トガナリ

Column

25/9/11

vol.22 BMWが持つエレガントの真髄は、6のカブリオレにこそ宿る

流れるような美しいボディラインと、水平基調のショルダーラインが、エレガントで伸びやかなルックスを際立たせている

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 今回もいつものように前回の振り返りからスタートするぞ。

前回の愛車はBMWの640iのグランクーペだったワケだけど、このクルマを購入したのはメルセデスのCLSをかなり気に入っていたことに関係しているんだよな。

トガ そう、「メルセデスと同じドイツ車でありながら、ラテンテイストを感じる艶っぽいブランドBMW。そのBMWが出してきた『CLSの対抗馬』であるグランクーペの出来が気になった」っていうのが、購入のきっかけのひとつになったのは間違いない。

実際に所有していたCLSとの乗り比べもしてみたかったしね。

スガ なるほど。それに加えて、若い頃にトガがお世話になっていた方々が、こぞって乗っていた当時の憧れがBMWの5シリーズだったんだよな。そこで「5シリーズに乗るならば、その車格を持つグランクーペを購入するのも有りだと判断」したトガは購入を決めたワケだ。

さらにトガは、BMWが造ったモデルならばセクシー&モテるクルマであることは間違いないと確信。しかし実際のグランクーペは「本来のBMWが持つ、質実剛健、エレガント、ラテンのテイスト、セクシーさを感じることができない、なんとも中途半端なクルマであることが判明」。

期待値が高かったが故に、ちょっとがっかりしてしまったトガは、早々にBMWグランクーペを手離すことを決意。新たな愛車を探すのだった。

って感じの流れだったよな?

トガ 誤解が無いように言っておくけど、グランクーペも、クルマとしては本当に良くできたクルマだったんだよ。購入したのは640だったから、エンジンは直6のシルキー6だったけど、十分に速い上に、乗り心地に関しても抜群だった。

でも、本当のことを言っちゃうと、その時に気になっていたのは650なんだよ。

こっちにはV8が積まれていたんだけど、あのエンジンは、レンジローバーを3台乗り継いだことで、計3機も乗ったお気に入りのエンジンだった。そのエンジンの最新版が650に積まれているんだから、気になるのは仕方がない(笑)。

さらに650はレンジよりボディが軽いから、文句なしに速いであろうことは明白。もう薄々、次のクルマが分かっているような気もするから、先に答えを言っちゃうと、グランクーペの次に選んだのはBMWの650。それもカブリオレなんだよね(笑)。

 

スガ 薄々ではなく、そんな臭いはプンプンしていました(笑)。前回の愛車遍歴決定版! で、BMWからBMWに乗り替えたとも言っていたしね。

 


650iカブリオレの後席は、あくまでも「+2」という位置づけ。前2席に、いかに素晴らしい環境を提供するかを追求したと言っても過言ではない


 

トガ そうだった(笑)。そこで今回の愛車となるBMW650i カブリオレなんだけど、結論から言ってしまうと、グランクーペで気に入らなかった部分を、すべてクリアしているクルマだったんだよ。

まず走りで言うと、0-100が4.5秒。俺はその後の愛車で、0-100が2秒台、3秒台のクルマも所有する訳だけど、あれだけラグジュアリーで、乗り心地が良くて、エレガントなクルマなのに、0-100が4秒台のクルマは、今でもまず見当たらない。まさに唯一無二の存在と言っても過言ではないと思うよ。

スガ まぁ、カブリオレという特別感もあるから、まさに唯一無二だよね。そういえばトガって、昔から屋根が開くクルマが好きだよな。スパイダーとか、MGのRV8、スマートのカブリオなんかにも乗っていたし。ちなみにトガの考えるカブリオレの魅力って何なの?

 

トガ そりゃなんと言っても、彼女と二人で楽しめるクルマってこと。カブリオレは、チャイルドシートを取り付けて子供を乗せたり、大人4人のフル乗車で、ぎゅうぎゅうになりながら乗るようなクルマではない。二人が中心になって、様々なシチュエーションを楽しむためのクルマがカブリオレだと思うんだよ。

スガ 二人で楽しむだけなら、クーペじゃダメなの?

トガ う~ん、夢のないことを言っちゃっていい? クーペってさ、所詮4ドアベースのクルマを、見た目だけエレガントにしたクルマじゃん(笑)。

さらに極論を言っちゃうと、今のクーペって、わざわざ作らなくても良いクルマだと思うんだよ。一部の人のためだけに作っているようなクルマ。それをグランクーペには感じちゃったんだよ。

でもカブリオレは、そんなせせこましい考えとはまったく無縁の存在なんだよ。その孤高の存在を手に入れたくなってしまって、思わず6のカブリオレに手を出してしまったというワケ(笑)。

スガ ちなみに、ボディカラーは何を選んだの?

トガ じつはそこだけが残念だったんだけど、白のボディカラーに黒の内装という、かなり無難な組み合わせだったんだよ。さらに言ってしまうと、悲しいことに右ハンドルだった。

グランクーペが思いのほか早く売れちゃったこともあって、すぐに納車できるクルマがそれしか無かったんだよね。

本当は左ハンドルでベージュの内装という組み合わせが欲しかったんだけど、そこは我慢するしかなかった。

でもなスガ、本当に6カブは気に入っていたんだよ。その証拠に、納車された当時は、中町通りにあったブルックスの前で写真を撮ったり、ありとあらゆるブランドのショップ前で、写真を撮りまくっていた記憶があるくらい(笑)。

 


オフィシャルブログ『トガブロ。』より引用。本当に写真撮りまくっています(笑)


 

6のカブリオレは、雨のドライブも最高だった

 

スガ そんなにお気に入りの6カブなら、トガならではのお気に入りポイントとか、こだわりポイントがあったんじゃない?

 

トガ もちろん(笑)。6カブは雨の日に乗っても最高のクルマだった。6カブの幌は、雨音をわずかに残しているんだよね。まぁ、技術的に雨音を完全に消すことができなかったのかも知れないけど、信号待ちなどで停車中の車内にわずかに残る雨の音が、なんとも心地よいBGMに聞こえるんだよ。

反対に、ちょっと走りたい気分の時は、リアのウインドウを3~5センチ開けて走るだけで、雨の日でも水を巻き込まずに、エンジン音を楽しめる。

普段走っているときは本当に静かなBMWのエンジンが、ちょっと回すだけで心地よく吠えてくれる。本当に何をやっても絵になるクルマだったよね。

 


BMW伝統のL字型リアコンビランプに、LEDライトバーが採用されたリアビュ


 

スガ 久しぶりに聞く、トガの大絶賛だな (笑)。ちなみに奥さまの評価はどうだったの?

 

トガ 乗り心地にうるさい妻も、6カブに関しては大絶賛だった。

雰囲気、乗り心地、実用性もバッチリ。さらに当時は一緒にスーパーにも買い物に行っていたし、箱根に行くぞ~とか、ゴルフに行くぞ~みたいな、GT(グランツーリスモ)として使うような場面でもまったく文句は出なかった。

ワインディングを走ってみても、カブリオレということを忘れるくらい剛性感があったから、ボディが緩いなんて思ったことすらなかったしね。

今だったら8のカブリオレもあるじゃないかって思われるかも知れないけど、俺は昭和の人間だから、先代、先々代の6だけが持っていたエレガントさが忘れられない。

やっぱり、BMWの1番って、俺の中では8ではなく6。さらに、一番エレガントってことになれば6カブしか考えられない。本当に気に入っていたから、今でもカーセンサーで探しちゃうことがあるくらい。

俺が乗っていた6カブのMで、走行3000キロとか5000キロとかで左ハンドルがあったら、思わず「買っちゃう?」みたいにグラっときちゃったりすることもある。あ、もちろん妻には内緒だけど(笑)。

6カブは、走りもスタイルも、乗り心地もすべて最高のクルマだった。もしこの先で、「人生で乗り継いできたクルマのベスト5」を出せって言われたら、間違いなく出てくる1台だよね。

 

スガ でも、その最高だった6カブも手離して、次の1台に乗り替えることになるんだよな? 6カブを手離してまで手に入れた次の1台。非常に気になるところだけど、こちらは次回で紹介ということにしよう!

 

トガ 了解です。

 


BMW 650iカブリオレ

 全長×全幅×全高: 4895mm×1895mm×1365mm
 ホイールベース:2855mm
 駆動方式:FR
 車両重量:2050kg
 最高出力:407 ps/ 5500 rpm
 最大トルク: 61.2 Kg・m /1750~4500rpm
 エンジン:V8 DOHC32バルブ ツインターボ
 総排気量:4394 cc
 価格:¥13,300,000(税込)※2012年当時

文・菅原 晃