トガナリ

Column

25/3/31

「人生最初の愛車は、ポルシェ944ターボでした」現在進行形で進む 戸賀敬城の愛車遍歴決定版!

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選んぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ ということでトガ、『戸賀敬城の愛車遍歴決定版』の第一回目がスタートする訳なんだけど、その栄えある一回目を飾るクルマはいったい何にするつもり?

トガ 何にするも何も俺が愛車と認定した最初のクルマと言えば、世界文化社に入社する前の学生時代に買ったポルシェ944ターボしか考えられないだろ? 家にあったトヨタとかには確かに乗っていたけど、あれは愛車とまでは言えない。

昔からの貯金、そして学生時代のイベントで得た自分の全財産をつぎ込んで購入した944ターボこそが、俺の最初の愛車だと思うんだよ。

スガ あ~、知ってる。あのボディカラーがシルバーで、フロントフェンダーに「turbo」って、デカいステッカーが貼ってあったヤツだろ?

トガ スガ、お前が話すと悪意しか感じない(笑)。

スガ いや、まったく悪意は無いよ(笑)。でもちょっと不思議なのは、ミーハーが服を着て歩いているような当時のトガが、なんでポルシェと言えばの911ではなく、ハズし技的な944ターボを選んだの? というところかな。

トガ まぁ、そうだよな。…………あのなスガ、これ、ぶっちゃけて言うと、さすがの俺も初めてのポルシェに911を買う勇気は無かったんだよ。ちょっとビビってしまったというのが本音。だって、大学出たばかりの若造がポルシェを買うんだぞ。そりゃビビるだろ?

スガ そりゃビビる(笑)。

トガ 当時の911(タイプ930)と944ターボって、確か、ほとんど価格に差が無かったんだよ。だから買うことは出来る、でも俺の中に「911はまだ早い」って気持ちがあったのは事実。さらに当時の『カーグラフィック』の記事に、「944ターボは世界最高のコーナーリングマシン」なんて記事が載っていたから、944ターボでも良いんじゃないか? って思ってしまった。これが決定打だったかも知れない。

 


写真は944ターボのデビュー当初のモデル。戸賀の所有していた1991年式の944ターボとはホイール等が異なる。


スガ まぁ、911を購入しないための、良い言い訳にはなるね(笑)。

トガ うるさいよ(笑)。

スガ でもその後のトガは、その世界最高のコーナーリングマシンで、ドライビングテクニックを磨くわけだろ? いきなりRR(リアエンジン・リアドライブ)の911に乗るより、FR(フロントエンジン・リアドライブ)の944に乗るのは正解だったんじゃないの?

トガ いや、じつはそうでもないんだよ。あのなスガ、ぶっちゃけついでに言うけど、実際はぶつけるのが怖くて、テクニックを磨くようなスポーツドライビングなんか出来なかったのが本当のところなんだよ。20代前半の若造だよ? 全財産をつぎ込んだ大切なクルマだよ。仕方ないと思わない?

スガ まぁ、それも仕方ない気はする。でもさぁ、気を使って乗っているだけだと、愛車って感じがしないんじゃない? もちろんテクニックは向上しないし。

トガ 確かに。でもこの944ターボは1年半くらい所有していたんだよ。当然、1年以上乗っていた頃には、ある程度の走りは楽しめるようにはなっていた。

エンジンは2.5リッターの直列4気筒ターボで最高出力は220PSだったけど、当時の国産のスポーツカーよりは確実にパワーを感じることはできたし、ボディやサスペンションの剛性感に至っては、当時の国産を間違いなく圧倒していた。

コーナーリングしている時の表現に、オン・ザ・レールっていう表現があるけど、それを初めて実感させてくれたのも944ターボだったね。サーキットを走ったりすることは無かったけど、スロットルワークとかシフトワークみたいなポーツドライビングの基本を教えてくれたのもこのクルマだったよ。

 


2.5リッター直列4気筒ターボエンジンは最高出力220PSを叩き出す。1988年モデルのターボSには大型化されたターボチャージャーが搭載され、最高出力250PSまで出力が高められた。


スガ なるほど。トガの走りの基礎を固めてくれた一台ということなら、愛車遍歴の1台目として相応しいかも知れない。

ちなみにトガ、944ターボって当時の女の子受けはどうだったの?

トガ それを聞いちゃう? まぁ、911じゃなかったから、ポルシェであることさえ、いや、外車であることさえ分かってもらえなかった節がある(笑)。実際944ターボで迎えに行ったら、俺が座っている左側のドアを開けようとした子もいたからね。

スガ 確か、とある先輩にも、「戸賀、これって4気筒だろ? ポルシェに4気筒ってあったっけ?」っていじられていた記憶があるな(笑)。

トガ そんな先輩もいたな(笑)。でも944ターボに乗っていたことを思い出すとき、今でもたまに考えることがあるんだよ。もし世界文化社に入社する前じゃなく、スガやみんなと一緒にサーキットをバンバン走っていたあの頃に944ターボを買っていたら、俺はもっと良いドライバーになれていたんじゃないかな? って。

もっと走れるようになった頃にあのクルマを購入できていたら、まったく違った最高のクルマ生活を送れていたような気がしてならない。そう考えると、ちょっと惜しいことをしたかな? と思う自分がいる。

スガ 確かに、ドライビングテクニックが上達してから手にする「世界最高のコーナーリングマシン」は楽しそうだな。

トガ 944ターボは本当に良いクルマだった。ほんの少し乗る時期がズレていたら、また違った良さを引き出すことが出来たような気がするよ。

スガ トガのポルシェ好きは944ターボから始まったと言っても過言ではないのかな?

トガ そうだね。そういった意味でも、愛車遍歴の第一回目は、944ターボで良かったと思うよ!

そうなると、第二回目の愛車遍歴はあれだな。

スガ 間違いなくあれだな(笑)。トガと言えば、次のクルマは、あれしかない。

ポルシェ944ターボ(1991年式)

 全長×全幅×全高:4230mm×1735mm×1275mm
 ホイールベース:2400mm
 車両重量:1400kg
 エンジン:直列4気筒2479cc ターボチャージャーSOHC
 最高出力:250ps/6000rpm
 最大トルク:35.6kg-m/4000rpm
 トランスミッション:5速MT(後輪駆動)

文・菅原 晃