トガナリ

Column

25/11/27

vol.32 あらためて「クルマは欲しいと言われた時が売り時」を実感した、ゲレンデの限定車

G400d Edition Magno Black/White。ブラックは300台、ホワイトは200台という限定車で、かなり希少。ともに艶消しが採用されるが、このカラーの採用はディーゼルで初だった

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 愛車遍歴のセカンドカー(SUV)シリーズでいくと、先代の愛車はある意味で『究極のSUV』といっても過言ではない、ベントレーのベンテイガだった訳だ。

トガ そう、俺に分不相応という言葉と、目では見ることができない壁の存在をあらためて教えてくれたクルマだった。

スガ そうなってくると、次のクルマ選びって意外と慎重になるんじゃない?

トガ いや、意外とそうでもない(笑)。確かにベンテイガは、当時の俺には早過ぎたことは間違いない。だけど俺には次のクルマがすぐにでも必要だったんだよ。だって、足グルマが無いと仕事に支障が出るしさ。

スガ そりゃそうだ。

トガ で、次のクルマを探しながら、あらためてベンテイガでの生活を思い出したりしてみたんだけど、あの時はクルマにトラブルが起きると、俺が自分で運転して東雲まで運び、帰りはタクシーで帰るなんてことをしていたんだよね。

これって何となく俺がクルマに使われているような感じだし、今更ながら、ちょっと健全な関係性ではなかったように思うんだよ。

そんなことを考えていたら、ふと頭をよぎったのが、『やっぱりメルセデスはサービス体制もしっかりしていたよなぁ』ってこと。そして、『やっぱり日常の足グルマにするなら、メルセデスが一番だよなぁ』ってことだった。

スガ (次のクルマは、十中八九メルセデスでしょ)←心の声

 



 

トガ さらに、クルマを年がら年中買い替える飽きっぽい俺としては、下取りが高いことも大事になってくる。その点を考えてみても、値が落ちないメルセデスのモデルはいつでも気になる存在だった。

スガ (値が落ちないメルセデスときたら、たぶんアレですな)

 



 

トガ スガ、メルセデスのSUVで言ったら、やっぱりゲレンデのディーゼルかG63の下取りが高いのは間違いないだろ? ということで、ゲレンデを探し始めようと思ったところで、いつものように大きな問題にぶち当たった訳だ。

スガ (やっぱりゲレンデか)でも、ゲレンデは前にも乗っていたから、今さら大きな問題はないんじゃないの?

 

 

やっぱり問題になってくるのは、立体駐車場なのだった

 

トガ スガ、よく聞け。何度も話してきたように、港区のマンション住まいの人間にとって、さらに限定するなら大型SUVオーナーにとっては、住んでいるマンションの立体駐車場の積載は何kgまでOKなのかという大問題があるんだよ。

当時俺が住んでいたマンションは2.5トンまでOKだったんだけど、それをゲレンデに当てはめてみるとディーゼルもG63も無理だった。どちらも2.5トン超えだからね。マンションにある平置きの駐車場が当たれば問題はないんだけど、それを待つ余裕は当然無いし、平置きが当たる保証はどこにも無い。

ならばということで、他のメルセデスのモデル(SUV)も見てみたんだけど、うちのマンションの立体駐車場にはGLSも入らないことが分かった。さらにサイズを落としてGLEの63にすると、こちらは問題なく駐車はできるんだけど、残念なことに内装に心惹かれるようなカラーがまったく無かった。遊び心がまったく感じられなかったんだよね。

それにやっぱり、GL系はゲレンデに比べてどうしても下取りが弱いんだよ。港区がゲレンデのG63ばっかりでお腹一杯という状況の中で、あえてGLEの63を選ぶっていう選択肢は、『クルマを知っている感』を出すなら有りかな? と考えたことがあるのは否定しないけど(笑)。

スガ トガさんらしいですな(笑)。

トガ 実際のところ、GLE63は今でも気になる1台ではあるんだけど、その時は触手が伸びなかったんだよね。

スガ 下取りが弱いっていうのはかなりのネックだよな。で、悩んだ末にトガが選んだ1台は何だったの?

トガ ゲレンデのG400D エディション マグノホワイトを選ばせていただきました。

 



 

スガ やっぱりゲレンデかい!(笑)

トガ まぁ、下取りを考えるとそうならざるを得ないよな。ちょうど良いタイミングで、家からタクシーで5分くらいのところに平置きの駐車場を見つけることが出来たことも、購入に踏み切ったことにかなり影響はしているけどね。

スガ お、駐車場が見つかったのか! 確かに駐車場問題が解決したのはデカいよな。ちなみにエディション マグノホワイトって、どういうモデルだったの?

トガ 名前から分かるように、まずは限定モデルだよな(笑)。限定車は下取り価格も安定するから間違いなく狙い目。ボディカラーは人気のあったパンダという白黒のツートーンで、ボディのホワイト部分だけではなくて、フェンダーやバンパー、ドアミラーやタイヤカバーの黒い部分にも艶消しが採用されていた。

最初にディーゼルで出て、その後G63でも出たんだけど、残念なことになぜかディーゼルには右ハンドルしか設定が無かったんだよね。だから有無を言わさず右ハンドルをチョイス。で、内装は白で、ダイヤモンドステッチを採用。このあたりは、まさに俺好みの仕上がりだった。

ちなみに、このエディション マグノホワイトの前に、これまたG400Dの限定車で、『マヌファクトゥーア エディション』っていう人気モデルがあったんだけど(特にブルーが大人気だった)、このモデルでも白の内装にダイヤモンドステッチが採用されていたんだよ。

これをエディション マグノホワイトでも継続採用したことを考えると、「白の内装にダイヤモンドステッチ」という組み合わせはかなり人気の組み合わせであることが分かる。G400Dの限定車を下取りという視点から見た場合、これは外せない要素と考えて間違いないと思うよ。

 



 

なぜG63を選ばずに、G400Dを選んだのか?

 

スガ なるほど、説得力のあるプロのような視点からの見解だ (笑)。そう言えば、ちょっと気になっていたんだけど、このエディション マグノホワイトにはG63も用意されたんだから、当然左ハンドルもあるよな? 何で左ハンドル好きなトガが、G63を選ばなかったの?

トガ そういうツッコミが来ることは予想していました。理由は簡単。妻にダメだって言われたから (笑)。でも本当のところを言うと、G63のエディション マグノホワイトのプライスが約3000万円というのに驚いたんだよね。

さすがに俺も、ちょっと強気の値付けだなぁと思った覚えがある。3000万円出すなら、またベンテイガが見えてきちゃうし、この頃には新しいレンジローバーも発表されていたから、選択肢がけっこうあったんだよね。

俺もゲレンデを乗り継いできたから分かるんだけど、ゲレンデがどんどんラグジュアリーな方向に進化してきたことは間違いない。とは言え、3000万っていうのはちょっと違うんじゃないか? ってその時、普通に思っちゃったんだよ。だから妻に反対されても、「確かに高いよな」って感じで、スッと腑に落ちた感じがあったんだよね。

それにこの頃は俺の中で、ディーゼルに対するイメージがかなり良くなっていたというのもある。前にスガに書いて貰ったE220dもそうだし、後輩の何人かが乗っていたゲレンデの400Dも本当に良いクルマだった。だからディーゼルに対するネガティブな考えが一切なかったんだよ。

右ハンドルって部分だけは、ちと残念ではあるものの、右ハンドルであるが故の不都合さはまったく無いし、この時は限定車の魅力、そしてメルセデスのディーゼルの素晴らしさに負けて、G400Dを購入したってところが真相かな?

スガ ちなみに、このクルマはどのくらい所有したの?

トガ 1年は乗らなかった。確か11か月くらいだったかな? これは自宅からタクシーに5分乗って駐車場というのも、間違いなくひとつの原因。そこからようやくクルマに乗れるっていうのも、やっぱり面倒くさいよな(笑)。

さらに言うと、じつはこの頃MINIのアンバサダーに就任することが決まって、急に足グルマが手に入っちゃったんだよ。住んでいるマンションの駐車場に足グルマがあったら、わざわざタクシーに5分乗って乗りに行かないよ。

だから走行距離も伸びなくて、11か月で2000キロくらいしか乗ってなかった。でも本当に気に入っていたし、メルセデスのディーゼルの良さを、さらに教えてくれた1台だったと思っているよ。走行中に、気になるエンジン音、風切り音などは一切しないし、乗っている感じはレクサスとそん色無いって言っても言い過ぎじゃない仕上がりだった。悪い印象はまったく無いしね。

 

 

やっぱり、クルマは欲しいと言われた時が売り時

 

スガ そんなお気に入りのクルマも、手離すことになるんだよな? 今回はどんな経緯で手離すことになったの?

トガ 今回は、けっこう珍しいパターンだった。じつはメルセデス・ベンツ品川の営業から「お客様に、どうしてもG400D エディション マグノホワイトが欲しいという方がいらっしゃるので、戻してもらうことはできませんか?」っていう連絡が入ったんだよ。

でも1年乗ってないのに転売したら、取引停止になっちゃうんじゃないの? って聞いたら、「一度弊社に戻してもらって、弊社からお客様に販売すれば転売にはなりません」って言う答えが返ってきた。ならば俺の鉄則でもある、『クルマは欲しいと言われた時が売り時』をいつものように実践しようと思った次第。MINIという足グルマもあるしね。

スガ なるほど。サクッと売ってしまった訳だ。

トガ なんか言葉に棘があるような気がする(笑)。でもこの話には、もうちょっと続きがあるんだよ。

スガ どんな話?

トガ じつは、このG400D エディション マグノホワイト、購入した金額より、下取りの金額の方が数百万円高かったんだよ。

今は落ち着いてきたけど、ゲレンデヴァーゲンの超バブルはこの頃が最高だったのかもな。

スガ う~ん、聞きたくない(笑)。だけど、その上乗せ分は、次回のクルマに投入することになるワケだよな? 次回の愛車遍歴が楽しみだ!

トガ スガ、楽しみにして貰っているところ申し訳ないんだけど、次回はベンテイガに乗っていた時のサードカーの話しにしてもらって良いかな? 話している途中に思い出しちゃったんだよ、最強の足グルマを! 何で忘れてたかなぁ。

スガ トガ~、頼むよ~、また遍歴の順番が狂っちゃうよ~。でも最強の足グルマ? ちょっと興味あるな(笑)。次回は最強の足グルマでいくことにしよう!

 

さて、最強の足グルマとは、これ如何に?

 


メルセデスG400D エディション マグノホワイト

 全長×全幅×全高: 4660mm×1930mm×1975mm
 ホイールベース:2890mm
 車重:2490kg
 駆動方式:4WD
 エンジン:2924㏄ 直列6気筒DOHCターボ
 トランスミッション:9速AT
 最高出力:330ps/3600~4200rpm
 最大トルク:700Nm/1200~3200rpm
 価格:¥19,800,000 ※2022年当時

文・菅原 晃