBMWとはいかに……?

BMW M4クーペ

 全長×全幅×全高:4685mm×1870mm×1385mm
 ホイールベース:2810mm
 駆動方式:FR
 車重:1640kg
 最高出力:431ps(317kW)/7300rpm
 最大トルク:56.1kgm(550Nm)/1850-5500rpm
 エンジン:直6 DOHC 24バルブ ツインターボ
 総排気量:2979cc
 トランスミッション:7段AT
 価格:¥11,260,000(税込み)※2014年当時

文・菅原 晃