トガナリ

Column

25/10/23

vol.27 新しい生活を始めた戸賀編集長、彼が最初に選んだ1台は、ある意味納得のクルマでした

991型の「911 GT3」は2013年3月のジュネーブショーで発表された。GT3初となるPDKが採用される

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 前回&前々回の愛車遍歴決定版! で、トガがサラリーマン時代の最後に乗ったクルマが、ポルシェ911(997)のGT3であったこと。

そしてセカンドカーとして、BMWの公認チューナー「スタディ」が手掛けたBMWの5GTを所有していたことが分かりました。

でもGT3はあまりにスパルタンな乗り味なため、トガのライフスタイルに合わなかったこと、さらに奥さんにも「二度と乗らない」と言われたことから、早々に手放すことになってしまう。

5GTの方もスタディのデモカーを譲ってもらったことから、日常生活で乗るにはちょっと目立ち過ぎることが判明。こちらも、短い所有期間で手放すことになるのであった。

 

みたいな感じが、前回&前々回だったよな。

 

トガ まぁ、そうだな。でも997のGT3を所有したことで、GT3にはPDKが付いていることが必須だと改めて認識できたことは収穫だったし、インチダウンされたサファリ仕様のスタディの5GTは、足としては最高のクルマだったことを知ることができた。外観はちょっと目立ち過ぎだったけどね(笑)。

スガ そしてサラリーマン生活を卒業。フリーに転身し、会社を立ち上げ、新たな生活を始めると同時に愛車遍歴の第二幕が幕を開けるのであった! みたいな感じの流れで良いのかな?

トガ 俺のクルマ選び自体は、フリーになってからも大きく変わってはいないけど、ある意味、第二幕ではあるのかもな?

フリーになったタイミングで、メインのクルマもセカンドカーも同時に替えたのは事実だし。

スガ では聞こう。フリーとなって初めて所有した1台、一体どんなクルマだったのでしょうか?

トガ いきなり聞いちゃう?(笑)

スガ 当然です。

トガ まぁ、隠していても仕方がないから言っちゃうけど、前回に引き続き、またもやポルシェのGT3なんだよね(笑)。

スガ トガ〜〜〜、あれだけ「GT3は俺のライフスタイルに合わなかった」とか何とか言ってたじゃん。なのに舌の根も乾かないうちに、なんでまたGT3を買うのかな〜。

トガ でもなスガ、今度は991のGT3なんだよ。ということは当然PDKが付いているやつな訳だ。

997GT3を所有したことでGT3にはPDKが必須だと認識した俺にとっては、初めてPDKを採用したGT3は、どうしても乗っておきたい1台だったんだよ。

スガ まぁ、そこはポルシェおたくのトガさんであるから分からんでもない(笑)。さらにトガは新しモノ好きだし。

で、新たな愛車となった、991のGT3はどんなクルマだったの?

 

 

バキバキでジャーーーッ!

 

トガ まず外観でいくと、ボディカラーはガーズレッドで内装はブラックという組み合わせだった。

 

スガ お、トガの初めての911、964のカレラ4と同じ組み合わせじゃん。乗った感じは?

トガ 俺のファーストインプレッションとしては、997のGT3より少~しだけ角が取れたかなぁ? って感じだった。

でもそこは流石にGT3。やっぱり硬派で、けっこうバキバキな乗り味だったよ(笑)。乗り心地という点では、やっぱりかなりスパルタンで、ジャーーーッていうジャダー音も半端なかった。

スガ バキバキでジャーーーッ。何となく嫌な予感がする(笑)。

トガ うるさいな(笑)。このクルマが納車されてすぐの頃は、「少しカド(角)が取れた気がするし、このGT3なら妻も大丈夫かな?」と淡い期待もあったんだけどね。

今回も前回の997の時と同じように箱根に行ったんだけど、乗り始めてすぐに、「二度とこのクルマには乗りません」って言われてしまったんだよね(苦笑)。

スガ バキバキのジャーーーだもん、そうなるなるわな(笑)。

トガ 当時、モータージャーナリスト達が、「GT3もデートカーになり下がった」みたいなことを書いてたけど、こいつら何も分かってねぇなって思ったよ。乗り心地やサウンド、快適性の評価なら、妻の方がよっぽど分かってる(笑)。

スガ 俺もそう思います(笑)。

じゃあ、トガ自身の991GT3に対しての評価はどんな感じだったの?

 


大型の固定式リアウイングがレーシーな雰囲気を演出。戸賀編集長はガーーーッというジャダー音が気になったという


 

トガ そりゃあPDKが付いているし、クルマとして確実に進化をしていることは間違いなかった。でもカドが幾分取れたとは言っても、乗り味はまだまだ尖がっているし、エンジンサウンドもイマイチだった記憶がある。

スガ エンジンサウンドがイマイチ? フラット6っぽくない音なの?

トガ いや、フラット6の音はするんだよ。でもポルシェのフラット6特有の、甲高いけど官能的と感じることができる、あの唯一無二のサウンドが聞こえてこない。そのサウンドを聞くためには、スポーツモードに切り替えて6000回転以上でぶん回さないとならない。6000回転だぜ、それって街乗りではまったく現実的じゃないよな。

そう考えると、以前に所有していたBMWのMとか、アウディのRSの方が間違いなく良い音を出していた。

あの頃のポルシェって、聴覚に訴えてくるスポーツカーならではの色気、音が足らなかったと思うんだよ。

でも、俺にとってGT3は特別なクルマであることは間違いない。エルメスで言えばバーキン、ロレックスで言えばデイトナっていう位置付け。だから最高の1台と感じられなかったのは少し残念だったかな。

スガ 今回のGT3もあまり評価は高くないようだけど、997のGT3に引き続き、991のGT3にもあまり乗った記憶がないなんてことはないよな?

トガ 否定はしない(笑)。結局のところ991のGT3 PDKもまた、俺のライフスタイルには合わなかったってことかな。

スガ そもそも、911のGT3を日常使いしようとすることに無理がある気がするけど(笑)。

トガ うるさいよ(笑)。

でもそのお陰で、素晴らしいセカンドカーと出会うことができたんだよね。

スガ お、さすがトガ! しっかりセカンドカーも探していたのか(笑)。

では次回は「愛車遍歴、第二幕」初となるセカンドカーの紹介で良いかな?

トガ もちろん。そのクルマはマジで最高の1台だったんだよ。そのクルマ、今でもオススメの1台です!

 


黒を基調にまとめられた911(991)GT3の内装。ステアリングなどにアルカンターラが採用されている

ポルシェ 911(991) GT3

 全長×全幅×全高:4545mm×1852mm×1269mm
 ホイールベース:2457mm
 駆動方式:RR
 車両重量:1450kg
 最高出力:475 ps/ 8250 rpm
 最大トルク:44.9 Kg・m /6250rpm
 エンジン:水平対向6気筒DOHC
 変速機:デュアル・クラッチ7段自動MT(PDK)
 総排気量:3799 cc
 価格:¥18,590,000(税込)※2015年当時

文・菅原 晃