
戸賀編集長の撮影(当時)。996型ではティアドロップ型と言われたヘッドライトも、997型では993型までの歴代モデルを彷彿とさせる伝統の丸型ヘッドライトに戻っている
スガ 前回の愛車遍歴決定版! は、トガの記憶が突然蘇ってきたということもあり、イレギュラーではあるものの、過去に戻ってBMW Z8のことについて語ってもらったワケだけど、今回は通常バージョンに戻って、スマート カブリオの次の愛車について話してもらいたいと思います。
ということで、まずはスマート カブリオの振り返りから行くと、「当時の彼女、というか今の奥様に、デビアスの「プロミス」というワンオフモデルの指輪を贈ってプロポーズするために、心底惚れていたレンジローバーを売却」。
そのために金がなくなったトガは、「価格は安くてもクルマ好きの所有欲を満たし、かつ、見栄が張れてしまうクルマを探すことになったところ、駒沢公園近くで、偶然スマート カブリオを見かけ、翌日には速攻で購入」。
気にいってはいたものの、ボディサイズがあまりに小さく、彼女とゴルフの練習にも行けないような生活に嫌気がさし、1年も乗らずに売却」。
果たして、次の1台とは? っていう感じだったよね?
トガ まぁ、概ね合っているよ。
スガ でもさ、1年も経ってないワケだろ? 新しいクルマを買うための資金も、まだまだ貯められてないと思うんだよ。またスマートのカブリオみたいな、安いのに威張りが効くようなクルマを探すことにしたの?
トガ いや、ちょっとカッコ悪いから今まであまり言ってこなかったんだけど、じつは当時の彼女というか、今の妻にお金を借りてクルマを買うことにしたんだよ。
スガ トガにしては珍しい展開だ (笑)。
トガ うるさいよ(笑)。というか、彼女に指輪を買うためにレンジローバーを売ったことが、彼女にバレちゃったんだよ。
俺がレンジを本気で気に入っていたことは、当然、彼女も知っていた。それを売って指輪を買った俺の行為が、嬉しかった反面、ちょっと申し訳なく思ってしまったんだろうなぁ。
彼女から、「トガッチには、本当に好きなクルマに乗って欲しい。お金は貸してあげるから」という提案があったことで、スマートのカブリオを手離して新しいクルマを購入することになったというワケなんだよ。
スガ 何とな~く、『本当に好きなクルマ』と聞いた時点で、クルマの目星がついてしまうのは気のせいか? それって、ドイツのクルマだろ?
トガ お、スガにしては冴えているね。そう、その時点で頭に浮かんだクルマは、ポルシェ911(997)だった(笑)。



今となっては、ナローと言っても問題のないサイズ感も997の特徴。また前期型のテールランプはごく普通の電球なので(後期型はLED)、やや薄暗く光るクラシカルな雰囲気も人気だという
購入したのは、ポルシェ911だった
スガ 予想通りだ(笑)。
トガ そこでまず考えたのが、どのグレードにするか? ということ。当時の俺は、何となく見栄を張ってしまっていたような部分があって、生意気にも、「911に乗るなら素のカレラは無いかなぁ」、なんて思っていた。
だけど彼女から資金を借りていることもあって、さすがにターボは買えない。当たり前だけど、そこまでの予算も無かった。
スガ そこはちゃんと自重できたワケだ(笑)。
トガ うるさい(笑)。「素のカレラのバランスが一番良いと言う人もいるけど、当時の俺は、911に乗るならターボは無理でも、4SとかSに乗るべきじゃないのか? と考えていたんだよね。今考えてみると、まだまだ成熟できていないお子様だったんだよなぁ、恥ずかしいことに(笑)。
そこで996の後期型カレラ、ボクスターSに乗っていた頃にお世話になったポルシェジャパンに相談してみたんだよ。カレラ4Sか、カレラSの左ハンドルのマニュアルの出物は無いかって。


じつは、ダッシュボードの形状、ドアアームレストなども993以前のデザインに先祖帰りしている。歴代のポルシェをよく知る戸賀編集長なら、質感の上がった内装に喜びを感じたことは容易に予想できる
スガ でもその当時って、ポルシェオーナーでもマニュアルに乗る人が少なくなってきた頃じゃなかったけ?
トガ スガのくせに良く調べてる(笑)。当時のクルマ好きの仲間に「カレラSのマニュアルに乗っている」というと、「それはかなりレアだね」と言われるくらい、マニュアルに乗る人が少なくなっていた頃だった。
それでも当時は、まだカレラ、カレラSのマニュアルが、極まれに出て来ることがあったんだよ。
そうしたら、ちょっと退屈な組み合わせではあるんだけど、ソリッドな白のボディカラーで、黒の内装、左ハンドルのマニュアルというカレラSが、ポルシェセンターの浜田山で見つかった。
俺としては、カレラ4Sが第一希望だったんだけど、残念ながら4Sは出てこなかったんだよ。
それでカレラSを購入することになった。
カレラSは、メチャクチャ愉しめるクルマだった
スガ なるほどね。997の前期型のカレラSってどんな感じだったの?
トガ RRでありながら、ハイパワーをメチャクチャ愉しめたクルマだった。じつは今後の「愛車遍歴決定版!」に997の後期型のGT3出て来ることになるんだけど、そのGT3とは違って、クラッチがまったく重くないんだよ。本当に、街乗りから峠をガンガン走ることもできちゃうようなクルマだった。
スガ 確かに、GT3のクラッチの重さはヤバいって聞いたことがあ。
トガ いや、本当にヤバいから(笑)。それはGT3の回でしっかり話すとして、今回はカレラSの話しをしよう。ハイパワーでありながら、クラッチがまったく重くないこともあって、本当に驚くくらい運転するのが楽なクルマだった。そして、運転するのが楽しくて仕方がないクルマでもあった。
だから、妻といろんな所に行った思い出があるし、距離もかなり走った記憶がある。もちろん、助手席にキャディバッグを載せて、いろんなゴルフ場にも行った (笑)。
スガ お、キャディバッグ! 今回は積めたんだ。また助手席だけど(笑)。
トガ そう、また助手席なんだよ(笑)。
キャディバッグを積むだけなら、リアシートを倒せば2本は積める。でも彼女と練習や2サムゴルフに行くようになると、キャディバッグでインテリアに傷を付けてしまうことが分かったんだよ。
だから、911のリアにはキャディバッグを置かずに、助手席に置くしかないことにあらためて気付かせてくれたのもカレラSだった。
当時はメンクラの編集長だったんだけど、売り上げが伸びてくると共に、編集部のゴルフ熱も上がってきた頃だった。そうなると、部下たちとゴルフに行こうという話しも出てくるだろ?
でもカレラSには、足の間にキャディバッグを積むというかなり無理な体勢をとってもらっても、ひとりしか乗せることができないんだよ(笑)。
残りの連中は電車でゴルフ場に向かっていたんだけど、それを続けることはさすがに申し訳なかった。
そんなこともあって、大好きだったカレラSを泣く泣く手離すことになるんだよね。
やっぱり問題はゴルフだった
スガ また原因はゴルフなのかい(笑)。
トガ そこは言い訳のしようもありません。
でもカレラSは、本当に思い出深い1台であることは間違いないよ。何しろ、クルマを買うことになったきっかけが、彼女がお金を貸してくれるという特別なことだったし、そのクルマに乗って、彼女と一緒にいろんな所に出掛けた思い出もある。
スガ 奥さんとの思い出が多い特別な1台なんだね。
トガ そうだね。さらに、カレラSに乗ったことが、素のカレラの良さに気付けたきっかけになったのかも知れない。カレラSは、パワーが少し大きくなっていて、足回りがちょっと強くなっているのがカレラとの違いなんだけど、やっぱり素のカレラで十分だったかもと、今の俺なら考えられるようになっているからね(笑)。
ちなみに、俺が今、現行の911を選ぶなら、911Tのマニュアルも良いかも、なんて思っている。あれもベースはカレラだしな。
スガ トガも大人になったもんだ(笑)。
そういえば、ずっと気になっていることがあるんだけど、聞いても良い?
トガ なんだよ?
スガ あのさ、奥さんにお金はちゃんと返しの?
トガ 当たり前だろ、とっくに返し終わっています!

ボディサイズはほぼ一緒のカレラとカレラS。比べてみれば一目瞭然
ポルシェ911 カレラS(997前期型)
全長×全幅×全高;4425×1810×1300mm文・菅原 晃