トガナリ

Column

25/6/29

vol.14 一度はポルシェの“オープン”に乗っておこう! そこで、ボクスターSを選びました!

ボディ剛性とともに、ハンドリングの剛性も高く、非常に硬派な印象だったボクスターS。「スポーツカー好きなら、一度は乗ってみるのもアリかも」と戸賀編集長

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

繋ぎのクルマの後は、当然のスポーツカー⁉

 

スガ 今回も振り返りからスタートしたいと思ったんだけど、前回のクルマは、最初から“繋ぎのクルマ”と言っちゃっているフィアット・プントだったよな? さらにそのクルマが、あの徳大寺有恒大先生から譲ってもらったという驚きの1台だっただろ?

ハッキリ言って、あまりツッコミどころがないんだよね。ツッコメるとしたら、トガが徳大寺さんに「繋ぎのクルマを譲って欲しい」と、厚顔無恥なお願いをしちゃったところくらい? あのさ、徳大寺さんを登場させるのって、ズルいと思うのよ。

 

トガ おっ、スガにしては弱気じゃん (笑)。でもな、徳大寺さんに譲ってもらったプントだったけど、どうしても性に合わない部分はあったんだよ。

 

スガ そんな部分があったの?

 

トガ あった。それがCVT。

CVTは50ccのスクーターでは何度も乗っていた。その時は気が付かなかったんだけど、プントのCVTは、アクセルを踏み込むと機械的な騒音が高まってくるのに、そのわりには加速していないという感じだなんだよ。それがどうしても気に入らなかった。

『小さな排気量はフルに使う』、それが小型車の魅力ということを徳大寺さんは教えてくれたけど、CVTを採用していたプントは、そんなキャラでもかったんだよ。

 

スガ なるほど。そんな裏話があったのか。

 

トガ でも、そのプントも世界文化社の後輩が、どうしても「売ってくれ」っていうから手放した。売って欲しいと言ってくれる人が居るときが売り時。それが俺のクルマ売買時の信条だから、徳大寺さんから譲っていただいた大事なプントを、残念ながら手放すことにしたんだよ。

 

スガ 大事なプントというあたりがウソ臭いけど、とりあえず話を進めよう(笑)。

で、その大事なプントを手放すことになったワケだけど、次にトガが選んだ1台はどんなクルマだったの?

 

トガ 次のクルマ選びも徳大寺さんからの影響があるんだよ。

クルマの話しをしている時、徳大寺さんが「クルマはロードスターから始まった」と話すことが度々あった。それが頭に残っていたからなのか、『クルマ好きを自称するなら一度はロードスター、オープンカーには乗っておかなければ』と少し前から考えていたんだろうね。

ということで、その時はロードスターを探すことにしたワケだ。

 

スガ でもオープンカーなら、MG RV8に乗っていたことがあるじゃん。

 

トガ いや、あのクルマは実用性がほとんど無いだけじゃなく、オープンカーのくせにまったくモテなかった。だから、あんまり良い思い出が無い(笑)。言ってしまえば、俺のクルマ人生の黒歴史の1台といっても過言ではない。それを無かったことにしてくれるような、素晴らしい1台をあらためて探そうと考えたんだよ。

 

スガ 黒歴史(笑)。で、そんな1台は見つかったのかよ?

 

トガ 意外とサクッと見つかったんだよ。発表しちゃうけど、それがポルシェのボクスターだった。

 

スガ ボクスター? 911ではなくボクスターなの?

 

トガ その時は2座のオープンを探していたんだよ。2座の魅力はユーノスロードスターで分かっていたんだけど、それがそのままポルシェになったのがボクスターだった。

 

 

ボクスターってどんなクルマ?

 

スガ で、ボクスターはどんなクルマだったの?


「ボクスターはオープンボディ専用設計であるが故に、屋根を開けても閉じてもカッコいい」と戸賀編集長


 

トガ スガがどこまでボクスターのことを知っているか分からないから、軽く説明してやるよ。初代のボクスターは1996年にデビューしたんだけど、2.5リットルの水平対向6気筒エンジンで、トルクが足りなかったと言われている。

 

スガ それは俺も聞いたことがある。

 

トガ そんな声を聞いたからなのか、ポルシェは2000年にエンジンの排気量を2.7リットルに拡大してトルクも向上させた。さらに2004年には、フルモデルチェンジした2代目を登場させて、ノーマルの「ボクスター」に加えて、280psを発揮する3.2リットルのエンジンを積んだ「ボクスターS」をラインナップ。

ちなみにこの2代目から、フロントライトがあの涙目型から、フォグランプ一体化のライトに変わって、外観がスタイリッシュになるんだよ。

 

スガ あ~、涙目型のフロントライトね。トガが996の時に買わなかったヤツだ。

 

トガ ここまで聞けばすでに分かっているとは思うけど、俺が購入したのは2代目のボクスター。それも3.2リットル・エンジンで280psを発揮する『ボクスターS』の一択だった(笑)。

 

スガ プントの反動で、今回は一番上のグレードを狙うだろうとは思っていたよ(笑)。

ちなみに、ボディカラーは?

 

トガ ボクスターSも在庫車を買ったから、色はあまり選べなかった。だからボディカラーは白で、内装は黒。左ハンドルでティプトロというクルマを選んだんだよ。

 

 

あえてティプトロを選んでみた!

 

スガ ティプトロ? トガがティプトロを選ぶのって珍しくない?

 

トガ それまでの俺のクルマ選びからすると珍しいと思う。でも一度は所有してみないと、ティプトロのどこが良くて、どこが悪いのかを語る資格がないだろ?

 

スガ 広報車で済ませないで実際に購入しちゃう辺りに、トガのポルシェオタクっぷりが感じられる(笑)。

 

トガ うるさい(笑)。

 

スガ で、実際にティプトロのボクスターSに乗ってみた感じは、どうだったの?

 

トガ ティプトロでも十分に楽しかった。むしろ、街乗りでのティプトロは、本当に楽チンだった(笑)。

 

スガ おっ、ティプトロの楽チンさを認めてしまうトガがいる(笑)。インプレッションを続けてどうぞ。

 

トガ 言われなくても続けてやる (笑)。ボクスターSは、オープンモデルなのにボディ剛性が本当に高かった。オープンボディ専用設計だったし、ベタだけど、4座の911よりも開口部が小さいことも確実に影響しているよね。

さらにハンドリングの剛性も高くて、非常に硬派な印象だった。それでいてワインディングを走ると、ノーズがスーーーっと曲がる方向に入っていくんだよ。だから挙動が軽快で、走りが気持ち良かった記憶がある。

考えてみると、ユーノスロードスターとボクスターは、正真正銘のロードスターだった。オープンスポーツを求めるならロードスター、エレガントさを求めるなら4座のオープンだってことを教えてくれたのもボクスターだったよね。

 

スガ なるほどね。けっこうボクスターのことも気に入っていたんだな。さすがポルシェオタク(笑)。ちなみにこのボクスターS、今回はどのくらい所有していたの?

 

トガ これがなぜか、またもや半年ほど乗って手離すことになる。

 

スガ 出た。ま~た半年(笑)。今度の理由は何?

 

トガ 決定的だったのは、キャディバッグが乗らないってこと (笑)。

いや、ボクスターにキャディバッグが乗らない、というのは最初から分かっていたよ。それでも「キャディバッグは助手席に置いてでもロードスターを所有してみたい」と、その時は俺は考えたんだよ。

でも、後輩や女子を乗せて移動するということができなくなって、正直、しんどい生活だった。ことは否めない。そうこうしているうちに、半年で破綻した記憶がわずかにある(笑)。

 

スガ そんなことだろうとは予想していた(笑)。

 

トガ 若気の至りっていうヤツだよ (笑)。

半年で手離したことには、もうひとつの理由があるんだよ。ボクスターに乗ったことによって、「ポルシェのラインナップの中にヒエラルキーがある」ってことを再認識ちゃったんだよね。

やっぱりボクスターSであっても、ノーマルの911カレラの方が上なんだよ。街中を運転していて、それを痛いほど感じてしまった。

 

スガ 911のヒエラルキーは、911好きは必ずぶつかってしまうものなんだろ? トガに聞いたことがある。

 

トガ 本当にヒエラルキーがあるんだよ。

でも許せなかったのは、911と基本を共にするフラット6を、あえてディチューンしているところだった。同じフラット6なのに、明らかに高回転でまわらないし、パワーも感じられない。

この点に関しては、まったく納得できなかったんだよ。そこも、わずか半年で手離すことになってしまった要因かな。

 

スガ ポルシェオタクならでは理由があったんだな。

 

トガ でもボクスターというモデルは、ミッドシップのオープンで見た目もカッコいいし、運転しても間違いなく楽しいクルマだと思う。間違いなく、クルマ好きにとってかなり良い選択肢のひとつ。半年で手放しはしたけど、今でもボクスターは嫌いじゃないからね。初めてのポルシェと考えたら、ある意味、最高の1台なのかも知れないよね。

 

スガ 確かに俺もそう思う。ミッドシップレイアウトのピュアスポーツで、爽快感も愉しめるロードスターなんて、本当に最高の1台だよ! 俺なら間違いなく、もっと長く乗っていたと思うもん(笑)。

 

トガ ちなみに、このボクスターSは、当時のクライアントにほしい!と言われて手放したんだよ。しかも、女性!

 

スガ ボクスターSを売却する時にも、欲しいという人がいたのか? ということは売り時だから、当然、トガは手放すよね。それも相手は女性だし(笑)。

 

トガ うるさい(笑)。でも売り時は、欲しいと言ってくれる人が出てきた時というのが信条だから仕方ない。

 

スガ 分かった分かった(笑)。

さて次回の「愛車遍歴決定版!」の話しをしよう。たった半年でボクスターSを手離してしまったトガは、次にどんなクルマを選ぶことになるのかな?

 

トガ 次回はガラリと方向転換。ラグジュアリー路線のSUV編に突入です!

 


2代目のボクスターS。戸賀編集長が載っていたのは、ボディカラーが白、内装が黒というコンビネーション

ポルシェ ボクスターS

 全長×全幅×全高:4330mm×1880mm×1295mm
 ホイールベース:2415mm
 車両重量:1410kg
 エンジン水平対向6気筒24バルブ 3179cc
 最高出力:280ps(206kW)/6200rpm
 最大トルク: 32.6kg・m(320N・m)/4700~6000rpm
 駆動方式:ミッドシップ
 トランスミッション:5AT

菅原 晃