プジョー307スタイル/戸賀編集長に、プジョーの「猫足」の真髄を教えてくれた最高の“足”グルマ。「素晴らしいサスペンションと相まって、気持ち良く走れた記憶しかない」と戸賀編集長。
スガ 今回の愛車遍歴決定版も、まずは前回の振り返りから始めたいと思います。ではスタート!
話しは、久しぶりに速いクルマに乗りたくなったトガが、「水冷のエンジンになった、大好きなポルシェ911(996)をチョイス」したことから始まる。
世間的には評価の低い996だったが、「クルマとして正常進化していることを自らの感覚で確認できたことから、トガは996を高評価」。世間の評価はまったく気にならなかった。
しかし、当時ゴルフにのめり込んでいたトガは、お気に入りの911(996)に無理矢理キャディバッグを積み込んで、毎週ゴルフに行くという暴挙に出る」。
その時、911の内装がバッグの底や金具で擦れて傷付いたことにショックを受け、「ゴルフに行くための“足”グルマの購入を決意」。
人生二度目となる2台持ち生活をスタートすることとなった。まぁ、こんな感じ?
トガ なぜか今回は、悪意を感じる言葉が少なかった気がする (笑)。最後の方にあった、無理矢理とか暴挙って部分は気になるが。
スガ だから今回は、あんまり面白くないんだよ(笑)。トガがやらかした話が少ないんだよね。まぁ、トガも成長したってことで話しを進めていきましょう。
トガ スガ、お前、若干投げやりになってないか?(笑)
スガ そんなことはないぞ、たぶん。とっとと話しを進めよう!(笑)
前回の2台持ちの時は、RV8&アストラワゴンという組み合わせだったけど、RV8はスポーツカーとして、アストラワゴンはセカンドカーとして、どちらも中途半端なクルマ選びになってしまったから、初めての2台持ちは納得できるものではなかった、というようなことを話していたよな?
トガ RV8を選んだ事に、失敗の理由があるような気もするけど(笑)。
スガ でも今回は、正常進化を果たした最高のクルマであることを確信したお気に入りの911(996)を持ちながら、あくまでも“足”グルマとして割り切ったクルマを選んだんだろ?
トガ まぁ、そうなるね。
スガ となると、中地半端なクルマ選びではなく、トガが最高に気に入っている1台と、“足”グルマとして選んだクルマの組み合わせになるワケだ。
ならば聞かせていただきましょう! トガが911(996)のセカンドカーとして選んだ“足”グルマとは一体何?
トガ まぁ、もったい付けることもないから即答な(笑)。
そのクルマは、プジョー307。ゴルフだけではなく、買い物なんかに使う、日常の足としても良い感じだろ?
プジョーの代名詞的な、しなやかな乗り心地を表現した『猫足』。そんな極上の乗り心地を、廉価版であるスタイルでも実現しているところに、プジョーのアイデンティティを感じたと戸賀編集長。
スガ フランスのハッチバックかぁ。良い選択だと思うけど、俺の中でのトガは、ゲルマンのイメージだったんだよね。
トガ まぁ、ゲルマンばかり乗っているからな(笑)。でもこの時は、いろいろなクルマに乗ってみたかった時だったんだよ。ドイツ車、イギリス車は乗ってきたなら、次はフランス車という選択は当然だろ?
スガ そりゃそうだ。
トガ そこで俺は、2001年の暮れに発売された豪華装備&オプションで高級感が増した307ではなく、あえて2002年に追加された「スタイル」というグレード選んだワケだ。
あえてベースグレードを選んだ意味とは?
スガ スタイル? 確か、高級とかプレミア性とかとは、まったく無縁なクルマだよな。
トガ そう、だから良かったんだよ。当時は、バブルが弾けてちょっと落ち着いた頃だろ? それまでの「デカくて速くて高いのが偉い」というクルマの価値判断が、「小さくて効率の良いエンジン、使い勝手の良いサイズ、無理なく買えるプライス」へと変わりつつあったんだよ。
だから俺は、セカンドカーなんだから、あえてベーシックなクルマを試すのもありかな? と考えた。さらに言うと、当時のプジョーは人気が出始めた頃で、けっこう世間の注目が高まっていたんだよ。それでいながら、まだ街中ではほとんど見かけない。
そんな時に307のトップグレードでもなく、オープンでもなく、あえて廉価版と言ってもいいグレードの「スタイル」に乗っている俺。
「あぁ、この人(クルマのことを)分かっている!」ってなると思わない?(笑)。
スガ トガ、お前のぶっちゃけっぷりが最高(笑)。確かに大人のファッション誌の編集長には、 “世間の目”を意識したクルマ選びも必要だからな!
で、その307スタイルのインプレッションはどうだったの?
トガ 乗ってすぐに感じたのが、サスペンションの良さ、そして乗り心地の良さだね。昔から『プジョーの足回りは猫足』って言われているけど、まさしくそれ。
スガ あぁ、猫足ね。「フランスの石畳の凸凹道を走っても、しなやかに衝撃を吸収するプジョーのサスペンション」を、「猫は高い所から飛び降りても、足がしなやかに衝撃を吸収してフワッと着地する」っていうことに置き換えて表現したヤツね。
トガ そう、でもあの言葉ってホントに核心を突いているんだよ。まさに307スタイルの足回りがしなやかな『猫足』だった。そんな極上の乗り心地を、廉価版であるスタイルでも実現しているところに、プジョーのアイデンティティを感じた記憶があるよ。
女性受けが良いフランス車⁉
スガ そんなに乗り心地が良いなら、女性受けも良かったんじゃないの?
トガ 確かに良かった(笑)。307はサスペンションだけじゃなく、シートもしっとりとソフトだったからね。クルマ好きではなくても、メルセデスやポルシェにはない、“フランス車だけが持つエスプリ”みたいなモノを、女性は敏感に感じ取っていたような気がする。だから、307はデートに最適な1台だった記憶がある。ベースグレードだから、レザーシートじゃなかったんだけどね(笑)。
スガ でも、そんなにお気に入りだった307も、トガはまた1年くらいで手放したんだよな。
トガ そうなんだけど、あれは仕方がなかったんだよ。当時『MEN`S EX』の先輩で副編だった松尾さん(現・『THE RAKE JAPAN』編集長)が「どうしても欲しい」って言うんだもん(笑)。俺は、クルマの売り時って「欲しい人が現れた時がいちばん」だと思っているのはスガも知っているだろ?
だから速攻で、松尾さんに譲ったという経緯がある(笑)。気に入ってくれている人に乗ってもらうのが一番だしね。
クルマの売り時は、欲しい人が現れた時
スガ クルマの売り時は、「欲しいと言ってくれている人が現れた時」というのは確かに正しいと俺も思う。相手が松尾さんだしね(笑)。
そうなると、次のセカンドカーはどうしたの?
307スタイルを手離した戸賀編集長は、迷うことなく一回りサイズが小さい206スタイルを購入。戸賀編集長の愛車だった307スタイル、206スタイルは、共にボディカラーは紺メタだった。
トガ 307に乗っている時に、「足グルマはもっと小さくてもいい」と感じたので、同じくプジョーで、ひと回り小さい206を選んだ。これもグレードは「スタイル」。
307スタイルが1.6リットル直4DOHCで108psだったのに対して、206スタイルは1.4リットル直4SOHCで74psと、かなりアンダーパワーだったんだけど、車重が軽いからかったるい感じがまったくしなかった。
むしろコンパクトなボディは取り回しも良いから、オートマでも気持ち良く走れたんだよ。アンダーパワーであるが故に、猫足の良さもダイレクトに感じられたような気もするんだよね。
スガ なるほどなぁ。良いクルマっていうのは、「パワーや速さ、押し出しの強さで決まるわけではない」というクルマ選びの本質を教えてくれたのが、プジョー307スタイル、206スタイルだったってことなのかもね。
そういえばトガは、確かこのフランスのハッチバックの後に、またあのブランドに戻るんだよな?
トガ その通り。じつはそのブランドには戻ったんだけど、またもや所有期間が短いんだよ (笑)。だから次回も2台を同時に紹介することになりそうなんだけど、問題ないかな?
スガ まったく無問題! トガはそうでなくちゃいけません(笑)。
プジョー307スタイル
全長×全幅×全高:4210mm×1760mm×1530mmプジョー206スタイル
全長×全幅×全高:3835mm×1670mm×1440mm文・菅原 晃