「最小限のボディサイズで、最大限の安全性、快適性、環境適合性を」をコンセプトに開発された、マイクロコンパクトカー。1998年の発売以来、200万台以上が販売されたが、2024年4月をもって生産は終了となる
スガ 今回も前回の振り返りからスタートしよう!
前回は、BMW製の4.4リットルV8エンジンを搭載している3世代目のレンジローバーに、心の底から惚れてしまったトガは、年式違いなだけのほぼ同じレンジを3台乗り継ぐという暴挙に出た。
トガ 暴挙では無い。BMWのV8は、まさに極上と呼ぶに相応しいエンジンだったし、心底惚れたクルマだったから、少しでも自分の好みに近いクルマを手に入れたくなってしまうのは仕方ない。
真のクルマ好きなら賞賛こそすれ、暴挙とは言わないと俺は思うけどね。
スガ そういう考え方もあるよな。でも俺は手に入れたクルマをあまり買い替えないタイプなんだよね。
トガ まぁ、考え方は人それぞれだからな。
スガ ということで、本題はここから。
『その心底惚れたレンジローバーを、彼女(現在の奥様)が欲しいといったデビアスの「プロミス」というワンオフモデルの指輪を買うために売却。その後、ハワイ旅行の飛行機のなか(ビジネスクラス)で、その指輪を渡しながらプロポーズをした』という下り。これ、ホントに実話?(笑)
トガ 当たり前だろ(笑)。一世一代の勝負だから、間違いなく人生で一番気合を入れたよ。実際、その指輪を買うためには、レンジを売るしか方法がなかったからね。
スガ でもさ、この時ってセカンドカーも持っていなかったよな? 20代の頃、世界文化社の同期の女子に、「戸賀くんからクルマを取ったら何も残らない」とまで言われたトガが、本当に何のクルマも所有していない、まさに丸腰状態になっちゃったワケだ。「こりゃ、マズい!」とはならなかったの?
トガ まぁ、そうだよな。でも会社員ではあったワケだから、生活に困窮するということはなかったんだよ。だから焦りはなかった。とはいえ、お金に余裕が無くなったのは事実。そこで、当時の自分にも無理なく購入できて、なおかつクルマ好きの所有欲も満たしてくれるようなクルマを探すことにしたんだよ。
お手頃価格でクルマ好きの所有欲を満たすクルマとは?
スガ お手頃価格で、かつクルマ好きの所有欲を満たす? そんな都合の良いクルマなんてあるか?
トガ これがあったんだよ。当然、妥協しなければならない部分は多かったけどね。
いろいろと余計なモノをそぎ落とした結果、ようやく見えてきたのが、スマートの初代カブリオだった。
日本でも、世界でも大ヒットはしなかったのに、イタリア・ミラノでは、モンテナポレオーネでも郊外でも、周りはスマートだらけというくらいの人気だったと、戸賀編集長
スガ スマートのカブリオ! 確かに思い切りそぎ落とした感が満載ではある(笑)。
トガ マジで贅沢するお金は底をついていたからね。考えてみると、ちょうど今の虎ノ門ヒルズのところにアシェット婦人画報があった時代で、まさに『MEN’S CLUB』の編集長に就任した直後だった。
スガ 編集長なのに、クルマが無い。もっと言えばトガのくせにクルマが無い (笑)。
トガ うるさいよ(笑)。で、そんな時に、駒沢公園近くにあったスマート専門店の前をたまたま通って見つけたのが、蛍光イエローみたいな黄色とシルバー初代スマートのカブリオだったんだよ。
しっかり覚えていないけど、確か走行距離が数百キロで150万円前後の新古車だった。当時はスマートにも左ハンドル仕様があって、ラッキーなことにその個体も左ハンドルだった。さすがに革シートではなかったけど (笑)。
次の日曜日には歩いてショップに行って、「これください」って感じで購入した記憶がある。まぁ、手を掛けるようなクルマでもなかったけど、ライトだけはこだわってHIDに変えた。それからしばらくは、これ1台で生活していたよ。
スガ HIDだけはこだわったのね(笑)。トガにしては慎ましい車生活のスタートだな。なんとなく愛車遍歴決定版!の第二部スタートみたいな感じ?(笑)
トガ 確かに、そんな感じかも(笑)。レンジローバーの次のファーストカーが、いきなり150万円のスマート・カブリオだもんな。
スマート・カブリオといえば、当時の会社の前に300円で停められるパーキングメーターがあったから、そこに良く止めて仕事をしていた思い出がある。本当に気軽に乗れるクルマだったね。
スマートを選んだもう一つの理由
トガ でもなスガ、スマートを選んだのには、安いだけじゃない、もうひとつの理由があるんだよ。
スガ お、聞かせてくれ!
トガ スマートって、日本でも、世界でも大ヒットはしなかっただろ? でも俺がコレクションで訪れたミラノでは様子が違ったんだよ。モンテナポレオーネでも郊外でも、周りを見ればスマートだらけっていうくらい人気のクルマだった。ミラノで大ヒットしている魅力はどこにあるのか? それを実際に経験してみるためには、購入してみるしかなかったんだよ。
スガ なるほど。で、実際に所有して分かったことはあったの?
トガ あった。けして高級車ではないけど、セカンドカーであることを割り切っている存在感、そしてトレンドも併せ持っているってところがたまらなく魅力的だった。セカンドカーの中では、間違いなく抜きんでた存在だということが分かったんだよ。
スガ それなのに安いのかぁ!
トガ そうなんだよ。速くもないし、運転していて面白いわけでもない。ツーペダルでクラッチの繋がりは変だったし。でも、クルマとしての企画は抜群に面白いし、パッケージングもよく考えられていたんだよ。
ホロ部分を途中まで開けて使う、『サンルーフ使い』ができたスマート・カブリオ。戸賀編集長的には、Bピラーもあるから『タルガ使い』とのこと
スガ 確か、車内もけっこう広かったよね?
トガ そう! 181センチの俺が、シートを一番後ろに下げると運転できないくらい、前後にはデカかった。その代わり横幅はめちゃくちゃ狭いんだよな(笑)。でも、その狭さのおかげで、当時彼女だった妻を乗せる時はうれしかった (笑)。スガみたいな、むさくるしい男が乗ると「あっち行け」って思っていたけど (笑)。
スガ その言葉をそのまま返してやる(笑)。でも縦方向は本当に広かったよな。フロントガラスが遠くて、まったく圧迫感を感じなかった記憶がある。
トガ それはスガの足が短いから?(笑) そして、これはカブリオならではの良いところなんだけど、ホロ部分を途中まで開けて使う、『サンルーフ使い』ができるんだよ。俺的には、Bピラーもあるから『タルガ使い』なんだけど、スモールカーなのにも関わらず、本当に圧迫感が少ないクルマだったと思う。
「小さくても見栄がはれる」クルマ
スガ で、実際のところ、トガのスマート・カブリオに対する全体的な評価ってどんな感じなの?
トガ 「小さくても見栄がはれる」というのが、俺の評価かな。
当時の俺は、新たな生活のために見栄を捨ててレンジローバーを手離したんだけど、スマートのカブリオなら、安価でもこだわりのあるセカンドカーに乗っている感じを醸し出すことができた。
スガ スゲェ~編集者っぽい (笑)。確かに、そんな感じのヤツがけっこういたよな。ファーストカーも持っているんですけど、今日は足代わりのこいつに乗ってきましたって感じのヤツ(笑)。
トガ だよな(笑)。でも、今でもスマートは気になるクルマなんだよ。走っているスマートを見ると、どんな人が乗っているのかを必ず確認しちゃう。
乗っているのが若者でも同年代のオジサンでも、「いい車だよね」って、心の中で話しかけている俺がいるから(笑)。それぐらい良いクルマだったし、俺にスモールカーの良さを教えてくれたのがスマートだった。
でも、ゴルフの練習に行くには、助手席にキャディバッグを載せるしかないんだよ。荷物を載せるスペースが無いから。ということは、彼女とゴルフの練習にも行けない。これ、俺にはけっこう大事なこと。
で、結局またもや1年も乗らずに売っちゃうことになる(笑)。俺にとっては、当時のファーストカーだったんだけどね。
スガ トガ、頼むからお前のクルマ選びの第一条件に、『しっかりキャディバッグを載せることができる』という文言を入れておいてくれ!(笑)
次回は、大丈夫なんだろうな?
トガ もちろん。次回のクルマは、余裕でキャディバッグが積めたクルマです!
一体どんなクルマが登場するのでしょうか? 乞うご期待!
初代スマート・カブリオ
全長×全幅×全高:2540mm×1535mm×1550mm文・菅原 晃