トガナリ

Column

25/6/14

vol.12 妥協しないクルマ選びの大切さを、 あらためて教えてくれた2台のメルセデス

今回は、この2台をご紹介です。1台はあまり愛着のわかなかったモデル。1台は今でも戸賀編集長が最高の1台と話すモデル。クルマ選びの大切さをあらためて教えてくれた2台のモデル。その差はどこから生まれたのでしょうか?

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選んぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

今回も恒例となった振り返りからスタート!

 

スガ 今回も毎回恒例となっている、前回の振り返りからスタートしたいと思います。
前回は、「戸賀敬城が人生で二度目となる2台持ちを画策」。ファーストカーはお気に入りのポルシェ911(996)、「セカンドカーには完全な“足” グルマとして、廉価版と言っても差支えのないプジョー307スタイルをチョイス」。
人生初となるフランス車だったが、「プジョーのアイデンティティとも言える、伝統の“猫足”による極上の乗り心地が、廉価版のスタイルでも実現されている事に感動」。
しばらく2台持ち堪能していたが、「307を譲って欲しいという人が現れたことから『売り時』だと判断」。
しかし307スタイルを売却後も、プジョーの猫足、そして小気味良い走りを愉しむために、一回り小さい206スタイルを購入。「今回も敢えてベースグレードのスタイルを選ぶあたり、やっぱり俺って分かっているでしょ?」をアピールしながら2台持ち生活をしばらく続けたのであった……。こんな感じだったよな?

 

トガ いつものように、最後の部分が余計(笑)。だけど、まぁ概ねそんな感じだな。

スガ あのさ、この頃、愛車遍歴決定版の原稿を書いていて思うんだけど、トガのクルマ選びもちゃんと成長しているよな。中途半端なクルマを選ばなくなってきたもん。本当に自分が好きなクルマだけ買っているし、“足” グルマを買うとなったら、余計な装備が付いていない、ベースグレードを購入している。
ムカつくことだが、トガの成長を感じてしまっている俺がいることは否めない。

トガ スガに褒められるのはマジで気持ち悪い(笑)。でもなスガ、お前の誉め言葉には「絶対に裏がある」と思う俺もいるんだよ(笑)。何か良からぬことを考えているんだろ?

スガ いや、良からぬことは考えていない……と思う(笑)。前回の愛車遍歴で、最後にトガが言っていた、「次回の愛車も所有期間が短い。だからまた、2台同時に紹介することになるかも」という言葉に期待しているだけ。だって、所有期間が短いということは、クルマ選びの段階で、また何かやらかしたんだろ?(笑) どんなクルマを買っちゃったんだよ?

トガ うるさいな(笑)。やらかしてはいないと思うけど、手に入れたのはメルセデスのステーションワゴンだよ。

 

 

ある意味、一番興味が無さそうなクルマを購入

 

スガ うわっ、アウトドアスポーツとかキャンプなんか絶対やらないのに、ステーションワゴン! 「ワゴンをカッコいいと思ったことは無い」、みたいなことを言っていたトガがワゴン? それって十分にやらかしている予感しかしない(笑)。そんなトガが、なんでまたワゴンを選んだの?

トガ まぁ、言い訳になっちゃうけど聞いてくれ。当時、30代の半ばって、『MEN`S EX』の編集長をやりながら、『メルセデス マガジン』の編集長も兼任していたんだよ。だからめちゃくちゃに忙しかったという記憶しかないんだ。
そんな状態だったから、欲しいクルマがまったく見つからなかった。『メルセデス マガジン』の編集長をやっているくせに、なぜかクルマから距離を置いてしまっているような感じだったんだよね。
そんな時に、メルセデスのステーションワゴンの出物が出てきたんだよ。それがE500のステーションワゴンだった。

スガ おぉ~、E500! やっぱり俺たちくらいの年齢のクルマ好きにとって、E500は特別なクルマだよな。特に1991年デビューのW124型E500は、ほぼポルシェが作ったクルマだったし、トガにぴったりじゃん。
ちょっとネットで調べてみたら、W124のE500はミディアムセダンなのに、5.0リッターのV8エンジンが積まれていて、最高出力が326pで、最大トルクは48.9kgm(※注:モデルイヤーによってスペックは異なります)。
0-100km/h加速は6.1秒、最高速250km/h(※注:リミッター作動)だってよ。やっぱりスゲェよな。



小さなボディに大きなエンジンを搭載しただけでなく、ブレーキや排気システム、サスペンション、トランスミッション、ステアリングなど、その90%をポルシェが手がけたと言われるW124型E500。


 

トガ 当時、俺も広報車のE500に乗ったけど、サスペンション、トランスミッション、ステアリング、ブレーキ等、すべての剛性が高くて、本当に素晴らしいクルマだった。
でもそれは、あくまでもW124の話しだよ。俺が買ったのは、W211のE500なんだよ。
クライスラーと合併した直後のモデルだからか、W124のE500が持っていた、あのオーラを感じることができなかった。実際に走らせてみても、W124のE500の時のような感動はなかったしね。言ってしまえば、まったくの別モノだった。
ステアリング、トランスミッション、ブレーキの剛性も低かったから、あまりの違いに、けっこうショックを受けたことも覚えているよ。



W211型のEクラスのステーションワゴン。写真はE350ですが、戸賀編集長の愛車はE500。ボディカラーはシルバーでした。


 

スガ W124のE500は本当に凄いクルマだったからなぁ……。考えたら、W124のE500には、ステーションワゴンのラインナップは無かったよな。ちなみにトガが手に入れたW211のE500ステーションワゴンって、どんな個体だったの?

トガ 走行は1000km未満、ボディカラーはシルバーで新車のようなコンディションなのに、かなりリーズナブルな個体だったんだよ。ステーションワゴンではあるものの、リーズナブルだし、何より往年の名車と同じE500ということで “即決め”しちゃった感はある。今考えてみると、その“即決め”が失敗だった。

スガ トガ、今回はその“即決め”がやらかしポイントだと思われる (笑)。

トガ うるさいよ(笑)。でもステーションワゴンだったから仕方ない部分はあるけど、W124のE500とは、まったく別モノのクルマになってしまったW211のE500に、あまり魅力を感じなかったのは事実。さらに過渡期的なモデルということもあって、どっちつかずのイメージを抱いてしまったのも魅力を感じなかった原因のひとつかな。魅力を感じることが出来ないクルマを所有し続けることはできなかった。だから半年ほどで手離すことになったんだよ。

 

 

次に手に入れたクルマは、かなりのお気に入りでした

 

スガ E500(W211)のステーションワゴンの後に所有したクルマもまた、メルセデスなんだよな?

トガ そう。だけど正確にはAMGだね。人生で初のAMGを選んだんだよ。車種はCLS55だった。



W219型のAMG CLS55。写真のボディカラーはシルバーですが、戸賀編集長は、敢えて当時の人気カラーである、パールホワイトをチョイス。


 

スガ あれ、またCLS? ちょっと前にも乗っていたよな?

トガ 乗っていた。その時の話しは何回か前の愛車遍歴決定版!でも話したけど、質実剛健なメルセデスのラインナップの中でも、唯一、“色気”を感じさせてくれるクルマとして気に入っていたのが、CLSだったんだよ。
おそらく、それまでのメルセデスとは違う、ある意味超越していたモデルだったから俺の眼には魅力的に映ったんだと思う。そのままCLSに乗り続ける選択肢もあったんだけど、残念なことに最初に所有したCLSは、渋いグリーンメタのボディカラーだったんだよ。そこが唯一気に入らなかったポイントだった。
だから、あらためてCLSを所有しようと考えた時に、「今回は絶対に人気カラーであるパールホワイトに乗ろう!」と決めていたワケ。
さらに、どうせ二度目のCLSに乗るなら、「人生初のAMGを選んでも良いのでは?」という結論にたどり着いた。
そういう経緯を経て、AMG CLS55のパールホワイトの購入を決定。妥協は一切なし。おかげで今でも自信を持って良いクルマだったと言える、最高の1台に出会うことが出来たと思っている。

スガ なるほど。忖度&妥協をしないクルマ選びってヤツね。ちょっと前に聞いた気もするけど (笑)。ところで、人生初のAMGはどんな感じだったの?

トガ スポーティでありながらラグジュアリーっていう感じかな。質実剛健なメルセデスとは、目指しているベクトルがまったく違っていた。
さらにCLS55を所有したことで、AMGはメルセデスの格上であり、別格な存在であることが分かった。簡単に言うと、俺が大好きなメルセデスの上の存在ってこと。それを手に入れることが出来だけで俺は大満足だった。所有することで、AMGをより深く知ることができたしね。
ちなみにエンジンは5.4リットルのV8で、それをスーパーチャージャーで過給。実際に走らせてみても、ノーマルのCLSとは別モノの加速だった。スガ、スペックはちゃんと調べておいて(笑)。
(※最高出力476ps、最大トルクは71.4kg。20年経った現代でも、十分に通用するスペックでした)
妥協をしないクルマ選びをしていれば、本当に自分が乗りたいクルマに巡り合うことができるということを教えてくれたのが、AMG CLS55だったのかも知れないね。

スガ 話しを聞いているだけで、トガがメルセデス、そしてAMGが本当に好きなことが分かる (笑)。っていうか、好き過ぎだろ (笑)
で、そろそろ次回の愛車遍歴決定版!の話しをしたいんだけど、CLS55の後って、また毛色の違うクルマに乗っていたよな?

トガ その通り(笑)。次回は妥協のないクルマ選びとは離れてしまうけど、俺にとっては忘れることのできないクルマだね。
俺にクルマの愉しみ方を教えてくれた、今は亡き巨匠から譲って頂いた、思い出の1台だからな。

 

次回もお楽しみに!

メルセデス・ベンツ E500ステーションワゴン

 全長×全幅×全高:4850mm×1820mm×1485mm
 ホイールベース:2855mm
 車両重量:1880kg
 エンジン:V型8気筒SOHC 4965cc
 最高出力:306ps(225kW)/5600rpm
 最大トルク:46.9kg・m(460N・m)/2700~4250rpm
 トランスミッション:7速AT

AMG CLS55

 全長×全幅×全高:4915mm×1875mm×1390mm
 ホイールベース:2855mm
 車両重量:1940kg
 エンジン:V型8気筒SOHC スーパーチャージャー 5438cc
 最高出力:476ps(350kW)/6100rpm
 最大トルク:71.4kg・m(700N・m)/4000rpm
 トランスミッション:5速AT

文・菅原 晃