「ブレーキディスクにクラックが入るほど、攻めた走りを愉しんだポルシェでした」現在進行形で進む 戸賀敬城の愛車遍歴決定版!
- 雄斗 田村
- 4月13日
- 読了時間: 8分
更新日:4月21日

数々のクルマを乗り継いできたことから、業界でもかなりの“クルマ通”として知られる戸賀敬城。彼が選んぶクルマが持つそれぞれの魅力、さらには、そこから読み取ることが出来るクルマ選びの基準を、本人の口から語ってもらうのがこの『愛車遍歴決定版!』。話の聞き手は、戸賀(トガ)のCar Ex編集部時代の同期であり、フリーランスエディターの菅原(スガ)。編集部時代は、仕事も遊びもほとんど一緒に過ごしていたという「トガ&スガ」ならではの、懐かしい昔のこぼれ話もお楽しみください!
走り屋の血が騒いで、買い替えを決意⁉
スガ 前回は、カレラ4を約2年で手離したことで話しが終わっているので、今回は人生3台目となる愛車選びから話しを聞いていきたいと思います。まぁ、今でもトガが車検を通してまで乗り続けることは滅多にないけど、あれだけ気に入っていたカレラ4を、なんでまた2年で乗り換えようと思ったの?
トガ カレラ4は最高のクルマだったのは間違いないんだよ。ポルシェが70年代から研究してきた四輪駆動システム搭載する安定志向のクルマだったし、944ターボとは違って女の子にもモテたからね(笑)。20代の前半で911に乗れたことは、今でも本当に良かったと思っているよ。
でもなスガ、俺の身体に染みついている習性というのかなぁ。カレラ4に乗っているのに、前に乗ったAE86とか、その後の944ターボなどの楽しいFRの走りを思い出しちゃうんだよ。走り屋の血が騒ぎ始めてしまったというのかなぁ。
スガ トガ、いまどき走り屋って言っちゃうのは、残念ながらあんまりカッコ良くない。
トガ お前にだけは言われたくない(笑)。まぁ、本当のことを言うと、カレラ4だとコーナーを本気で攻められなかったんだよ。安定志向のクルマだし4駆だから仕方ないんだけど、「やっぱりもっと攻めたい」と思い始めている自分に気が付いてしまった。これが乗り換えを考えた理由のひとつだね。
そして、もうひとつの理由としては当時のポルシェ911って、イヤーモデルでキャラクターをガラッと変えてくることにも原因があった。
スガ あ~、分かる。911って、見た目はあまり変わってないのに、中身がドンドン進化してくるんだよな。
911は最新が最善!
トガ そう、まさにそれ。当時Car Exでも911特集をやったけど、やっぱり『ポルシェは最新が最善』ということが分かってきてしまった。新しい911に乗ると、新たな911のコンセプトみたいなものを如実に感じちゃうんだよ。
スガ それは実際にトガが911オーナーだったからこその悩みだよな。さらにトガはCar Ex編集部にいたから、常に新しい911に乗れる環境もあった。それってオーナーの立場だと、良いような悪いような微妙なところだよな。自分の愛車が旧くなってしまったことを実感しちゃうんだもんな。
トガ そうなんだよ。そうなってくると、もう頭の中では次のクルマを考えてしまっている自分がいた。早速クルマ探しを始めたんだけど、ちょっと調べてみたらポルシェが限定車の『クラブスポーツ(CS)』をリリースすることが分かったんだよ。
だけど、そのクルマはFRだった。だから911よりちょっと格下のポルシェに戻っちゃうことになるんだけど、もう一度FRを本気で愉しんでみたかったし、何しろ『クラブスポーツ(CS)』だから、ワンランク上の走りが愉しめるのは間違いない。
もう、このクルマがリリースされることを知った瞬間に、俺は買い替えを決めていたような気がする。何しろ限定車だしね。
スガ この頃からトガの限定車好きは始まっていたのか(笑)。で、それがトガの3台目の愛車になったワケだ。
トガ その通り。俺の3台目の愛車となったのは、ポルシェ968クラブスポーツ(CS)でした。

ポルシェ968クラブスポーツ(CS)って、どんなクルマ?
スガ まぁ、俺は30年前から俺は知っているけどね(笑)。ちなみに968CSってどんなモデルだったのかを説明して貰っても良いかな?
トガ もちろん。まず通常の968のクーペと違って、走りに特化しているモデルであることが一番の特徴だね。だから本国仕様などは、軽量化のために後部座席も快適装備も取っ払っちゃっているんだけど、なぜか日本導入モデルはパワーウインドゥ、エアコンが装備されていた。いや、日本で乗るならマストな装備だと思うし、エアコンが無いのは論外(笑)。それでもノーマルより約50kg軽くなっているんだよ。
サスペンションも標準のトーションバーにコイルスプリングが追加されていたし、LSDも装備されていたので気持ち良いコーナーリングが楽しめる。
ちなみに俺が購入したのは、ボディカラーがカレラ4と同じガーズレッドだったんだけど、フルバケットシートのシェル部分と、ホイールが同色だったのも特徴かな。
これは補足情報なんだけど、じつは968CSには94年モデルもあって、こちらはホイールが993と同じデザインで、ドアのサッシがボディカラーと同色。50台の見込み発注で数十台売れたらしい。


スガ さすがにポルシェ博士、詳しいな(笑)。俺も968CSがフルバケットシートだったのは覚えてるよ。スゲー乗りにくかったもん。1ミリもリクライニングしないから、快適性はまったく感じられなかった (笑)。
トガ もう少し言い方があるだろ~。でも快適性が皆無なのは俺も認める(笑)。ポルシェのフルバケットシートと俺の腰との相性の悪さを教えてくれたのは、968CSだったのは間違いないしね。あれからGT3とかも乗ってきたけど、フルバケットシートは選んだことは一度もない。二度とあのシートには座っちゃいけないと心に決めているから(笑)。

愛車でサーキットを走ったのも、968CSが初めて
スガ そういえば、愛車でサーキットを走ったのは968CSが初めてだったんだよね。
トガ そうなんだよ。試乗会などでは、先方が用意してくれたクルマでサーキットはかなり走り込んだけど、自分のクルマで走ったことはなかった。
ちなみにカレラ4では、箱根あたりのワインディングや首都高などで走りを愉しんだけど、攻めた走りをしたことはない。だから、クルマを傷めてしまいそうなサーキットなんて走るワケがなかった(笑)。それは944ターボも一緒。
ところが968CSは、無茶苦茶走りが愉しかった。本当に良いクルマだったんだよ。この走りの良さを本気で愉しむなら、サーキットを走るしかない。
当時は、俺たちの周りの人もサーキット走行を愉しむ風潮があったじゃん。スガも一緒に走ったエビスサーキットの走行会とか、走行会を開催してくれる人もけっこういた。
俺が968CSを手に入れたタイミングは、サーキットを走ることができる機会が意外と多かったんだよ。だからクラブスポーツという究極のFRで、サーキットというフィールドを思う存分攻めることができた。968CSを所有していた時期に、俺のドライビングテクニックが向上したのは間違いないと思う。
スガ う~ん、ちょっと悔しいがそれに異論はない。

本気で攻めて走った証! ディスクブレーキのクラック
トガ そうそう、当時の俺が本気で攻めた走りをしていた証拠があるんだよ。スガに話したことは無いと思うんだけど、聞きたい?
スガ 聞きたくない (笑)。でも、そんな証拠なんて残っているもんか?
トガ 教えよう(笑)。968CSのブレーキディスクって、穴が開いていたんだけど、じつはあの穴の開いているディスク部分にクラックが入っていたんだよ。これこそが、俺がガッツリとブレーキが踏めるようになっていたという証し。これってなかなかに凄くない?
スガ というか、ポルシェのブレーキディスクにクラック入れるヤツって、あんまり聞いたことがない。かなりハードなブレーキングを繰り返したんだろうな。
トガ わずかなクラックだけど、クラックがあったことは間違いない。当時は本当に、俺なりの限界の走りを愉しんでいたんだと思う。ちなみにこのクラック、整備をして貰った時に判明したんだけど、メカニックの人に「クルマを買い替えるなら、ディスクは交換した方が良いかもね」って言われて、『ヤバっ』って思った記憶がある(笑)。
スガ クルマを買い替える? さらに「ヤバっ」て思ったっていうことは、それって、あいつに968CSを売る前の話し?
トガ そう、世界文化社の同期のあいつにCS売る前の話し。
スガ うわ~っ、もしかして交換しないで売ったの? 鬼だ(笑)。
トガ いや、わずかなクラックだから、当面は問題ないってメカニックの人も言っていたから(笑)。
スガ 今考えてみたら、968CSを手放したのも購入から1年未満って感じだよな。
トガ まぁ、そうなるね。やっぱりフルバケットシートはキツ過ぎた。だから愛車遍歴の3台目まではポルシェが続いたけど、4台目はちょっと違ったベクトルでの愛車選びとなるワケだ。
スガ ポルシェのフルバケットシートは、相当ハードだったんだな。
トガ それは否めない(笑)。だから次のクルマは、ちょっと身体にやさしいクルマを選んだことは間違いありません。
スガ 次の愛車遍歴に登場するクルマは、当時、そして現在でも名車と呼ばれ続けている1台。次回もお楽しみに!

ポルシェ 968CS
全長×全幅×全高:4430mm×1765mm×1305mm
ホイールベース:2350mm
車両重量:1380kg
エンジン:直列4気筒DOHC 16バルブ 2990cc
最高出力:240ps/6200rpm
最大トルク:31.0kg-m/4100rpm
トランスミッション:6速MT
文・菅原 晃
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