640iボグランクーペのボディサイズは、全長×全幅×全高=5010×1895×1390mm。2ドアクーペと比べて、全長で115mm長く、全高では20mm高くなっている
トガ 今回の愛車遍歴は、まず車種から発表していこうか?
スガ お、新しい展開だな(笑)。でも前回の振り返りは軽くさせてくれ。
前回は、お気に入りであるプジョーのRCZをキープしながら、使い勝手の良いセカンドカーの購入を決意したトガ。
セカンドカーとしての条件は、まず4人が余裕で乗車できること(一緒にゴルフ場などに行くことができる)。
さらに、ある意味コンサバで、乗っていく場所を選ばないことだった(RCZはフォーマルな場には乗っていきにくい)。
この条件にぴったりハマったのがBMWの3シリーズ。徳大寺先生がよく言っていた「3シリーズこそがBMW」という言葉にも後押しされ、セダンの328iを購入。
しかし、ここで不測の事態が!
なぜか奥さまが、週6日は乗っていってしまうほど328iを気に入ってしまい、ほとんどトガ自身が乗れない事態におちいってしまう。
そこで328iを手放し、奥さま用にBMW 320iXの購入を提案。提案は受け入れられ、無事に納車されたところで、新たな愛車探しが始まったのであった!
みたいな感じだったよな?
トガ まぁ、そんな感じかな。
スガ で、前回の最後の方で「次のクルマはセダンではありません」と予告をしているよな?
ということで、発表してもらいましょう。次にトガが選んだ1台とは何?
トガ 今回の愛車は、3台目のBMWとなる640i グランクーペ。
今回は、俺がグランクーペに行きつくまでの過程から説明しようと思うんだけど良いかな?
スガ おっ、今回はやる気じゃん!
トガ 俺はいつも真面目にやっています(笑)。じつはグランクーペに行き着くまでに、過去に乗っていたメルセデスのCLSが関係してくるんだよ。
スガ え、何でCLSが関係してくるの?
トガ 愛車遍歴決定版のvol.9でも話しているんだけど、CLSって当時のクルマ関係者や評論家から、「メルセデスのカリーナED」とか、「リアシートに座る時、ピラーに頭をぶつける」とか評価は散々だったけど、じつは世界的に大当たりしたクルマだった。
クルマ自体はちゃんとしたEクラスだし、実用性は若干削られているかも知れないけど、あのクーペのような流麗で美しいフォルムは本当に素晴らしかった。
やっぱりクルマはプロポーションが大事だということに、ようやくメルセデスも気が付いて、CLSを出してきたんだろうね。
スガ 良い意味で、当時の質実剛健なメルセデスらしくない、本当に美しい4ドア・ハードトップだったよな。
トガ その対抗馬としてBMWが出してきたのが、このグランクーペだった訳だ。
ならばライバルであるCLSに乗っていた俺が、グランクーペに乗らない理由がない(笑)。
さらに言えば、グランクーペのベースは5シリーズだろ? 俺はBMWの5シリーズには何故か縁がなくて、それまで乗ってこなかったんだよ。
いつかは乗りたいって気持ちもあったし、俺が若い頃にお世話になった人たちが、こぞって乗っていたクルマでもあったから、若い頃の俺にとっては、ある意味、憧れのクルマだったんだよね。
スガ なるほど。BMWが造った、「CLSの対抗馬」にして、トガが若い頃に憧れていた5シリーズの要素を持つクルマが、グランクーペだったという訳ね?
トガ まさにそんな感じ。乱暴に言ってしまえば、5シリーズのボディ形状をワイド&ローにしたのがグランクーペだろ?
憧れのクルマの要素を持ち合わせていることに加えて、ワイド&ローのボディ形状を持っている1台が登場したとなれば、飛びついてしまうのも無理はないと思うんだよね(笑)。
4枚ドアを持ちながら、クーペのような流麗なスタイリングを実現したグランクーペ
グランクーペはモテるクルマだったのか?
トガ で、購入したのが、シルバーに近い薄~い水色のボディカラーに黒い内装の640だったんだよ。
スガ あ〜、あのカラーを買ったのか!
ちなみに実際に所有してみた640は、どんなクルマだったの?
トガ 俺としてはメルセデスのCLSと同様に、間違いなくモテるクルマだと思っていた。BMWが造っていたしね。
ところが、これが思った以上にモテなかったんだよ(笑)。例えば、CLSに乗っていた時は、男からも、「これが話題のCLSですか!」なんて聞かれるくらい人気があったし、実際、女の子にも人気があった。
でもグランクーペは、クルマとしては凄く良いクルマなのに、何故かまったくモテなかったんだよ(笑)。
スガ BMWなのに?
トガ そう、BMWなのにまったく(笑)。俺が思うに、BMWってドイツ車でありながら、少なくともメルセデスよりはラテンが入っていて色気があって、艶っぽいブランドなんだよ。
そういうブランドなのに、CLSの対抗馬として、後出しでグランクーペを出してきたことが失敗だったんじゃないかな?
出すなら、CLSを圧倒するくらいの出来なら売れたと思うんだけど、内装なんてほぼCLSと変わりがなかった。リアシートもCLSよりただ狭いだけで、デザイン的にも何も攻めているところがない。割り切って4座にするとか、方法はいろいろあったはずなのに、すべてにおいて中途半端な感じがしたんだよね。
インパネは基本的に「6シリーズ クーペ/カブリオレ」と共通。リアシートには、フロントから続くセンターコンソールがあるが、必要に応じて3人乗車も可能
スガ CLSって、突然変異って感じで世に出したクルマだったから、メルセデスもいろいろ試していたもんな。
あのメルセデスが頑張ったのに、なぜかBMWは何も攻めてこなかったって感じ?
トガ そう、メルセデスが思い切って冒険したのに、BMWはBMWらしい冒険をしてこなかったって感じかな。BMWは、昔から色気があって、艶っぽいクルマを造れるブランドなんだから、時代を先取りするCLSみたいなクルマも造れたはずなんだよ。
だからグランクーペみたいなクルマは、メルセデスではなく、まずBMWに出して欲しかった。
スガ 確かにな。それは俺も思うよ。
BMWの本質とは何だ?
トガ 俺は、ドイツ車でありながら、ラテンを感じることができるだけじゃなく、流麗で美しいフォルムを持ちながら、最高に気持ちいいエンジンを載せたクルマ造りができるのは、BMWだけだと思っているんだよ。
「640iグランクーペ」に搭載されるのは、320psを発生する3リッター直6ターボエンジン。BMWの誇るシルキー6だ
トガ 昔、中井貴一さんが乗っていた二代目の6を運転させてもらったことがあるんだけど、めちゃくちゃ速くて、めちゃくちゃ美しかった。それが俺のBMWのイメージの原点みたいなものなんだけど、残念ながら、そのイメージをグランクーペからは感じることができなかった。
スガ トガとしては、BMWにもっと攻めたクルマ造りを求めていたってこと?
トガ う~ん、攻めたクルマ造りもそうなんだけど、もっとBMWが持つ、本来のBMWらしさを感じることができるグランクーペが見たかったって感じかな。
だから、3とか5の奇数のシリーズは質実剛健、4とか6の偶数はエレガント、みたいな数字での分け方をしなくてもいいと思うんだよ。
質実剛健もエレガントさも、ラテンののりもセクシーさも、すべて内包しているのがBMWの本質であり、俺が思うBMWのカッコ良さなんだよね。
スガ なるほど。質実剛健、エレガント、ラテンののり、セクシーさを併せ持つのがBMWの魅力というのは俺も賛成。
同じような考えの同年代オジサンは、けっこう多いと思うよ。ところでトガくん、このグランクーペ、一体どのくらいの期間所有していたのかな?
トガ また所有期間の話しか(笑)。
グランクーペは、友人がどうしても売って欲しいと言ってきたので、6か月だった記憶がある。俺は、欲しいと言ってくれた人が出てきた時が売り時だと思っているので、そりゃもう、躊躇なく手離しました(笑)。
今回も先に発表しちゃうけど、この次に購入するのもBMWなんだよ。もともと俺はドイツ車が大好きだし、グランクーペも走りや色気みたいな部分でいえば、とても良いクルマだった。
次の1台を考えた時、それをさらに超える色気、エレガントさを持っているクルマが、当時のBMWに存在していることに気が付いたんだよ。
スガ ということで、次回はそのクルマでいきたいと思います!
BMW 640
全長×全幅×全高:5010mm×1895mm×1390mm文・菅原 晃