トガナリ

Column

25/7/6

vol.15 レンジローバーが、 ラグジュアリーSUVの魅力を教えてくれました

2001年に第3世代のレンジローバーがデビュー。シングルシェルのモノコックボディを採用し、エクステリアデザインはイタリアRiva社のスピードボートから、インテリアも最高級ヨットの装備からヒントを得たといわれる

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選ぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!

スガ 今回も前回の振り返りからスタートするぞ。前回では、徳大寺さんから譲っていただいた大事なプントを、どうしても売って欲しいと言ってくれていた人がいたおかげで、ちょっとラッキーと思いながら手離すこととなった。

トガ ラッキーと思ったことは、まったくないけどね。

スガ プントを手離したことで、徳大寺さんの「クルマはロードスターから始まった」という言葉をあらためて思い出し、『クルマ好きを自称するなら一度はロードスターに乗っておかなければ』と考え、2座のオープンを探すことに。
そこで見つけたのが、2代目のポルシェボクスター、それも3.2リットル・エンジンを搭載して、280psを発揮する『ボクスターS』だった。

トガ まぁ、そんな感じだな。

スガ ボクスターSは本当に素晴らしいクルマで、正真正銘のロードスターだった。しかし、キャディバッグが載らないという前にも聞いたことがあるような理由で、またもやわずか半年で手離すことに。
で、今回に続くという感じだよな。

トガ ボクスターSも欲しいと言ってくれた人がいたからね。売って欲しいと言ってくれる人が居るときが売り時。それが俺のクルマ売買時の信条だから仕方がない。

スガ で、今回なんだけど、前回最後の方でトガは、『次回はガラリと方向転換。ラグジュアリー路線のSUV編に突入』みたいなことを言っていたよな? ラグジュアリーなSUVなの? 俺はてっきり911に戻るのかと思っていたんだけど。

トガ まぁ、911に戻ることも考えられたけど、911は996の後期型に乗ったことで、とりあえず納得しちゃったんだよ。だから、もうちょっと他のクルマに乗ってみるのも良い勉強になるんじゃないかと考えた。

スガ なるほど。確かに他のクルマに乗ってみることは俺も賛成だ。ならば、どんなクルマを選んだの?

トガ じつは今回のクルマ選びも、徳大寺さんの影響が思いっ切り出ている。徳大寺さんでSUVときたら、やっぱり頭に浮かぶのはレンジローバーだろ。じつは徳大寺さんの愛車の1台であるレンジローバーを、格安で譲ってもらえるという幸運を手にしてしまったんだよ(笑)。

スガ うわっ、オヤジキラーの本領発揮だ(笑)。

 

 

「レンジローバーの印象は、『素晴らしい!』のひと言に尽きる」

 

トガ スガ、お前も徳大寺さんが、レンジローバーを初代から乗り継いできた、大のレンジローバー好きだったことは当然知っているよな?

スガ 一応俺も、自動車雑誌の編集部にいたことがあるからね。

トガ その徳大寺さんから、走行距離がたった走行約300kmの極上車を、格安で譲ってもらったんだよ。

スガ お前のオヤジキラーっぷりを、ズルいと思っちゃうのは俺だけではないハズだ(笑)。それって何年くらいの話しなの?

トガ 2002年だったかな。だからレンジローバーとしては第3世代になるモデルだった。エンジンはBMW製の4.4リットルV8で、トランスミッションはZF製の5速AT。この2つの組み合わせが最高だったんだよ。さらに、インテリアが凄くモダンな雰囲気だったのも良かった。
俺が、初めて所有したレンジローバーのファーストインプレッションは、まさに『素晴らしい!』のひと言に尽きるって感じだった。

 


戸賀編集長も絶賛のモダンな雰囲気のインパネ周りと内装


 

スガ 珍しく、ベタ褒めじゃん(笑)。

トガ いや、本当に最高の1台だったんだよ。でもなスガ、このレンジローバー、クルマのとしてのコンディションは最高だったんだけど、室内は徳大寺さんのトレードマークでもあった、シガーの吸い殻&灰、そして臭いがキツかった。まあシガーだからタバコほど嫌な香りじゃないけど、女子でそう捉えてくれる子は少なかったんだよ。
そこで、当時親しかったランドローバーの広報に用賀のディーラーを紹介してもらって、室内クリーニングを含めた様々なメンテナンスをしてもらった記憶がある。確か、フロアマットまで交換したハズ(笑)。

スガ 俺もタバコの臭いとか嫌いだから、その辺の気持ちはよく分かる(笑)。ちなみに、その汚れや臭いって、ちゃんと落ちたの?

トガ そこはさすがにプロの仕事。ランドローバーがキッチリ落としてくれました(笑)。

 

 

第3世代のレンジローバーのインプレッションとは?

 



BMWエンジンの前期型。ちなみに戸賀編集長が乗り継いだ3台のレンジローバーはすべて前期型


 

スガ さっき途中になっちゃったけど、第3世代のレンジローバーのインプレッションを、もうちょっと聞かせてくれないか? あの頃のレンジローバーには、あまり乗った記憶が無いんだよ。俺も初代とかセカンドレンジにはけっこう乗ったんだけどさ。

トガ インプレッションを聞きたい? もちろん良いよ! 俺ももっと語りたかったから丁度良い (笑)。
あのなスガ、3代目のレンジローバーは、本当に素晴らしかった。BMW製のエンジンはトルクが豊かでありながら、高回転までスムーズに回るし、ZF製のオートマは滑らかなシフトチェンジを可能としてくれていた。サスペンションも、デカくて重いボディをしっかりと、そして、しなやかに支えてくれていたしね。
レンジローバーって、良く“砂漠のロールスロイス”って呼ばれたりするだろ? でも道路環境の良い東京でしか走らない俺にとっては、まるで魔法の絨毯のような乗り心地だったんだよ。言い過ぎだと思うだろ? でもな、スガ。当時の俺には運転しながら、思わず『素晴らしい!』って叫んでしまったという逸話があるんだよ(笑)。それぐらい、3代目レンジローバーの乗り心地は素晴らしかった。

スガ 魔法の絨毯のような乗り心地っていうのがまったく分からんのだが(笑)。まぁ、それくらい最高の乗り心地だったというワケね。でも考えてみると、このレンジローバーはトガにとって2台目のSUVになるんだよな?

トガ そう、以前にゲレンデヴァーゲンに乗っているからな。でもあの頃って、SUVもゲレンデヴァーゲンも、まだまだ世間的には認知されていない時代だったんだよ。俺がメルセデスというブランドと、ゲレンデヴァーゲンというクルマに、勝手に惚れ込んでいたというだけの話し(笑)。
あの時に乗っていたゲレンデは、ショートボディだったこともあって、乗り味はトラックだったからね。ラグジュアリーとは程遠いモデルだった。
でもこのレンジローバーは、本当にラグジュアリーだったんだよ。ラグジュアリーSUVとはどんなクルマなのかを教えてくれて、俺をSUV好き、いや“ラグジュアリーSUV”好きにしてくれたクルマと言っても間違いではないと思う。
なにしろ長距離ドライブが好きじゃない俺が、何度もドライブ旅行に出かけたし、もちろんゴルフにも行った。当然デートでも活躍してくれたよ。乗っている間は、何ひとつ嫌なことが無い、最高のクルマだった。

スガ まさに、ベタ褒めだな(笑)。

トガ だけどひとつだけ、問題点があったんだよ。

スガ あるのか~い(笑)。

トガ 問題は、徳大寺さんが選んだモスグリーンのボディカラーが渋すぎることだった。当時の俺は、まだ30半ばを過ぎた頃。ハッキリ言って、まったく似合っていなかったんだよ。渋過ぎた(笑)。そうなってくると、なぜか他の部分にも少し気になるところが出てくるんだよ。たった300kmしか走っていない新車同様のレンジローバーだったけど、徳大寺さんが青空駐車していたからなのか、窓に使われていた黒いパーツが、日焼けでシラっちゃけていた。それも分かって購入したハズなのに、もうそうなると、そこが気になって気になって仕方がない(笑)。

スガ で、神経質なトガは、またしても速攻で手離すことになりました、となるワケだ(笑)。

トガ まぁ、否定はしない(笑)。でも本当に素晴らしいクルマだったから手離す時に、「レンジの出物があったら教えてくれ」、とローバーの担当者頼んでおいたのは言うまでもない(笑)。

 

 

じつは3代目のレンジを、3台乗り継ぎました。

 

スガ 出物があったら教えてくれ? ってことは、徳大寺さんから譲り受けたモスグリーンのレンジを手離したトガは、もしかして年式違いなだけの、ほぼ同じレンジを買ったりしちゃったの?

トガ じつは、その通り(笑)。ちなみに今度のは、2004年モデルでボディカラーは黒、内装はベージュ、走行1000kmの極上車だった。同じクルマを二度買ったという事実だけでも、俺がいかに3代目のレンジに惚れていたかが分かるだろ? 本当に、それだけ素晴らしかったんだよ。
そして、BMWのV8は極上と呼ぶに相応しいエンジンだった。スガも2代目のレンジまでは良く乗っていたらしいけど、あの頃までのレンジと、3代目、とくにBMWのV8を載せたレンジはまったくの別モノ。
今からでも遅くないから、あのV8には乗っておくべきだと思うよ。
クルマ雑誌に関わっていた人間としてもな(笑)。

スガ う〜ん、そこまで言われちゃうと、本気で気になってきた(笑)。

トガ さらに当時は、ようやくSUVが世間的に認知されてきて、芸能人もレンジローバーやゲレンデヴァーゲンに乗り始めていた頃だっただろ? だから世間のSUVに対する評価も変わってきたと同時に、SUVに乗っていること自体が、クルマ選びを分かっている人っていう眼で見られている感じでもあった。
そんなこともあって、しばらくはこの黒いレンジに乗ろうと考えていたんだけど、さらに1年後、2005年モデルの「最後のBMWエンジン」搭載の“出物”があるという話しが舞い込んできた。これは仕方ない。翌年も思い切って乗り換えてしまったワケだ。

スガ ということは、レンジローバーを1年ごとに買い替えたってこと? まぁ、BMW製のV8エンジン搭載の最終モデルだと言われたら仕方ない……なんて俺が言うワケないだろ(笑)。最終モデルとは言え、自分が乗っているクルマと、ほぼ変わらないクルマに買い替える意味が、俺にはまったく意味が分からん(笑)。

トガ まぁ、BMWのV8に乗れば、買い替えてしまう意味が分かると思うよ。でもな、スガ。そんな大事なレンジローバーだったけど、意外と早く手離す日が来ちゃうんだよね。

 



2006年からのフォードエンジンに変更となった三代目レンジローバー後期型


 

男気を見せるために、レンジローバーを手離しました。

 

スガ あ、この話、ちょっと聞いたことがある。けっこう良い話しだった気がする? だったら聞きたくないんだけど(笑)。

トガ スガが聞きたくなくても、聞きたいって思ってくれる読者がいることを信じて、軽く話しをさせてくれ(笑)。
じつはレンジローバーに乗っていた時って、結婚を考えていた時期でもあるんだよ。だから彼女に、「君の好きな指輪を買うから教えてください」と聞いてみた。
するとデビアスの「プロミス」というワンオフモデルであることを教えてくれた。まぁ、どんなものか分からないから、銀座のブティックに行ってみたら、これがまったく想定外の価格であることが分かった(笑)。
その時の気持ち? 「やべえ、買えね〜」でしかない(笑)。
そこで男気を見せるためにレンジローバーを売って、なんとか指輪を購入。彼女とハワイ旅行した時に、飛行機のビジネスクラスでその指輪を贈ってプロポーズしたんだよ。

スガ うわっ~、やっぱりその話しだったか(笑)。でも、ちょっとは聞いてみたいと思ってくださた読者の方も、ほんの少しはいるだろうから今回は我慢しておこう(笑)。
でもさ、レンジローバーを手離して指輪を買っちゃったら、次のクルマを購入する資金が無くなっちゃったんじゃないの?

トガ まぁ、贅沢するためのお金は底をついていたのは間違いない。だから、そんな中で見つけた1台を紹介するのが次回って感じだね。

スガ お金は無いけど、こだわりのクルマ選び。それはそれで、楽しいクルマ選びになりそうだな!(笑)

 

次回もお楽しみに!


歴代のレンジローバー。ここに写る第三世代は、マイチェン後のフォードエンジン搭載モデル。やはり第三世代で狙うべきは、BMWエンジン搭載の2002年から2005年のモデルのみ! と戸賀編集長

ランドローバー・レンジローバー

 全長×全幅×全高:4950mm×1956mm×1862mm
 ホイールベース:2880mm
 車両重量:2520kg
 エンジンV型8気筒DOHC 32バルブ 4393cc
 最高出力:286ps/5400rpm
 最大トルク: 44.9kg・m(440N・m)/3600rpm
 駆動方式:4WD
 トランスミッション:5AT

菅原 晃